第110話 閑話(メリル視点)
こぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
荒神が咆哮を上げて消えていく。
その姿を見ながら、メリルはため息をついた。
「まったくあの子はとんでもない事をやってくれるね」
森の自分の家で荒神との闘いを見守りながらメリルはやれやれと、水晶を置いた。
メリルが逆行前の記憶を思い出したのは一か月前。
未来を変えようと旅立った紗良達と旅をして――そしてシャルディスの気をひくために紗良達と別行動をして命を落とした。
シャルディスは未来を変えようとする紗良やカルロ、レティには無関心だったが、神々と交信してしまう可能性のある神の子メリルの存在は無視できなかったからだ。
メリルを邪魔しようと、王国の兵士たちを魔族化したりと強硬な手段をとるようになり、これ以上紗良達と行動を共にすると、逆に彼女たちを危険にさらすと別行動をとった。
メリルが囮になったが、結局シャルディスからは逃げきれず、邪神と一体化したシャルディス相手にメリルは命を落とした。
そして前世の記憶を思い出し、ループしていたことで、紗良達もループを打破するのは無理だったのだろうとあきらめていた。
――きっとまた紗良も普通にこの世界に召喚されてしまうのだろう――
今度紗良がループでこの世界にきたときのため、彼女の魂が消滅しないよう保護する方法を探していた。
メリルはループ打破をあきらめてループと共存していく方に意識を向けていたのだ。
「でも、ループ打破をあきらめていたのは自分だけだったようだ。
あの子はちっともあきらめてないどころか……邪神に勝ってしまうのだから」
そう言ってメリルは王都に降臨しているであろう風の精霊の姿を見ながら言う。
『不可能だってあきらめちゃったらそこで終わりじゃないですか。
宝くじだって買えば当たる可能性でてきますけど、買わなきゃ絶対無理ですもの』
笑ってそう言いながら、レティやカルロ達のために無謀な事も平気でやってのけた紗良の姿を思い出し、メリルはくすりと笑う。
「にしても酷いもんだね。仲間外れかい。
私にも声をかけてくれてもよかったんじゃないかい?」
そう言いながらメリルは荒神が倒され、光り輝く空を見つめるのだった。
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