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AIさんと二人三脚で作りました。
合わない方へはブラウザバックを推奨します。
一人称と三人称が混在しているかも。
AIさんて、どうしてあんなに好戦的なの……。
わたしは夢うつつの中、自分の人生を見つめていた。
ああ、こんな時もあったな、と感慨深い。
今は動かない足。それを使って駆け回っていた若いころのわたし。
もしかして、ようやく解放されるのだろうか。そうならばこんな嬉しいことはない。
アレ? まさかこれ、走馬灯とか言わない?
と思いつつ目を開けると、そこは白い世界。
……いろいろ察して『終わったな』と思った。
(何度願っても、届かなかったのになあ)
悔しさに歯噛みした。
(あのときも、誰も助けてはくれなかった)
雪の日、自転車で転んで座り込んだわたしに迫る車の陰。あとは足の痛みだけだった。
その場に立っていたのは、明らかに『日本人ではあり得ない』ほりの深い洋風の顔立ち。
かと言って地球の西洋人顔とも違う。
有り体に言えば、『神さまらしい』顔立ちの人だった。多分これは、わたしの『神さまはこんな感じ』ってイメージしている顔を、そのまま表しているんだろうけれど。
純白のトーガを揺らして、白皙のその人は金髪碧眼でにこりと微笑んだ。
自己紹介もなく、唐突に用件を言う。
『君には我が世界に転生していただきたい』
「はい。お望みのままに」
『多少の特典は付けよう。地球での記憶は付けたままだ』
「はい。お望みのままに」
『……インベントリ、鑑定、言語理解。その他に望みのものはあるかね?』
「はい。お望みのままに」
『…………なぜその言葉を繰り返しているんだい?』
「…………」
白皙の顔面を少し困ったように歪めて、『神さま』は問いかける。
なぜって。決まってるではないですか。
あんなに望みを叶えて欲しくて願ったときは華麗にスルーしておいて、神自身が何かを願う、『願っている』と言うこと自体が、叶えられないはずもない『命令』と同義なのだ。
ヒトの身で何を拒絶できるのだろう。
必要なものを考えさせられても、わたし自身にはこの神さまの世界で長く生きるつもりはない。
記憶も何もかも消去してくれた転生ならば、一瞬だけは考慮できるかも知れないが。
わたしは、前の世界の日本で生きることだけしか考えていなかった。
と言うか、あの暮らしを手放せる人なんているの? 日本の食事情を放棄できる人なんている? まあ、日本の暮らしは食以外は自慢できるようなものじゃなかったかもしれないけど。
でも礼節とか、先祖から受け継いできた伝統なんかは凄い。日本の歴史は長いもんね。
……いや、違うな。確かにわたしは、前の人生は終わって欲しかった。そのうえでまた新しい日本人としての人生を送りたかったのだ。せめて、親ガチャは良くしてもらって。
「別に何も。否定しても拒絶しても、そちらの世界に転生するのは決定しているんでしょう? どんな希望を持てと? あらかじめ言っておきますが、わたしは新しい世界や、剣と魔法、魔物なんて心底下らない、と思っております」
神さまは愕然とした顔をしていた。
誰も彼もが剣と魔法に大喜びをすると思っているのだろうか。
と言うかこの異世界を、後始末させるためにだけ、自分の世界のヒトではなく、他人(地球人)任せにするその根性が大キライだ。本当にそうか分からないし、予想しただけだけど。
「さあ、さっさと外界に下ろしてください。……すぐにまたお目見えするでしょうけれどね」
わたしは冷静さを装って吐き捨てた。
神さまは、ととのった顔を、整いすぎた無表情に固定し、しばし無言でわたしを見ていた。
情報を読んだのか。行く末は人間次第と思ったのか。その思惑は分からない。
また少し困った風の顔をして、神さまはおもむろに両手を掲げ、辺りは白い光にのまれる。
次に目を開けたとき、森の中だった。
ですよねー。分かってた。
何でまちの近くに降ろさないのかな。考えが足りないでしょ。
地球人の、って言うより日本人の脆弱さを舐めないで欲しい。どうせ食いに来る魔物がいる。金目の物を狙う盗賊がいる。
もうちょっと戦闘慣れした、サバイバル生活慣れした民族を呼べば良いのに、何で日本人?
だてにわたしはweb小説を履修してねーぞ。
食事を探さないといけない。水場を探さないといけない。……どうしてこんなサバイバルをさせる必要があるんだろ。とことん意味が分からない。
はあ、こんな場所、すぐにまたリターンホームよ。
周囲を見回して、一番太い木陰に座り込む。移動する気さえ起きない。
あー、木漏れ日きれい。小鳥の声がのどか。風がふんわり吹いて、髪の毛をさらっていく。
スマホがあれば、動画アーカイブが観れるのに。と、いつも入れていたポケットを漁ったら、スマホがあった。
首から吊り下げる、スマホ用のネックストラップやカバー、充電のしすぎでもうちょっとバッテリー部分が膨らんでいた記憶があるのに。ストラップを首にかける。
いじっていて判明したが、どうやらこちらからのアップロード(SNSへの投稿とか)は出来ないが、ダウンロード(動画を見たりウ◯キを見たり検索をしたり)はできる様子。バッテリーが切れるだろう数時間。
写真で木漏れ日の美しさを撮ったり、前世から楽しんでいた動画のプレイリストの続きを観ていた。
けれど、一向にバッテリーが減る様子がない。寝る前はどれくらいだったか。
電池量のパーセンテージを見ておけば良かった。60%より減ってるのか増えているのか。
「……まあ、いいか」
考えても仕方ない。また木の幹に頭をもたせ掛ける。何年か引きこもった生活もしていた。『何もしない』生活には慣れている。
ああ、確かweb小説だと、魔素? マナ? が電気の代わりになっているんだったか。電気が決まった通路以外通れないようにカバーをかけているのと反対に、地球にはない、そこら中にある空気と同様、魔素やマナのある世界。代替になっているのかな?
ホント、どうでもいい。死ぬまで、せいぜい楽しもう。
……動物もあまりいない森の中なのか、遠くに鳴き声は響くが近くには気配すらない。
今はまだ、食事に飢えた感じや喉の渇きはない。
日が落ちてゆく方向を見ていると、日の傾き加減でアチラに巨大な水たまり、キラキラ反射している──海が見えた。と言うことは、その水辺に街もあるのだろうか。
ああ、海には行っても良いかもしれない。だって海に潜ったら溺れられるし。水棲の魔物もいるかもしれない。崖があったら、飛び込めるかも。
……幼いころに住んだ海辺の町。崖上の、確か『利養所』だったか。父親が雇われ支配人で、従業員様宿舎に住んでいた。幼稚園時代の短い期間。
思い出が全部、死ぬための手段? に思えて笑ってしまう。
海は好きだ。海産物は苦手だけれど。
波を見ているだけで、……寄せて返す白波を見ているだけで、ずうっと時間を過ごせる。頭を空っぽに、ぼうっとできる。
時間の割り振りを慌てなくて良い、ノンビリとした空気と、少し潮くさい空気。アチラに歩いていっても良いかもな。
と、思った瞬間、ピロンと音がして、スマホから地図が映写された。
ゲームのミニマップのようだ。スマホをかざすと、そこに地図が写される。
よく見ると、使いまくってた動画サイト以外のアプリアイコンが少ない。
『設定』これはスマホの機能を設定するためだけに開けていた。ほかに何かあるのか?
『動画』『音楽プレーヤー』『計算』『時刻』『写真』『録音』『動画撮影』『ブラウザ』『方位磁石メーター』『QRコード読み取り機能』『フォルダマネージャ』『メモ帳』『クリーナー』『マップ』←new !
うわ、前の世界のときより随分減った。
まず、スマホの大前提の電話機能がない。電波が来ているのか分からないからしょうがない? 通信用のアンテナがないせい? 難しいことは分かんないな。連動していたメッセージ機能もない。
他にも銀行とか、天気予報とか、スマホゲームなんか色々あったのに。
『その他』の中にあったのは、web小説サイトや、小説や漫画を読むアプリもあった。何この親切設計。わざわざ、地球を思い出させて、郷愁の念に駆られろ、ってこと? 単に、生活を、地球レベルに上げてくれたってこと?
て言うか、QRの模様なんてこの世界にあるのかよ。
とは言ってもな。安心する、安心できる生活あっての小説や漫画だし。
森の中では意味がない。
どうしよう。海に行こうかなあ。地図は、プラス・マイナスがあって、見れる大きさを拡大縮小できる。指をブイの字に広げたり縮めたりで地図の縮尺もできた。
スマホから映写される地図以外に、設定項目がある。
『ミニマップ化しますか? はい / いいえ』
と、突然ポップアップする。勢いではいを選択してしまった。前の地図はミニマップじゃなかったらしい。
今度のミニマップは、スマホから映写されなくて、常に視界の右上にある。
見る方向を変えても視界の右上にずっとあるということは、視界自体に紐づいているんだろうか。意識を向けていないときは、存在自体が薄っすらとしたものになり、見たいと思ったときにだけ表示を濃くする。
ミニマップをぼんやり眺める。
わたしがわたしだと思われる点は中央。向きが分かるのは、白い小さな二等辺三角形のマーク。向いている方向に合わせてくるりと回る。ゲームじみているが、現実感はまるでない。
「……ホームポイントとか、リターンとか、地図から転移とか、ゲームっぽいんだから、ゲームっぽいこと何かないの? こっから自分で歩いていかなきゃ何もない?」
当然、問いかけた地図からの返事はない。
代わりに、マップの端に薄っすらと何かが表示されているのに気づいた。小さな赤い三角形。向きはこっち向き。海の方向とは逆側、森のさらに奥。
有り体に言って、『赤』は危険信号だ。信号でも『止まれ』。
「うわ、いかにもヤバそうー」
魔物か、害意のある人間か。どれでもいいが、関わる理由はない。あ、違う。別に殺されても構わないんだった。
痛いのはヤダけど、痛いのは一瞬だから。
視線を外すと、赤点は薄れて消えた。意識を向けるとまた浮かぶ。
その瞬間、ミニマップの端に、もう一つ点が増えた。今度は、青。信号では、青ってことは『進め』? 安心していい存在かな。
しかも、ゆっくりとこちらに向かって動いて来るみたいだ。わたしを目指しているのかな。
「……?」
数分遅れて、青三角方面から音がした。枝が折れる音と踏みしめる土の音。規則的で、鎧がこすれ、重たい音。
人間か、それとも。
「……面倒くさ」
心底どうでもよさそうに呟きながら、わたしは木陰に座ったまま、一歩も動かなかった。
動画を音楽プレーヤーに変えて、小さな音で落ち着くような童謡をかける。
逃げる気も、隠れる気も、戦う気もない。ただ、近づいてくるそれを待つだけだ。
(どうせ、すぐ終わる)
死ぬにせよ、助かるにせよ。そう思っていた。




