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ジャンと名乗る男は、見た目はジャン・ダンテその人だったが、性格は見るからに無遠慮で、当たり障りのない言葉を吐き、あの繊細で孤高なロックシンガーとは到底かけ離れていた。
「レズビアンって聞いたけど、彼女は?」
「いるよ」
「なら、彼氏は?」
と、ジャン・ダンテは前のめりになりながら質問する。
「いたけど、ずっと昔」
「じゃあ、ティーンエイジャーの時?」
「いや、幼稚園の頃だよ」
「驚いた。じゃあ、初めてのセックスは女の子とやったのか?」
「まあね。ちゃんとしたセックスは。アンタはどうなの?」
何の気もない質問返しをして、私はダンテの方をちら見した。
「俺は昨日かな」
「昨日やって、今日私とやるつもり?」
「ああ、そうさ」
全く否定する気もない様子で堂々と笑みを浮かべているダンテに、私は呆れてしまった。
「言っとくけど、興味ない男とはやらない主義」
「じゃあ、君の恋人と3Pは?きっと、楽しいぜ」
ジャン・ダンテは、とても面白そうにはしゃいだ。私は席を立った。新しい酒を取りに行こうとしてだったが、ダンテは私が帰るのかと思ったらしく、一緒に立ち上がった。
「そうしたいから、ここに来たんだろ?少なくとも俺はそうだ。何ていうか。ただ、寂しい。君は?恋人がいるから幸せか。少なくとも、俺よりは」
ダンテの顔に、突然悲しみの色が差した。私は何て言い返せばいいか、わからずにその顔を眺めていた。ようやく、口を開いて私は呟いた。
「私も、幸せじゃない」
ダンテは、私の顔を見つめた。私も同じようにダンテを見つめた。そうしてると、私は何となく癒された。
「飲み直さないか?」
そうダンテは提案した。私もその意見に頷いて、ふと時計の方に視線をやった。もうそろそろで17時になるところだった。
「いいよ。そろそろ夜の部が始まるしね。けど、飲むったって、この辺どこも一緒だよ。音がうるさくてもいいなら話は別だけど」
「じゃあ、君ん家は?」
ダンテは、私の目をずっと見つめたままだった。その眼差しの底にあるものは私には理解していた。そして、私はこの男にやらせてもいいと思った。
「すごく散らかってるし。落ちつかないよ」
「酔ったらどこも一緒さ」
「アンタが構わないなら」
「よし、決まり」
店を出るベルの音がして、また寒風が頬を叩く。だけど、今は一人じゃない。




