終章
Hgとの戦いが終わってから、一週間が経過した。
アイシャやAの細々とした後処理も終わり、久しぶりの日常生活を過ごしている。増えた悪魔達、特にグレモリイのせいで穏やかとはいえないが。
また、すぐに厄介な出来事が舞い込んでくるだろう。直巳が望んでいなくても、きっとアイシャ辺りが持ち込んでくる。だから、今のうちに日常生活を満喫しておかなくてはならない。
直巳と伊武は、今朝も椿家のリビングで賑やかな朝食を摂り、二人で学校へ向かう。
直巳の何気ない話に、伊武が少ない言葉で答える。Hgのことで思い悩んでいた時の、おかしな伊武ではない。いつもどおりの伊武に戻っていた。
通学途中、学校に近づくと、クラスメイト達が挨拶をしてくる。
「おう、椿おはよう」
「おはよう」
クラスメイトの男子。いつもどおり直巳にだけ挨拶をして、歩き去っていく。
そして、背後から若林が直巳の背中を叩き、挨拶してきた。
「つーばき、おはよ!」
「ああ、おはよう」
みんな、いつも直巳だけに挨拶をする。伊武に挨拶をしても、小さくうなずくだけなので、大体の人は迷惑がられていると思い、やがて挨拶をしなくなる。
だが、この日。若林は、直巳と挨拶をかわした後に、ちらりと伊武を見て、彼女と目が合った。いつもなら他人に目を向けることすらしないのに、珍しいことだ。
それで、若林は思い切ってみることにした。
「――伊武さん、おはよう!」
若林は普通よりも元気良く、伊武に挨拶をする。流されたら、その分居心地が悪くなるのだが、若林は何かを感じたのだろう。
伊武は、少し驚いた表情をした後に、ゆっくりと口を開いた。
「お……おはよう」
照れたような口調と表情。だが、しっかりと挨拶を返した。
「――うん! それじゃ、また後でね!」
若林は去り際、直巳と顔を見合わせて、嬉しそうに笑った。
これから、伊武には少し友達が増えるかもしれない。
それからも何人かと挨拶をかわしつつ、校門の前まで来た。
直巳は今日の予定を思い出す。授業も早く終わるし、今はもめ事もないから、早く帰る必要もない。ようするに、暇ということだ。
教室で言うよりは、二人きりの今、言った方がいいだろう。
「ねえ、伊武」
直巳が立ち止まり、伊武を呼び止める。
「……なに? 椿君」
伊武も立ち止まり、律儀に直巳に体を向けて返事をする。
「今日、学校終わったらさ。どっか寄って帰ろうか」
「え……」
伊武は、少し驚いた表情。
直巳は続けた。
「どこでもいいんだけどさ。たまには息抜きっていうか……どうかな」
直巳が再度たずねると、伊武はゆっくりと表情を崩した。
「――うん」
伊武が以前と同じに戻ったと言ったけど、実は、ちょっとだけ変わったことがある。
本当に小さな変化で、みんなは気が付かないかもしれないけど。
あの戦いが終わった日から、伊武は少し――少しだけ、普通に笑うようになったんだ。
本作、「ツバキ黙示録 第三篇 -永遠少女に捧ぐ花-」を読んでいただき、ありがとうございます。
「ツバキ黙示録」の3作目になります。
2作目から繋がる形になりました。
楽しんでいただければ何よりです。
今回は相当難航しました。
今度は早いペースで公開できたら、なんて言ってたのですが、
時間がかかってしまい申し訳ありません。
ただ、内容に関しては満足いくものが出来ました。
次こそは早くと、自分にハッパをかけるために今回も一応言っておきます。
内容について。
これまでのツバキ黙示録の感じでありつつ、
いつもとは違うものをお見せしたいなと考えていました。
伊武のことを少しでも好きになってもらえれば嬉しいです。
新しい悪魔も登場しました。
フラウロスとグレモリイです。
椿家が段々、動物園と化していきます。
ソロモンの悪魔、動物モチーフ多いんです。
ちなみにグレモリイ(ゴモリーとも言います)が女性悪魔として記されているのは本当です。
次作については、この投稿が終わってから考えようと思います。
書きたいことはまだ色々とあるので、これから考えてみます。
それから、前作は何週かに分けて公開したのですが、
書き方と性格上、一気にアップしないと駄目だということがわかったので、
また全編一斉アップに戻しました。
アドバイスをいただいた方、生かせないバカで申し訳ありません。
最後に。ぜひ、本作についてのご意見やご感想をお聞かせください。
「読んだよ」ぐらいでもすごく嬉しいので、お待ちしております。
これ定型分とか礼儀じゃなくて超本気のお願いです。
後書きまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
また次回作もよろしくお願いします。




