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パブロドグマ  作者: ほたて
無題
1/46

退屈なプロローグ

「続編ってのが、な〜んでカス揃いか考えた事あるか?」


 展望台。

 ガラスの向こう——眼下広がる街並みを眺めながら、男はのんびりとした口調で言葉を吐いた。


「答えは単純明快——続編だからさ。正解者には金一封とグアム旅行のプレゼントだ」

「……それは哲学か何かの話?」

 男の隣に立つ女性——畔あさきが、眉を顰めて疑問を呈する。

 これに、男はおどけたように肩をすくめた。

「い〜や、ただの現実の話さ。最新の超大作を観るのに、クソ程事前知識を要求される……人の時間は有限だってのにな。そんなことばっかやってるから、ここ何年かのマーベルフランチャイズは鳴かず飛ばずなんだよ。世知辛いねぇ〜」


 くたびれた、グレーのスーツ姿の男。

 身長は高め、体格は痩せ型。

 髪色は黒。


「ま、要は話をややこしくすんのは愚策、って事だ」


 男は二本、指を立てる。

 

「この世界の基本ルールは二つだけ。一つ、『パラドクス』っつー面白愉快な超能力が存在する。二つ、『阿島京介』っつー世界最強が存在する。これ以外の情報は全部おまけみて〜なもんだからな。ま、詳しくはwebで、だ……ちょっと古いな、これ」

「阿島京介、ね……個人の存在を世界のルールと言い切るのは、随分大袈裟に思えるけど」

「それだけスペックがバグり散らかしてるのさ——異能力バトル物の鉄則が何か、知ってるかよ」

「……逆説を素地とした、逆理の異能?」

「それは『パラドクス』の、だろ?ま〜例外はあるが、往々にしてって話をすんならよ、〝一人につき能力は一つきり〟って奴だな」


 ポケットに手を突っ込んで、男が肩をすくめる。


「能力を消す能力、なんて超興醒めだ。能力を増やす能力も駄目だな。一人がいくつもいくつも特殊能力持ってたら、パワーバランスもクソもね〜。そんなカスエンタメ、10週打ち切り待ったなしだ……んで、この阿島京介ってのがまさにそんなカスエンタメの権化みて〜な野郎なのさ」

「……能力を消せる?」

「い〜や、後者。野郎の『パラドクス』は、異能を創る逆理だ……自分限定だけどな。ソイツを使って、アイツは自分自身を改造してんのさ。〝阿島京介は改造人間である!〟ってな」


 男は軽薄な笑みを浮かべていた。

 その瞳は相変わらず、眼下の街並みへと向けられている。


「アイツが持ってるパラドクスは全部で五つ。

 異能を創る異能。

 異能を複数保持出来るようにする異能。

 周囲の対象を正確に感知・捕捉する異能。

 感知した対象に完全反応する異能。

 破壊不能と認識した物体を破壊する異能。

 一個一個は大したもんでもね〜けどな、これらが相互に作用すると、あ〜ら不思議!完全無欠のスーパーヒーローの爆誕よ。まったく、呆れるチート野郎だ。市内の大会だったら出禁だぜ」


 男が、わらう。


「カッコつけた横文字使っても、所詮ただの人間だからな。カッターで刺されりゃ死ぬし、銃で頭吹き飛ばされりゃなす術なしだ。けど、阿島京介だけは違う。第三次世界大戦が起きようと、生身で出向いて普段着でやり過ごす。あれはそーいう代物だ。だから、俺ぁ思ったのさ……」

「……何を?」

 あさきが、問う。


「これは作者、扱いづらいだろ〜なってな」

 男は、真剣な面持ちでそう答えた。


「考えてもみろよ。どんなトラブルが起きようが、何しようが、阿島京介が一人でぷら〜っと出向きゃーそれで解決。緊張感も何もあったもんじゃね〜。馬鹿の無双が見て〜んだったらweb小説でも眺めてろって話だ……けどま、俺はエンタメ好きだから、そんな話を放置してるってのも気が引けちまうのさ。だから——」

「……から?」


 男が、笑った。


「殺しに行こうと思ってよ、阿島京介。今から」

「………………今から?」


 男が、笑った。


「よく漫画とかでよ〜、戦い大好きみて〜なイカれ居るだろ?ところが連中は何かに付けて『最強』相手は避けやがる。おかしな話だ、非合理的で超許せね〜」


 男は——……——…………


「ぶっ殺したけりゃ、ぐだぐだ言わね〜でやっちまえばい〜のさ。それに、小物の小競り合いより、作中『最強』が暴れてるトコのが見て〜だろ?現代っ子ならなぁ」


『明石真』は、嗤った。

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