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消えてしまえ
二人で見上げた桜吹雪
夜空の黒と満月の金に
桜の大樹が浮かび上がる
鮮やかに艶やかに彩られて見惚れて
忘れることなんてありえない
そう思っていたのに
少しずつ少しずつ
滲んでぼやけていく
あなたの顔はどんな表情だった?
笑っていたのかな?
私に何と言ったのかな?
ああ──消えていく
……
……
……
……ふふ……
それが今の私には
とても都合がいい
あなたとの別れは
拒絶 理不尽 自分勝手
すべてが一方的だった
私より美しく聡明だという
子どもみたいな娘に唆されて
あまりの愚かさに
唖然としてしまったけれど
泣くことなんてなかった
全身を占めたのは怒りだ
あまりにも忌まわしい
だから
お前という存在一切
私の記憶から消えてしまえ
すべて消えてしまえ




