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教師たる者その3【教育の機会は均等にすべし】









「――すばらしい! 召喚は成功したのだね!」


 まばゆい光が収まった時、俺の目に入ったのは銀髪ちょび髭のおっさんだった。カツラなのかどうかは分からないが、貧相な顔には不相応なクルクルカールで、なんだか見ていると可哀そうになってくる出で立ちだ。服装は華美で立派だが、ごてごてしい装飾が反対に品位を下げているようにも感じる。


 まあ俺がそもそもこういう人種を、モーツァルトかバッハの肖像画くらいでしか見たことがないということにも、違和感の原因はあるのだろうけれど。


 俺の隣で同じようにおっさんを見ていたエビちゃんは、こっそりと囁く。


「見てくださいあの悪人面。きっと王宮を影で操ろうとしている小悪党ですよ。あのちょび髭が何よりの証拠です。というかうちの教頭にちょっと似てません?」


「うむ、エビちゃんもそう思うかね」


「ああいうタイプは、「おお勇者よ我らを救いたまえ!」とか序盤はすがり付いてくるくせに、魔王を倒すと手のひらを反すように迫害してくるタイプですね、間違いない」


 初対面の人間をひどくこき下ろすエビちゃんに苦笑しながら、俺は周囲の様子の把握に入る。石造りの部屋の中、俺たちを囲んでいる数人の男女、足元には得体のしれない魔法陣。典型的な、異世界召喚のパターンってやつだな。あの神を名乗る少女は【世界の輪】とか言ってやがったが、どうやらその出口はこの魔法陣につながっていたらしいことは推測できる。こんなにすぐに状況が理解できるのも、直前に異世界ものを読んでいたおかげである。


 だいたいこの後のパターンは、俺たちを召喚したらしい人物たちが友好的に接してくるか、あるいは反対に敵対的になるかだ。敵対的になる場合、よくて家来、悪いと奴隷にされてしまうようなこともあるらしいが、この世界はどうなのだろうか。


「たしかに、ああいう人間は話が長いくせに中身が無い奴が多いな。そのくせ学内政治にはなぜか長けていて、引っ掻き回すだけ引っ掻き回して責任を取らないし」


「ああー分かります。定時の時間を過ぎた後に、いやらしいにやにや顔で迫ってきて、「蛯名くん、今日一杯どうだい」なんて言ってきて丁寧にお断りしているのに「遠慮なんかしなくたって」と勝手に好意的に解釈した挙句、こちらが強く断ると「最近の若者はコミュニケーションがね」とかグチグチ言ってくる系管理職の顔ですね」


「……何を言ってるかよく分からんが、失礼なことを言われていることだけは分かるぞ」


 新パターン。召喚された側の人間が敵。なんてね。

 少しばかり怒りのこもった眼で睨み、一歩こちらに詰め寄ろうとしたクルクルカールを、しかし腕で静止する人間がいた。知的な丸眼鏡に、意志が強そうで好奇心に溢れたダークブルーの瞳。肩で切りそろえられた銀髪を涼やかに揺らしながら、こちらを見定めようとするまなざしが俺たちを捉える。

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