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聖女がいればいいのだ
聖女の奇跡は
神の加護ではない
祝福の光でもない
聖女の御業は
彼女の才覚ではない
生まれ持った輝きでもない
すべては教会が
“神の選定”と呼ぶ偽りの儀式
そこで選ばれた娘の
生命や幸福の“前借り”
聖女は監禁され
食事に紛れた薬や
洗脳魔法により
疑うことすら奪われ
ただ祈りだけを日々の糧とする
少しずつ少しずつ
自らを削り奇跡を生み
人々は涙し感謝を捧げる
やがて
生命や幸福が尽きる時
代償は一気に押し寄せ
聖女は骨と皮の老婆へと崩れ落ちる
それでも搾取は止まらず
残されたわずかな生命までも
容赦なく奪われ ただ死ぬ
その亡骸は襤褸のようで
教会の者たちにも倫理などない
とうに失われている
聖女の亡骸は
深い深い穴へ
無残に投げ捨てられ
物語は終わる
ほどなくして
また偽りの儀式が始まり
新たな聖女が生まれる
……
……
……
遠い遠い昔
この世界にまだ神がいた頃
本物の聖女がいた
聖女は神に愛され
祈ることで
災いや病気といった災禍から
世界を守り遠ざけていた
だが人間はいつしか
その奇跡を恐れ気味悪がり
聖女を魔女と蔑み 残酷に殺した
これに神は怒り
世界を去る前に
聖女なき世界が
簡単に壊れるように変えた
だから
人間は信仰を道具に
若い娘を犠牲にする制度を作った
聖女がいる限り
世界は辛うじて存続するから




