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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第二章:オーストラリア縦断編
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04-救援ミッション

 夜の闇に紛れて三機の機体がクレーターを進む。すなわちキャバリアーと僚機のAA、マルテ二機だ。マルテはキャバリアーを小型化したような人型に近いフォルムをしており、アサルトライフルとバックパックに背負ったバズーカを武器とする。機動兵器というよりパワードスーツであり、ほとんど着込むように装着し生身と同じ感覚で動かせる。

 しなやかな人工筋肉の伸縮によって動く三機は闇夜を音もなく――というと言い過ぎだが少なくとも通常のバトルウェアやローター機よりも遥かに静かに駆けた。恐らく火星軍の音波探知器もこれを捉えることは出来ないだろう。


「一刻も早くここから逃げなきゃいけないんじゃないんですか? それなのに墜落機の捜索って……矛盾してますよ。なんでこんな事をするんですか?」

『それが味方と合流するのに一番都合がいいからだろうな』


 アスタルは頭部ユニットに接続されたバイザー型の照準システムを起動、先の状況を観察した。アスタルはヘリパイロットだが、AAパイロットでもある。元歩兵である彼からすればこちらの方が自然なのだ。

 アスタル機にはアサルトライフルとバズーカの他に32mm狙撃ライフルが搭載されている。通常のライフルの1.5倍ほどの口径、3倍強の炸薬量によって威力を増強した対バトルウェア用火器。これをAAの持つ機動力で狙撃スポットまで運び必殺の一撃を繰り出す。これがバトルウェア登場以降、国連軍が発明した最大の対バトルウェア戦術だ。

 無論、難しい。素早く動き回る堅牢な相手に銃弾を撃ち込むのは。少しでも当てるところがズレれば効果はなく、逆に撃墜される。だから狙撃機はセンサーユニットを強化し、更に外付けの視覚補助システムにより遠隔地の状況把握を容易にしているのだ。


『墜落機の捜索には恐らく国連軍の駐留部隊も出て来るだろう。そうすれば、お前を早々に味方と合流させることが出来る。安全に進めるってわけだ』

「だからって、そんな危険なことを俺にさせなくたって……」

『すまんな、そうさせなければいけない状況なんだ。見えたぞ』


 アスタルは自機が収集した視覚情報をイスカと島田の機体に転送した。夜間でもはっきりと燃える白いボディの旅客機めいたものがはっきりと見える。エンジンは真っ黒に焼け焦げているが、機体の方は驚くほどきれいな状態を保っていた。


『上手く胴体着陸をしたみたいですね。パイロットの腕がよかったんだ』

『島田、状況を確認したい。先行しろ。それに生き残りがいるかもしれん』

『了解しました。生きていてくれるといいんですけどね……』


 島田はゆっくりと遮蔽物となる岩の影に隠れながら歩き出した。


『出来ることなら、キミの負担を軽減してあげたいと思っているんだよ』

「え?」

『こんなことをさせて、心苦しく思っているのはみんな同じだからね』


 言い訳めいた発言だが、救われるのは事実だ。思えば島田はこれまでもよくしてくれたことをイスカは思い出す。弱弱しい声で『はい』と返した。

 小さくなっていく島田の背中を見て思った。この場所にいるのは、そんなに悪い人ばかりではないのではないか、と。


『! イスカ、姿勢を低くしろ。こちらに接近してくる機影……』

「どっちなんですか? 国連軍ですか、それとも……」

『二本の足で動いている。あれは間違いなく、火星の連中だ』


 イスカは闇に目を凝らした。頭部のサーチライトを威圧的に光らせながら三機のゲゼルシャフトがこちらに近付いて来る。ベーシックな武装だ。

 否、三機ではない。その後ろにもう一機いる。バケツめいた頭部モジュールからはエリマキトカゲのように半透明のフィルタ―めいたものが広がっているので一見まるで別の機体のようにも見える。だがやけにとげとげしい装甲の隙間から見える基礎部分はゲゼルシャフトと同じだ。専用のカスタム機だろうか。


『エンジントラブルで不時着したか。不幸な事故に遭ったものだな』


 一番奥のゲゼルシャフトから聞こえてくるのは鼻風邪を患ったような詰まった声。指揮官用のカスタム機であることは間違いない。


『後詰めが来る、それまでの間にやれることをやっておこう。瓦礫を退け、中にいる人を救助するんだ。もたもたしている時間はないぞ、お前たち』

『イスカ、奴らは飛行機に近付こうとしている。絶対に阻止しなければ!』


 救助活動を止めるのは気が引けたが、それでも相手が敵であることに間違いはない。それに火星の人間が本当に地球の人間を助けるのかも疑わしいものだ……という偏見が、イスカの中では確実に育ちつつあった。


「了解! 僕が敵を引きつけます、援護をお願いします! お二人とも!」


 イスカは地を蹴り跳んだ。斜め上方に打ち上がった機体は緩いカーブを描きながら地上へと近付く、足元にいたゲゼルシャフトを踏み潰そうとした。


『! センサーに反応、巨大質量! 各機、散開!』


 誰よりも早くイスカの動きに気付いたのは指揮官機。彼の指示によりゲゼルシャフトは三々五々に散って行く。指揮官機はそこに残った。


(動かない……! 何のつもりかは知らないが、避けなかったのが運の尽き!)


 イスカは右手で刀を抜き、居合一閃指揮官機目掛けて振るう。


『この動き、この鋭さ! 噂に聞いていたキャバリアーとやらか!』


 ゲゼルシャフトは左肩を突き出しシールドを前面に押し出す。イスカは迷うことなく刀を振り抜くが、しかし予想以上の硬度に刀が弾かれてしまった。鋼材が違うのだろう、イスカが白浜で切り伏せたシールドとはまるで別物だ。

 更に、指揮官機は腰に手をやりマウントされていた剣を抜いた。それが単なる剣なら、受け流してカウンターを打ち込む選択肢もあっただろう。だがイスカの直感が囁く、剣を受けるのはマズいと。イスカは肩部スラスターを作動させ無理矢理距離を取った。


『勘のいい……ことだ!』


 指揮官機の持った剣の刀身が白熱した。揺らめく大気、剣の放つ熱によってああなっているのだろう。まともに受け止めていたらどうなっていたか。


『キャバリアー! 貴様はイアン・プレゾフとクロムナイトが討つ!』

「時代錯誤の戦士気取りかよ……! こんなところで殺されてたまるか!」


 イスカは刀を構え直す。ゲゼルシャフトが彼を取り囲み、イアンが打ち込んで来た。イスカが避けると同時にいくつもの砲火がキャバリアーを襲った。

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