四十九話
祈りを終え入り口に戻るとまだ楽しそうに話しているミリアーヌとアンナが目に入ってきた。
「積もる話もあるでしょうし私は買い物にいってきますね。終わったら迎えに来ますので」
「師匠。ありがとうございます。お言葉に甘えさせて貰いますね」
神からの助言に従い収納魔法の中から剣を取り出し腰に差しておく。
教会を後にして市場をまわることにする。
セバスチャンは珍しい物でも上手に調理してくれるので気になった物を大人買いして収納魔法にしまっていく。
ミリアーヌの為に甘味処を巡り甘いものの確保をしているとアーネストが甘いものを食べているところに出くわした。
「アーネストさんご無沙汰しております」
「ウィリアムさんですか珍しいところでお会いしましたね」
「最近、弟子を取りましてね。弟子が甘いものが好きなのですよ」
「研究で疲れた後に取る甘味は格別ですからね。お弟子さんの気持ちもわかりますよ」
ウェイトレスにコーヒーを頼み相席させて貰う。
「研究のほうは進みましたか」
「戦争には貴族の義務で強制動員されましたし戦費で予算が足りないとかで雀の涙の研究費もカットされました。ゴーレムを操れる宝珠も報告にあげたら元々ロッテムハルト家のものということで取り上げられてしまいました」
「踏んだり蹴ったりといった感じですね」
「ウィリアムさんは戦争で大活躍だったようですね」
「領主であるロードベルト卿からの覚えは悪いようですけどね」
「ロードベルト卿で思い出したましたよ。マクロードの森に大賢者の屋敷があるとかで複数の冒険者に資料探しの依頼を出しているらしいですよ」
マクロードの森にある屋敷とは間違いなく自分の所の事だろう。
セバスチャンがいるので屋敷の守備に関しては問題ない。
森に出現する魔物は他の地域と比べて圧倒的に強いので並の冒険者ではたどり着くのも困難だろう。
「あの森は他の地域より魔物が強いので冒険者達の安否が心配ですね」
「ウィリアムさんはマクロードの森についても詳しいのですね」
「詳しいというより住んでいますからね。彼らの目指しているのは私の屋敷で間違いないと思いますよ」
「風の噂で大賢者様が生きているという話は聞きましたがもしかして」
「ウィリアム・フォン・マクロードが私の名前ですね」
「これはご丁寧にアーネスト・フォン・リーベルトと申します」
「今度私がまとめた古代遺跡の資料をお持ちしましょう」
「よろしいのですか」
「私とは違う見識が出るかもしれませんし死蔵していてもしかたないですからね」
「ありがとうございます」
二人分の支払いを済ませミリアーヌを迎えに行くためにカフェを出た。




