本当だけど嘘です。
「そうですね、見た目はウォーウルフではありましたが……第一印象が気持ち悪いと言いますか、どこか不快感はありましたね。」
あの時の気配は未だに覚えている。あれは実際不快であったし、ウォーウルフそのものの気配とはどうにも思えなかった。
「ふむ、不快感……ん?いや待て、お主らはまだ子供のはず。何故そのウォーウルフの気配の異常を察せたのだ?冒険者ましてや大人でもあるまいし。」
あーこれはごもっともな発言だな。確かに気配を察せれる子供って滅多にいないよな。子供のころから暗殺者になるため育てられてきましたーってのならまだ分かるかもしれないが。
どう答えようかな。
「エルベルド王、父の妻、そして姉ユッテの母についてはご存知ですか?」
「あぁ、知っているとも。確か彼女は特異な目を持っていたな……力を見ることが出来るといったものだったか?……そうか。娘か。」
「はい。ユッテは母、レミューリナの目の能力を受け継いでいるようです。まだまだ未熟ではありますが、肉眼では捕捉しにくいものも彼女には見えているのです。」
これにはエルベルド王も納得が言ったように大きく頷く。ユッテの方は目を丸くしていたが、やっぱり自覚は無かったか。
でもまぁキイの存在に気付いたしその目は本物だろう。
「して、ウルトル。お前は何故分かった?」
「それに関しては私も……恐らく記憶が無くなる以前に……」
「そうか。ふぅむ、気にはなるが……」
記憶喪失の設定本当に便利だなー治療法があるとかになったら面倒くさいことになりそうだけど。
その件は置いて、さっさとウォーウルフの話を続けさせてもらうか。
「私達がいくらウォーウルフの気配に気づけても所詮は子供、闘う術などございません。故に全力で逃げました。体の弱い姉を背負って森の中を掛けるのは酷ではありましたが。」
「その判断は正しいな。仮にウォーウルフが通常の個体だったとしても力を持たないうちは逃げるのが賢明だろう。……それで逃げおおせたのか?」
「はい、咄嗟に私の服の一部を千切りましてそれに血を付着させあちらこちらにばらまきました。……頭の良い魔物でしたら死んでいたでしょうね。」
……何だこの嘘、我ながら滅茶苦茶な嘘だな。信じてくれよ信じてくれよ?
王の挙動一つ一つに俺の話したことに疑念を抱いているんじゃないのかと、嘘がばれているんじゃないかと思えてしまう。
腹痛くなりそう。
「子供ゆえ言葉を上手く紡ぐことが出来ないか……しかし嘘をついているとも思えぬ。ウルトル、報告大義であった。」
ええええええええええええええええ、信じてくれるのかよ、エルベルド王。
子供に甘くないか……?いや、そのおかげで助かったから悪く言うのは止めておこう。
それにウォーウルフの気配については本当の事だからな。
いやしかし、これで今日の重大イベントは終了したも同然だな。
ほらさっさと城下町なりなんなりに戻って宿取って寝て明日は城下町探索だ!今から楽しみだ!どうせ夜はフィーレさんたち許してくれないだろうからな!
……ん?何か外が騒がしいな。
ドタドタと何かが走ってくるような音がする。
しかもその音……段々とでかくなってないか?
「――様!王は今――!」
「お待ちください!!」
男女の必死にな声が聞こえるんだが気のせいだよな、これ新たなトラブルの種じゃないよな。
「騒がしいな。」
「王よ、もしかして……」
エルベルド王とその近くにいた宰相っぽい人が何やら話しているんだが。
ラディさんもユッテもメイド2人も何が何だか分からない様子だ。俺も分からん。
何も起こるな起こるな!と思っていたがそんなことはお構いなしと言った風に俺たちが入ってきた扉が勢いよく開いた。
おい待てそれ魔法じゃなきゃ開かない程重いんじゃないのか!?
「父上よ!ただいま帰還したぞ!!!」
扉の向こうから現れたのは何か黒焦げたでっかい犬っぽい魔獣を引きずった燃え盛るような赤い髪をした少年だった。




