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短い初陣

【前回までの話】

ミツバはサクラについての情報を得る見返りに、情報屋からの意図の汲み取れない指令をこなした。

 五◯◯層 塔入口前


 くわ、と大きなあくびをしたミツバを、サクラが静かに嗜める。

「今から戦場に向かうっていうのに、随分と気が抜けているのね」

 誰のせいだ、と不服そうにサクラを睨むが意味はない。ゴーグルは反射加工されていて、中が見えないようになっているからだ。

 彼らは全身を防護服に包み、塔の入口前へと集合していた。

「隊長、そいつは新入りかい?」

 背後から低い男の声。ミツバは振り返り、小さく会釈をした。

 彼も全身を防護服に包んでいるためその姿は分からないが、大柄で筋肉質な肉体が威圧感を醸し出している。

「ええ」

 サクラは小さく頷くだけ。紹介する意志はないらしい。紹介されてマズイのはミツバの方だが、体格と声くらいしか情報がないだろうに。

「よろしく」

「よろしくな、俺はPだ。君は……Xになるな」

「P? X?」

「ああ、隠密部隊におけるコードネームだ。アルファベット順につけている。こいつはB。かなりの古参だ」

 Pの脇から、小柄な体が姿を見せる。小さく会釈をするだけで、何も話さない。

「なるほど。ちなみに、隠密部隊はこれで全員か?」

「ああ」

 サクラ・B・Pの三人にミツバが加わって四人。隠密部隊とはいえ、心許ない人数だ。

 いや、そもそもAからアルファベット順にコードネームを付けたはず。

「残りは……死んだってところか」

「ほう、鋭いな」

 Pは思わず感嘆する。対して、Bは無反応。

「あんたも訳ありなんだろ? うちはコブ付きの集まりだからな。素性を詮索したりはしない。まあ持ちつ持たれつってことで、ドライにいこうや」

 その割には随分と馴れ馴れしい男だ、とミツバは心の内で呟く。

 まあいい。詮索されないのはこちらにとっても好都合だ。

「それで、隠密部隊って何をすれば良いんだ?」

「簡単だよ。隊長に付いて行けば良いだけだ」

「それだけか?」

 ちょっと言葉足りずだったか、とPは首元をポリポリと掻いた。


「隊長にくっ付いて、敵を殲滅するだけさ」


   □ □ □


 四つの影が雪上を駆け、斬撃の軌跡を描く。

 彼らが疾走した後に残るのは、屍の山だけだ。

「(どこが隠密部隊だ!)」

 ミツバは遅れないように必死に喰らいつく。アクセルはほぼ常に全開だ。

 正面に現れた敵を、ターンしつつ二刀の袈裟斬りで斬り伏せる。敵は悶絶し、うつ伏せで雪の上に倒れ込んだ。

 ただ今までの敵も含め、一人たりとも死んではいない。ただ戦闘不能になっているだけだ。

 防護服は斬撃に耐性を持つため、剣に変化するストックの斬撃を受けても流血はしない。よって受けるのはあくまで打撃。敵の骨を折る、または顎や首に衝撃を与えて気絶されるのが雪上での基本的な戦い方だ。

 ちなみに、銃は過去の遺産。弾を消費してしまうからだ。資源の限られた今、武器は近距離武器であるアイクスのみになっていた。

 敵を戦闘不能にし、捕虜にする。武器や防具を奪い、捕虜の返還交渉でさらに多くの物資を奪い取る。そうすることで他の塔の物資状況を圧迫し、戦況を有利にしていくのだ。

 日々、塔同士で資源の奪い合い。それが彼らの日常。

「(だが……)」

 何かがおかしい。ミツバはそう思った。

 百日ぶりの屋外戦。それによる認識のズレかと思っていた。けれど、違う。

『あまりにも、敵が多すぎる』

 思わず漏れたその言葉は無線のマイクに拾われ、Pが反応した。

『なんだ? 久しぶりの実戦か? 最近はずっとこんなもんだ』

 なぜ。その疑問を先回りするように、Pが続ける。

『有史以来、初めての塔奪取。黒鷹は白燕を取り込んだが、それによって俺たちに対する警戒度が急上昇したんだ。俺たちは少なくない犠牲も出したし、今の内に叩いておかないとどんどん不利になるのを分かっているのさ』

 全六つある塔は、資源が枯渇してからずっと戦い合ってきた。その一つが初めて落とされ、実質二つ分の塔の力を有した黒鷹がマークされるのは当然だ。

 均衡が破られた今は、世界が動き始めたタイミングであるとも言える。

「(黒鷹に対する包囲網。それによって、黒鷹は厳しい状況に陥っている。なるほど……それが俺まで駆り出された理由か?)」

 部隊はひたすら前進した。しばらくしてミツバの視界に入ってきたのは、白燕の塔。

 だが、故郷に思いを馳せる暇もない。

『おい、X。隊列を崩すな』

 Pからの声に、ミツバは反論する。

『隊列を崩しているのはサク……Aの方だろ。俺はアイツのサポートをできる位置にいるだけだ』

『ああ、言ってなかったが、Aに付く必要はない。俺たちで三人一組を作れば良い』

『どういうことだ?』

『Aは一対多に特化している。心配しなくとも、よほどのことがない限りピンチにすらならない。Aが指示を出さない限り、俺たちは自分の目の前の相手に集中するのが得策だ』

 その説明に、珍しく口を開いたBが補足説明を加える。

『そもそもAは想定外の動きが多すぎて、僕たちでは対応できない、の方が正しいけどね。まあ、見ていれば分かるよ』

 前方のサクラは、緩急自在の細かいターンで敵に接敵。間合いに入る直前で爆発的な加速を加え、敵の後方へと一瞬で駆け抜ける。

 即座に振り向いた敵は、サクラを見失った。目の前にいるのは、倒れ込む味方のみ。

 サクラは敵に斬り込むと同時に、その敵を踏み台にして逆方向へ宙返りをしていたのだ。一度見失った敵は最後までサクラを視界に捉えられず、そのまま斬り伏せられた。

 奇想天外、という表現が正しい。サクラはミツバの常識にはない動きで、敵を翻弄していた。

 白燕が敗北した時と同じような、多人数の相手をものともしない身のこなし。ここでミツバはようやくPとBの言葉の意味を理解した。

 あれはサポートしたくても、できない。

 とはいえ、サクラも気まぐれに突き進んでいるわけではない。敵陣に深入りはせず、味方と合流できるギリギリの範囲で戦闘している。

 そのあたりに関しては、非常にクレバーである印象を受けた。

 実際に一緒に戦ってみると、何せ戦いやすい。

 サクラが敵の注目を集めているため、自由に動けるエリアが広がるからだ。

 圧倒的な実力のある【紅蓮】を軸に戦術が構築されている。敵からすると、限りなく厄介だ。これは通り名が付くだけはある、そう思った。

「お〜い、待てよ〜」

 だが突如、無線ではない気の抜けた声が聞こえた。背後から。

 黒い影が凄まじい速度でミツバを追い越していく。

「ずっとお前とやりたかったんだぜ、【紅蓮】」

 高速で戦いながら移動している部隊に後ろから追いつき、息ひとつ変えていない。

 赤い鳳凰のエンブレム。赤鳳(せきほう)の塔だ。

 ミツバは即座に斬りかかる。だが、相手は爆発するように加速した。

 その勢いのままサクラに急接近。サクラは身を翻し、受け流すように弾き飛ばした。

 互いに相対し、睨み合いになる。

『あれは……【雷光】』

 赤鳳の塔には、圧倒的な能力を持った兵士が四人存在する。彼らには通り名が付けられた。

 その内の一人、【雷光】

【雷光】は破裂するように加速し、サクラに襲い掛かった。無数の細かいショートターンを繰り返し、左右どちらから斬撃を放ってくるのかが読めない。

 サクラは動かなかった。いや、ギリギリまで引き付けた。

 本当に紙一重のタイミングでサクラは右に加速した。【雷光】の横振りはサクラの顔の横を掠める。

 サクラは一段と腰を落とした。相手を警戒している様子だ。それもそのはず。黒鷹と赤鳳は対角に位置する関係だ。むしろ、長いこと戦ってきたのは白燕出身のミツバの方だ。

 超絶ショートターンによる高速攻撃。それが稲妻のように見えたことが、【雷光】の名前の由来とされている。

 凄まじい勢いで距離を詰めるのは【雷光】の方だ。そこからやや大振りの怒涛の連撃が放たれる。

 だが、サクラも負けていない。細かいステップ――アクセル・ブレーキ・バックの使い分け――で、絶妙に間合いを調整していた。そして決して守勢には回らず、僅かな隙で反撃を放っていた。

 サクラと同格。それが四人存在する赤鳳は、間違いなくこの世界で最も力がある塔だ。

 白燕は隣に位置する赤鳳との戦いによるダメージが酷く、その隙をついて黒鷹に制圧された。赤鳳から見れば、黒鷹は獲物をかっさられた憎きハイエナとも言える。

「ははっ。いいな、【紅蓮】! お前みたいなのと戦ってみたかった!」

 けれど【雷光】はそんなこと微塵も感じさせない。

「堪んねえなあ! やっとこの世界面白くなってきたじゃねえか‼︎」

【雷光】は口角を吊り上げ、大きな高笑いをする。部隊員と思われる周囲の仲間たちは、また始まったと言わんばかりに呆れた様子だ。

「いくぜ、【紅蓮】」

 一瞬で腰を落とし、一段と低い超前傾姿勢からの爆発的な加速。

 切れ味鋭いターンに目が行っていたが、それだけじゃない。単純な初速も異次元だ。

 そして、その初速が落ちない。雪面を切るようなターンは摩擦を感じさせない。雪煙が立たないことがそれを裏付けている。

【雷光】はサクラに接敵する。さらに攻撃の勢いは増し、サクラは徐々に戦線を下げた。後退しながら絶妙なバランスでターンをしていくが、当然【雷光】の追走を振り切ることはできない。細かいフェイントを入れて駆け引きをするが、反応されている。サクラはギリギリのところで【雷光】の斬撃をいなしながら、なんとか好機を伺っていた。

 ミツバ・B・Pの三人は流石にサポートに向かおうとするが、二○人近い敵部隊に行手を阻まれる。

 けれど、敵がサクラに向かわないのは好都合だった。まるで一対一を意図的に作り出しているようだ。【雷光】が手出しすることを禁じているのだろうか。

 高度な駆け引きの中、サクラは遂にカウンターで前に出た。虚を突かれた【雷光】は体を翻し、利き腕ではない左の剣で辛うじて弾き返した。

 再び正面で相対し、睨み合いになる。だが、【雷光】はだらっと脱力して、後頭部を掻いた。

「はあ……【紅蓮】は楽しくなさそうに戦うなあ……」

 少しだけ寂しそうなそんな呟き。サクラは少しだけ顎を引いて、暗い声色で答えた。

「楽しいわけ……ない」

 今度はサクラが前に出た。いや、出ようとした。

 サクラは急に動きを止めた。そして、サクラは静かに周囲を見渡す。

「これは……」

 その様子に、他の三人は疑問符を浮かべた。Pが無線でサクラに尋ねる。

『どうした?』

『敵陣営の動きがおかしい』

 なんとか敵の包囲網をかい潜り、ミツバたちも合流した。

『彼ら――赤鳳と青雀は、手を組んでいるかもしれない』

 三人は敵陣を見据える。左に見える翼のような模様の防護服を着ているのが赤鳳で、波のような曲線で描かれた模様の方が青雀(せいじゃく)の塔の部隊だ。彼らは一定の距離を保っていたが、少しずつ黒鷹を取り囲むように隊列を変化させていた。

『確かに……言われてみれば普通の動きではないか。よく気付いたな』

『あなた、私が何も考えずにただ敵を薙ぎ倒していたとでも思っていたの?』

 少し不服そうなその声に、ミツバは沈黙した。

『解せないわ』

 少しいじけたようにそう言うと、サクラは振り返る。

『これ以上ここで戦う理由はないわ。一度戻って態勢を立て直す』

 まだ敵陣営の兵数は多くない。守りに徹すれば、そんな簡単に突破されることはないだろう。

「なんだ? 退いちまうのか?」

 少しだけ名残惜しそうな【雷光】を尻目に、隠密部隊は撤退する。だが思いの外、敵部隊が追走してくることはなかった。

 本格的な戦闘時間はおよそ一時間程度。ミツバにとっては短い黒鷹デビュー戦となった。

 だが、赤鳳と青雀の同盟。今後の戦いが熾烈になることに、疑いの余地はなかった。


   □ □ □


 四一五層 発電区画


 戦場から帰ったミツバは、オイル香る鈍色の街を歩いていた。

 見た目は配達員の格好だ。居住区画にある複数の隠し部屋で着替えをしてから、住居であるギンの研究室へ向かっていた。これはミツバがギンの研究室に匿われていることをバレないため。

「君ら、ギンの研究所に行くのかい?」

 不意に声を掛けられ、どきっとする。ミツバは冷静さを装い、小さく頷いて答えた。

「はい、そうですが」

 相手は白衣を着ていた。おそらく発電プラントの関係者だろう。年齢は四十歳くらいで、ギンと同世代だろうか。

「ああ、一緒に持っていって欲しいものがあるだけなんだ」

 彼は荷台に乗せられたプラスチック製の大きな箱を指差した。

「分かりました」

 普通の配達員を装い、無難に対応する。

「悪いな、よろしく頼む」

 小さく会釈をして、ミツバは立ち去った。距離は五十メートルほど。わざわざ他人に頼むような距離でも無さそうだが。

 研究室に帰り着くと、部屋の奥の方からギンが出迎えた。

「んん? なんだか大荷物だねえ」

「あんたに届け物だ」

 ギンは子供のように目を輝かせて、箱を受け取った。

「おお! お願いしていたあれかあ!」

 ギンはプレゼントを貰った子供のように、無造作に箱を開封しようとする。

「ようやく来たんだねえ……って誰が?」

「知るかよ」

 封を開けると、銀色に光る直方体が出てきた。どうやら研究に使う金属だったらしい。

 ミツバは研究室のホワイトボードに目を向けた。直前までギンが書いていた痕跡がある。

 それを見て、ふと興味がわいてしまった。

「あんた、何の研究しているんだ? それ、円運動の式だろ?」

 金属を運ぼうとしていたギンは、一瞬動きを止めた。ほんの少しの沈黙。けれど、何でも即答する雄弁なギンだ。それはミツバが今までに見たことがないほどに、心底驚いた様子だったと言えよう。

「君は本当に聡いね……白燕ではそんな専門的なことまで教えているのかい?」

「前に軽く言っただろ。アイクスのエンジニアをやっていたって。それで物理もちょっとは勉強したんだ」

「あれ、嘘じゃなかったんだ」

「信じてなかったのかよ」

 そんな軽口を叩いたギンだったが、ふむと少し考え込む様子を見せた。

「一介の兵士が物理学を学んでエンジニアにまでなれる環境……白燕の塔について、かなり興味が湧いてきたね」

 文化の違い、と言えばそれまでのような気がするが。ミツバはそこまで深く考えなかった。

 ミツバはもう一度ホワイトボードに視線を向けると、気になるところが目についた。

「その円の途中にある丸は何だ?」

 円運動を表す図には、ほぼ等間隔に六個の丸が書かれていた。いや、むしろ六個の丸を通るように大きな円が描かれていると言った方が正しいかもしれない。

 ギンは嬉しそうに目をパチパチとさせてから答えた。

「これは、塔だよ」

 ミツバはその言葉を咀嚼しようとするが、それよりも先にギンが説明を加える。

「そしてこの全体図は、全ての塔を通るような粒子加速器の設計図さ」

 塔が円形に配置されているのは地図から知っていた。

 けれど、その塔を通るような粒子加速器?

 直径数十キロメートルにも及ぶサイズになってしまうはずだ。

「一体……、何のために? 兵器でも作ろうっていうのか?」

 のんのんのん、とギンはわざとらしく人差し指を左右に振った。

「ただの研究だよ」

 ミツバの中に、強烈な違和感が生まれた。ただ、この時はまだその正体には気付くことができなかった。

「このサイズの加速器を製造できたなら、『ブラックホール』を生み出せるはずなんだ。微小だけどね」

 ブラックホール。その名前をミツバは知らなかった。ギンの説明によると、光すらも飲み込むような極端に重力の大きい存在、らしい。

「ブラックホールを生み出せたら、どうなるんだ……?」

「どうにもなりやしないさ。物質がどのように構成されているのかを、より深く知ることができるだけ」

 ギンは即答した。えっと、とミツバは続けた。

「つまり、何の役にも立たないってことか?」

「ああ、もちろんだ。研究に理由なんていらないのさ」

 ギンは雄弁に研究について語り始めた。原発事故の前にはそのくらいのサイズの加速器が実在したことや、その原理についてまで。

 これがギンという男の本質だった。何も悪びれず純粋に己の好奇心に向き合い、何の役にも立たない研究に没頭する。

 ただ、その異質さに目を向ける前に、ミツバの脳内は別の思考で埋め尽くされていた。

 円形粒子加速器。今まで存在すら知らなかったものによって、何かが生まれそうな予感。

 その時、トントンと階段を降りる音が聞こえた。サクラはここに住んでいることは既に知られているので、先に帰って着替えまで済ませている。今も饒舌に研究を語るギンを見るも無反応で、ミツバの方へトコトコと歩いてきた。

「帰ってきていたのね。来て」

 言葉足らずだが、いつものことだ。ミツバは黙ってついていく。

 案内されたのはサクラの部屋。簡素で物は非常に少ない。サクラはピシッと指を差す。

 そこにいたのは、全長1センチほどの小さなハエだった。

 多くの生物は絶滅したが、ごく僅かに生き残った種も存在する。

 そんなことはつゆ知らず、ミツバはペシっとハエを叩き殺した。

「これでいいか?」

「ありがとう」

 いつからかサクラは虫を見つけると、ミツバに駆除を頼むようになった。あの【紅蓮】ともあろう強者が虫を苦手だというのは最初は驚きだったが。

 それ以上は特に会話無く、ミツバは部屋を出ようとした。その時、不意に枕元に本があることに気付く。

 表紙に書いてあったのは『希望の塔プロジェクト』の文字。ミツバは違和感に気付く。

「サクラ、君は文字が読めなかったよな?」

 そもそも紙媒体の本自体が珍しいのもあるが、それを文字が読めないサクラが持っているという不自然さ。

 本に興味を持ったミツバを見て、サクラは困ったように本を取り上げた。

「これは……ダメ。お母さんから貰った……宝物」

 そこまで言われると、ミツバは引き下がるしかない。まあ、本と言っても絵が描かれたものもあるし。

『プロジェクト』という言葉に縁がなかったミツバは、そう思ってサクラの部屋を後にした。

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