異界の迷子と精霊9「不思議な幼女」
「コビト…?妖精…?」
「誰がコビトぢゃ!我は!……あっ」
リクトの呟きを聞き咎めた幼女が振り返り、リクトを見て固まる。
「あっ、驚かせてごめん。こんな所で何してるの?迷子?」
「迷子はおぬしぢゃろうが」
キッと怖い顔を作って睨み付けるが、愛らしい幼女なので怖さは出せていない。
「あーはい、たしかに。君は里のエルフの子なのかな?」
そう言えば幼いエルフにも似ている。狩りの日の宴に来ていた里の子どもであれば、クロディーヌ様の言葉を聞いているだろう。だが幼女は首を振った。
「我はエルフではない」
分からないのか、とばかりにリクトをじっと見詰めるが、リクトには全く覚えがない。
「我は………わ、我は崇高なる存在であるぞ!崇めよ、讃えよ、そしてリクト、我をおんぶせよ!!!」
腰に手をあて、小さな胸を張る。
え?おんぶ?ていうか俺名乗ったっけ?
「こんな所に居たのか。リクト、何やって………ええっ!?」
一向に追い付かないリクトを探しに戻ってきたらしいタミルが、幼女を見て固まる。丁度幼女がリクトを見て固まった時のように。
「おおー、迷子よ、迎えも来たようぢゃ。帰るぞ。はよ我をおんぶせんか」
何だか分からないが、タミルがとんでもなく慌てているのはわかる。
「リ、リクト、おんぶ、すぐ」
何故かカタコトになったタミルに促されて幼女をおんぶしたリクトは、その軽さに驚いた。まるで空気、いや、風のようだった。
「そこなエルフ、我を里まで案内せよ」
おんぶされた幼女はごきげんで足をバタバタさせながら、人差し指を高く掲げてタミルに命令する。
「ハイッ!!!」
どこぞのおてんばな王女さまとかそういう類いだろうか。しかし供も連れずにこんなところに居ていいのか?
タミルはやたらエラソーな幼女に恭しく敬礼し、幼女をおんぶしたリクトを、いや、リクトにおんぶされている幼女を気遣いながら努めてゆっくりと導き始めた。
(タミルも流石はエルフだよなぁ)
タミルは男性だし、普段はそのさばけた性格のため意識しないが、こうしていると貴族とか王国騎士とか近衛兵とか、そういうのも似合いそうな優美さがある。などと呑気に考えながらタミルの後を付いて行くリクトであった。
正直こんなキャラにする予定ではなかったです。
書いているうちにキャラが暴走してしまうことってあるんですね。この子は書いてて楽しいです。