九十三話
しばらくハイオークの相手をしているとセバスチャン達が駆けつけてきた。
「ウィリアム様遅くなりました。侵入したハイオークが思ったより多く手こずってしまいました」
「師匠。周りは任せてください。ってあれ。魔法が発動しない」
「ぐぬぬ。いつもより体が重いです」
「俺様がいる限り魔法なんて使わせねぇよ」
「魔法をなんだかの方法で無力化してくるようです。気を付けてください」
「貴方は魔封じの一族ですか」
「ほう。魔王である俺の事を少しは知ってる奴がいるじゃないか」
「ウィリアム様相手は自分のいる一定の範囲を魔法無効化空間にすることができるのです」
「厄介な体質ですね。それで物量作戦ですか」
「こんな雑兵いくらいた所で敵ではないがな」
ラファエルは槍を振り回しながらハイオークを次々血祭りにあげている。
「効果範囲が狭いところからみてまだ子供ですな」
セバスチャンも手刀でハイオークを屠って見せる。
「ミリアーヌは魔法が使えないんだから無理しないようにね」
ミーシャが剣を振りながらミリアーヌを庇うように立ち回っている。
ハイオークの数が多くて魔王の元にまでたどり着けない。
「中々やるな。でも全員が大丈夫ってわけじゃないようだな。弱いところから切り崩せ」
魔王の指示でミーシャとミリアーヌのところにハイオークが密集する。
魔王に向かうのを諦め二人の援護に向かおうにも密集されていて時間がかかる。
あと一歩でたどり着くというところでミーシャの剣が滑る。
ハイオークの剣がミーシャに迫る。
「ミーシャさん危ない」
すぐ近くにいたミリアーヌがミーシャを突き飛ばし背中側からハイオークの凶刃がミリアーヌを襲う。
目の前でミリアーヌの体がゆっくりと倒れていく。
邪魔な肉塊を一息で斬り捨てる。
「ミリアーヌさん。なんで。なんでよ」
目の前ではミリアーヌを抱えて泣きじゃくるミーシャがいた。
回復魔法を発動しようとするが当然のように発動しない。
遠くからは魔王のあざ笑う声が聞こえている。
ドクン。
心臓が跳ねる。
ミリアーヌの体から甘く心地よい匂いが漂ってくる。
「ミーシャしばらく頼む」
「ウィリアムさんお願いミリアーヌを助けて」
ミーシャは疲れた体に鞭をうちまわりのハイオークを牽制してくれる。
頭の中に声が聞こえる。
『この娘を助けたければ本能に従えばいい』
自分の歯が牙に変容していく。
本能に従い柔らかそうなミリアーヌの首に牙を突き立てた。




