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駅前に冒険者ギルドが出来ていた  作者: 光晴さん
強者の責任

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第87話 オークション前日のギルドで




冒険者ギルドナブト支部の地下二階にある倉庫。

ここでは、明日のオークションに出品される商品の確認がおこなわれていた。


「……魔剣、オッケー……上級ポーション、オッケー……」

「カレン先輩、こういう出品物の確認って当日持って来るものに関しては、どうするんですか?」

「……ん~?……もちろん、その時にチェックするよ~……」


ギルド職員のカレンは、出品物のチェックをしながら、後輩職員のメリッサの質問に答えていた。

今、この倉庫にしている場所には、価値あるものが所狭しと並べられている。


勿論、この倉庫に通じる入口は、ギルドが用意した警備兵に見張られているから、ドロボーが入る隙はない。

オークションに出品される品物は、そのほとんどがダンジョンで出現したものである。



「……毛生えポーション、オッケー!

これで武器に防具、それとアイテム類のチェックは完了。

後は当日と独アイテムだけね」


「それじゃあ、これで終わりですね?」

「メリッサちゃん、何を言っているの?

後は、向こうの出品奴隷が残っているでしょ?」


チェック作業が終わったと喜ぶメリッサに、倉庫の壁を指さして注意するカレン。

そう、倉庫の壁の向こうに、明日出品される奴隷たちの待機している部屋があるのだ。


実は、オークションに出品される奴隷は、体調管理や万が一の事態に備えて主催者である冒険者ギルドで預かっているのだ。

勿論、奴隷といえど体調管理のために預かっているのだから、日々の食事などには気を使っている。


「……私、あの奴隷たち、苦手なんですよ……」


壁を指さした先輩のカレンに、メリッサは嫌な顔をして答える。

カレンは、メリッサがどうしてそんな顔をするのか分からず聞いてみた。


「どうして?」

「何ていうか、あの、すべてをあきらめた、目が嫌いなんです。

それに……こう言っては何ですが、出品奴隷の七番、あれ、違法奴隷ですよね?」


メリッサから指定された七番の奴隷を探すカレン。


「……七番……七番……この子ね。

名前は、シャロン。東から流れて来た奴隷ってことになっているわね。

容姿に傷なし、奴隷になってから今回のオークション出品が初めてって珍しいわね。

……奴隷になってから、半年もたっていないからかしら?」


「ほら、カレン先輩、怪しいでしょ?

多分そのシャロンって奴隷、どこかの国で政争に負けた貴族の令嬢ってことじゃないですか?」

「う~ん、ありえるか……?」


詳しく書かれた資料を見ながら、カレンは考え込む。

確かに、この資料を読めば読むほど、元貴族令嬢っていうのが当てはまる。


しかし、今は奴隷の一人だ。

どんな身分だった人であれ、オークションに出品される奴隷に違いはないのだ。

主催者側としては、預かった以上は、体調管理をちゃんとするだけだ。


「とにかく、メリッサ?

昔どんな身分だったなんて関係ないわよ、オークションに出品された以上、その奴隷をどうするかは買い手次第。

勿論、奴隷の扱いに関しては、この国の法律を守ってもらいますけどね」


「守りますか?」

「守るわよ。というか、守らないといけないのよ。

奴隷の扱いは、購入した国の法律が最優先で適応される。

それが、購入後、別の国へ行ったとしてもね」


隷属の首輪に仕掛けられた、購入した国の法律に違反した場合は、隷属の首輪が外れ、奴隷から解放されるようになっているのだ。

ただし、ワザとでは外れないようになっているとのこと。


「……ワザと外すって、どうやって分かるんです?」

「さぁ~、どうなっているのかさっぱり……」


そう、この隷属の首輪の仕組みは、いまだ解明できていないのだ。

どうやって、法律違反とワザととの違いが分かるのか、全く見当がつかない。

そのため、世界の謎の一つとなっている。


「とにかく、出品奴隷の確認に行くわよ?」

「は~い……」




▽    ▽




冒険者ギルドナブト支店の地下二階にある部屋。

十畳の部屋が四つあり、それぞれ丈夫な檻が付いた牢屋となっている。


本来は、ここに捕まえた盗賊や犯罪を犯した冒険者などを入れる場所なのだが、今回は、オークションに出品される予定の奴隷を入れておいた。


ここの牢屋は、犯罪者を入れる場所としては清潔にされており、床は板張り、壁は白壁、勿論、中に分厚い鉄板が仕掛けられているのだが、外からは全く分からないようになっている。


天井も明るい色の白で統一。明り取りの窓はないが、魔道具のライトが付けてあるので、暗くはない。


牢屋には、それぞれ男女別れて六人ずつ入っていて、ベッドも人数分用意された。



カレンとメリッサは、労の外から、中を除き、資料と顔を確認してチャックしていく。


「……七番、確認オッケー……八番、確認オッケー………」

「え~と、鑑定メガネで確認しましたが、病気などに感染している奴隷はいませんでした」

「メリッサちゃん、ありがとう」


チェック項目の書かれた書類にチェックを入れていきながら、病気無しの報告を記載する。そして、さらに奴隷たちの確認をしていく。


メリッサは、ここにいる奴隷たちの目が死んでいるのに、どうしようもないやるせなさがわいてくる。

完全に諦めている人たち。


これを見るのが、どうしても受け付けなかった……。


「……二十一番、確認オッケー。二十一人全員確認終了。

さ、メリッサ、確認も終わったし、上に上がりましょう」

「……はい」


カレンとメリッサは、さっさとこの牢屋から出ていく。

とくにメリッサは、もう用はないと、カレンより先に出ていった。



牢屋から出ると、分厚い扉を閉めてようやく安堵するメリッサ。

そんなメリッサに、カレンは苦笑いを浮かべるのだった。





今日は、ここまで。

次回、オークション開催!






第87話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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