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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第五章:欧州塵滅編
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15-そして運命の日へ

 世界は滅びる。

 あまりにもあっさりと。


 地表に降り注ぐ無数の質量兵器を、ぼんやりとイスカは、その場にいた皆は見た。




 パリ市街から200Kmほど離れた場所にある平原で、彼らはそれを見た。中心にいた人間も、何も、もはや生きてはいまい。誘導した者たちも含めて。


(自分の命を犠牲にして、戦って、勝って……何の意味があるっていうんだ)


 それどころか……これは勝ちなのだろうか? そんな根本的な疑問がイスカの脳裏に浮かんだ。質量兵器を投下された場所は向こう数十年、草木の一本さえ生えない不毛の大地になると言われている。衝撃波と質量に潰された都市から得られるものなど何もない。戦争の本質は収奪と占領。そこから得られる資源をいかに効率的に搾り取るかと言える。

 それならば、質量兵器は下策中の下策。負けと変わりはない。


『キャバリアー隊の諸君へ。諸君らの協力に感謝する』


 キャリアーのマイクがアッシュたちの声を拾った。それを聞いて、イスカはようやく正気を取り戻した。アッシュは自分たちへの謝意を明らかにした。


『住民については……あなたたちにお任せするのが一番いいだろう。我々は火星軍の裏切り者であり、我々についていたのでは彼らも危険だからな』

『それについては快く承諾しよう。元々パリの住民は我々が奪還すべき地球の市民だからな。それで……キミたちはこれから、どうするつもりなんだ?』


 石動は彼の意を組み、更にそこから一歩踏み込んだ質問を行った。


『……実際のところどうすればいいか、何をするかは決まっていません』

「火星人同士で潰し合い、殺し合い、この戦争を終わらせてくれればいい」


 アスタルはぽつりと、感情を一切感じさせぬ冷たい声色で言った。


『宇宙に上がるようなことがあれば、またお会い出来るかもしれません』

『そうか。その時は……我々が敵同士でなければいいのだがな』


 石動は心底、願うような口調で言った。アッシュは笑って答えなかったが、感触は悪くなかったようにイスカには思えた。火星軍のランドキャリアーはイスカたちに付き従い、避難民たちを乗せてドイツ国境へと隊伍を組んで向かった。その道程、アスタルはほとんど言葉を発さなかった。それがイスカには、どこか恐ろしく感じられた。




 ドイツ国境『ベース・ルートワン』。

 フランス壊滅の報は国連軍を駆け巡り、彼らを混乱の渦中へと叩き込んだ。情報は錯綜し、混乱し、混沌と化していたい。本部へと向かう最中、イスカたちが漏れ聞いた話はこのようなものである。


 『火星皇帝グスタフ三世は無制限攻撃を宣言』

 『条約で規制されていた質量兵器の使用を解禁』

 『すでに各国の主要都市は壊滅状態。残っているのはドイツだけ』

 『数万からなるバトルウェアの大戦隊が地球に迫っている』

 『決戦用の超大型機が衛星軌道上に存在する』


 中には荒唐無稽な、有り得ないものも含まれていた。だがどれも否定する材料は持ちえない。パリが質量兵器によって消え去った今となっては、ありえないということがあり得ないのだ。戦争はいよいよ末期的な様相を呈して来た。


「ったく、どこもよく分からねえことになってるな。自分たちがどこに立ってるかも分かってないんじゃないのか?」

「僕は僕がどこに立っているかも分からないよ。どうなるんだろう?」


 キャバリアー隊は待機を命じられた。石動少佐以下ライン、及びテクノの上位者が集められて今後の方針を決定するための会議に参加している。石動たちの階級ならば本来は有り得ないことだが、キャバリアー隊はこれまで多くの実績を残して来ている。ゆえに、特例的ながら参加が許されていた。

 もちろん、イスカや御堂のような民間人上がりの人間。そしてソルカたち大部分の下士官たちにとってそれは雲の上の出来事だ。ゆえに、天から情報が落ちて来るまで何も分からない。その分、彼らより多く休むことが出来るのだが。


「これからどうなると思う? 質量兵器が使われるようになったら……」


 ソルカはカップにコーヒーを注ぎ、イスカたちに差し出した。年齢が上の人間にこんなことを指せるのは申し訳なかったが、ソルカはコーヒーを淹れたがった。そしてソルカの淹れるコーヒーは絶品だったので、二人は何も言わなくなった。


「何を言われても戦うしかないんですから、気にしたってしょうがないですよ」

「本当にそうなのかなあ?」


 イスカがいつもの諦観を口にすると、ソルカが被せて来た。


「このまま戦い続けたら、それこそ取り返しがつかないことになってしまうような気がするんだ。それこそ本当に……人類が絶滅するようなことに」

「それなら……どうすればいいんでしょうか?」


 イスカは逆に問いかけた。ソルカは押し黙る。


「ごめん、変なことを言ったな。私も結論が出ていない……」

「すでに結論は出ている。我々がすべきことは戦うことだ」


 ノックもせずにアスタルが食堂に入って来る。三人とも反射的に立ち上がった。


「少尉。方針が決まったのでありますか?」

「そうだ。今回の件を重く見た本局は、主戦場を移すことを決定した」

「主戦場を、移す? どういうことですか?」

「いくら地上の守りを固めても、宇宙からの攻撃には対応出来ない」


 アスタルは人差し指を立て、天に向けた。


「我々は宇宙へと上がり、火星軍の攻撃部隊を直接叩く」

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