王に謁見
門番に話が通りゆっくりと門が重い音を立てながら開けられた。
機械とかないから手動なんだよな、これ。かなりキツそうだ。
「ようこそお越しいただきました、ルーマル侯爵。並びにご同行の方々。私は皆様の案内と城におられる間世話をさせて頂きます、フォルクスと申します。」
出迎えてくれたのはきっちりとした服を着てビシッと礼をした若者、執事か?
とその後ろで静かに礼をする複数人のメイドと執事だ。
あ、このメイドたちよりうちのメイドのが可愛いかもしれない。
「早速ではありますが、エルベルド王の所へご案内させていただきますが、よろしいでしょうか?」
「あぁ、こちらは大丈夫だ。あるとするなら、後ろの馬車の荷物はエルベルド王に献上する品々だから運んでもらえるかな?」
「承りました。」
フォルクスの声を合図に後ろの使用人たちが一斉に動き始め、馬車の荷物を丁寧に運び始めた。よく訓練された使用人ですね……
そんな姿を感心して見ていると
「ウルトル様、皆さま行ってますから私達も行きましょ?」
フィーレさんの声で我に返ったが本当にラディさん達さっさと歩き始めてた。
いや、そんなに早く行くとは思わないじゃん。待って待って。
慌てたことを勘付かれまいと比較的穏やかに早歩きして追いついたが、先に行っていたユッテにクスッと笑われてしまった。教えてくれてもいいじゃないのさ。
しかし城内もでかいというか広いな。部屋の数もだいぶ多いみたいでこれは使いきれなくてもしょうがないな。
「しかし、今すぐに謁見とは急だな。エルベルド王はご多忙なのか?」
「左様でございます。ご予定があるのですが、本当に良いタイミングに来られました。」
という事は1,2時間でも遅れてたら門前払いの可能性もあったのか、運が良かったな。
ふとユッテを見ると、あれ?さっきまで俺見てフフッて笑ってたはずのユッテの顔が青ざめていってるような。というか青ざめてるなこれ。
「姉さん?緊張してる?」
「……はい。」
あーまぁ王様に会うんだもんな、下手に失礼なことをしたらラディさんに迷惑がかかるかもしれないとか思っているんだろう。
日本でいう天皇に会うようなものだ。そんな展開になったら俺も緊張しただろうなぁ……
「姉さん、まぁ安心してよ。出来るだけ俺が話すからさ。」
「ごめんなさい、ウルトル……」
そこはありがとうとでも言ってほしかったが、下手にそんなこと言ったら攻めているって受け止められかねないな。笑って返そう。
「着きました。こちらです。」
フォルクスが大きな扉の前で止まる。なるほど、確かに荘厳な雰囲気のする扉だな……この先に王様がいるのか。
「あぁ、そうだそうだ。ここだったね、本当にこの城は道を覚えにくいのが難だな。」
「えぇ、私も完全に城内を覚えるのに苦労したものです。」
こんな優秀そうなフォルクスが苦労するレベルの城内、もはやダンジョンじゃないのか。
「それでは扉を開けますね。」
そう言うとフォルクスが空中に指でなにやら字のようなものを書き始めた。
フォルクスの指の先が淡く光ったと思ると、大きな扉が誰も触れていないのにゆっくりと開き始めた。
実際に見たが、あれがこの世界での魔法の発動か?
ユッテの魔法を見たときユッテは字を書くような動作はしていなかったはずだが、あれは魔法と言うより魔力を具現化したようなものなのかな?
そんな事考えてる場合じゃなかったな。
扉が開けきり、中の謁見の間が明らかとなる。
ほー何ともまぁ豪華なことで、うちなんかじゃ比べ物にならんな。これが謁見の間か。
両端には鉄の鎧を纏った騎士が剣を天に向けて構えている。あれ、辛くないのか?
奥には玉座があり、そこには一人の小太りな男が座っていた。
あれがエルベルド王か……名前のイメージではもうちょっとすらっとした若々しい王を思い浮かべたが、現実は小太り爺さんでした。いや、エルベルド王は悪くないです。
少し歩いたところでラディさんが、いや俺の周りの全員がエルベルド王に向けて傅いた。慌てて俺もそれに倣い傅いた。
「お久し振りでございます、エルベルド王。お変わりなく御元気そうで。」
「そうだな、久しいな。ルーマル侯爵よ。前に会ったのは……」
「3年前でしたな。」
「おおそうだったな、お前の後ろの……娘もまた一層可愛らしく成長したものだな。病気はいいのか?」
「えぇ、まだたまに床に臥す時もありますが昔に比べ元気になりました。」
「そうかそうか、子供は宝ぞ。大切にな。」
「はい。」
そんな感じでエルベルド王とラディさんの世間話のようなものが始まった。この2人結構仲がいいのか?でも少なくともこのエルベルド王、普通にいい人そうだな。
「さてルーマル侯爵よ、書にあった魔物。あれは本当か?」
おっと急に魔物の話になったな。それと同時にラディさんがこっちを見て視線で「いけるか?」と語り掛けてきた。もちろんでしよ、父さん。と頷き返しておいた。
「私は実際には遭遇しておりません。しかし私の子達がその魔物に遭遇しましたので報告にと思い連れてきました。」
「ほう?魔物と相対し子供が生き延びたというか。話を聞かせよ。」
「はい。……ウルトル。」
御指名を受け、俺はラディさんよりも前に進み、再び傅いた。
「お初にお目にかかります、エルベルド王。」
「む?子と聞いたらそこの娘ではないのか?見れば歳も大差ないように見える。本当にルーマル侯爵の子か?」
「それに関してはですね……」
俺はクイルにしたのと同じ説明をエルベルド王に伝えた。いやぁ、言葉を選ぶのに苦労したわ。
「と言う訳です。」
「ふぅむ。子供とは言え苦労したのだな、分かった。では改めてウルトルよ。異様な魔物とはどのようなものであったか?」
さて、十分に俺のことに関して理解を得たところで本題を話すとしますか。




