第二十五話~舞踏会の始まり~
俺が今までに見たことのある大きな建物といえば、中央に出てきたときに見た駅と学園校舎である。
どちらも大きくて壮大な感じで見る者を圧倒させていた。
俺の目の前にある建物は同じくらい大きくて壮大です。なんだこれ。
これが一軒家だなんて有り得るだろうか?これが個人宅だなんてありか?
なしだと思うわけですが。
思わず茫然としてしまう豪奢なエレメンスタイン家に嘆息する。
お嬢様は俺が思っていた以上にお嬢様でした。
侯爵家でこれなら王城とかどうなってんの?
至る所から灯りの漏れ出るそのお屋敷からは微かに音楽と人々の笑い声が聞こえる。
どうやら舞踏会は盛況のようですね。イイコトダトオモイマスヨー(棒読み)
まぁいい。俺は俺の目的を果たすだけだ。
…こんな家の主と一対一で会話とか、想像だけで胃が痛いけれども。
入口に待機していた従者に舞踏会の会場である大広間までエスコートされる。
この屋敷に何人ぐらい働いてるのかな。
想像もつかない。
大広間の入り口には見るからにセバスチャンな壮年男性が立っていた。
「セバスチャン」
「これは、お嬢様。お帰りなさいませ」
…マジでセバスチャンらしい。そういえばセバスチャンって一番最初は何なんだろう…。
「シオル・ド・カツラギ・エンラントリュード第一皇女殿下、レティスリール・ファブノーチェス・エレメンスタイン侯爵令嬢、リース・クロフ・エネリーク様並びにルーナ・クロフ・エネリーク様、ご入場でございます!」
セバスチャンが大きくはっきりした声で俺たちの登場を演出した。
すいません、逃げていいですか。
物凄く注目されている。理由は分る。
この家の娘にお姫様、そんでもって男装の麗人(そして俺)だ。
普通注目されるのが当たり前だな。
ざわざわとした広間は所謂ビュッフェスタイルでそこらかしこで手に皿やらグラスやらを持った人々が歓談している。
煌びやかなその世界は、俺のいる場所じゃないなぁと心から思うよ。
招待主にまず挨拶をしなくてはいけないので、エレメンスタイン侯爵夫妻を探す。
流石に娘であるお嬢様はすぐさま見つけたようだ。
「お父様、お母様、素敵なパーティーですわね」
「おお、レティ!…うむ、私が贈ったドレスが良く似合っているよ」
「可愛らしくてよ。シオル皇女殿下様も、素敵なお召し物ですわ。皇女殿下様に良くお似合いで…」
「お招きありがとうございます。本日は皇女としてではなく、レティスリール嬢の友人として扱ってくださいませね」
淑やかに綺麗にお辞儀をするシオル。
にこやかな笑顔がとても爽やかである。
「本日はお招き有難うございます。レティスリール様と親しくさせていただいております、リース・クロフ・エネリークでございます」
「ルーナ・クロフ・エネリークでございます」
学園で習った風にお辞儀をする。
スカートをちょっとつまんで足を折るという…凄く…大変です。
男としての矜持も一緒に折れます。いつものことですけど。
で、ルーナちゃん、貴女何で執事風!?
思わず自分の口調を忘れるほど衝撃的なんだが。
セバスチャンかゲンノスケさんにでも弟子入りしたのかってくらい決まってるんですが。
どこを目指しているんだ、妹よ…。
相変わらず短いですね、すいません。
漸く舞踏会に侵入(!?)しました。
次回は侯爵夫妻VS主人公です(嘘)
侯爵夫妻が明かす、お嬢様が突然変異した理由とは…!?