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「よし、一旦朝礼や」


 黒いカッパを着た、異様なオーラを放つヒロシさんが塗装を終えてやって来た。

至近距離に近づいてくると、そのオーラが私の鼻孔をくすぐる。


(うっぷ……) 


 オーラというより、これは体臭か。

何日もお風呂に入っていないから、香ばしい匂いが漂ってくる。

……もしかして、私からも同じ匂い、するのかしら。

腕をクンクン匂っていると、ヒロシさんが言った。


「何してんねん。 職長から今日の検査の段取りの説明あるから、はよ行くで」







 

 奇跡的に31階までを塗り終えた私たちは、朝礼会場の地下へと階段を駆け下り、列に並んだ。

作業着を着た職人たちがこれでもかと寿司詰めで、熱気が物凄い。

その中でも、異様な負のオーラを放つヒロシさん。


(何だか、悪霊でも取り憑いてるみたいね)


 背中を見て、つい吹き出しそうになる。

クック、と笑いを押し殺しながらラジオ体操を終えると、元請けの〇〇建設の人による現場の進捗説明。

その後、今度は職種ごとにそれぞれ別れて、自分たちの工事に関わる現場の説明だ。

私たちは建築チームの為、そちらへと移動する。


「今日午前中、〇〇建設の完成検査が一日使って行われる。 午前中は34階、33階、午後は20階、19階だ。 再三言ってるように、仕上げが済んでない箇所の無いように。 以上!」


 ヤ〇ザみたいな職長の声が、地下に響き渡り、他の職人らは、弾けるようにその場から移動する。


「急げ、時間ねぇぞ!」


 私たち2人は、その場から動けなかった。

職長は、確かにこう言った。

午後は、20階、19階の検査を行う、と。


「……」


 上でずっと作業してたのが仇になったんだ。

何かの理由で、検査フロアが変更されたって情報が入って来なかった。

昨日の朝礼に出なかったことが悔やまれる。

そしてようやく、ヒロシさんが動き出した。

私は、恐る恐る尋ねた。


「あのっ、どうするんですか?」


「やるしか、あらへん」


 うそ、でしょ……

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