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とにかく酒が飲みたくて仕方ない。それから、誰でもいいから朝までセックスやキスをしてくれる奴が欲しかった。私の足は、自然と69ロードへ矛先を向けた。まだ昼過ぎだから、きっとどこも客足は少ないに違いない。私は何でも構わないから、とにかく飲んで何もかも発散したかった。

狭い路地へ入ると、所狭しと酒屋が並んでいる。私は看板に、No.69と書かれている店へ入ることに決めた。そこは、前から何度か利用してる店で、シェリーともそこでであった。客はレズビアン、バイセクシャル、それから獣愛好者など、世間から見れば性異常者って呼ばれる連中が集まってる。だけど、彼らは、私が知る限りでは、犯罪に手を染める事はしていない。一般と外れているという自分を認めている連中。それでも皆普通の人間だ。人並みに群れたくなって、仲間とワイワイ騒ぎたい時もある。私にもその気持ちは良く分かってるし、私自身がそうだ。

黒いペンキで塗られた扉を開けると、オレンジ色の明かりがついていて、女装した黒人の彼、いや彼女は、私を見るなり「いらっしゃい」と言ってきた。私は、カウンターに座って「強いの一杯」と頼んだ。

「分かったわ」

彼女は棚の中から、ボトルを取ってグラスに注ぎ出した。

「そう言えば、あなた前にもここ来たことあったわよね」

「まあね、友達と」

「その時、ナンパしてたでしょ。可愛い女の子をね。青い髪でしかもモヒカンだったから、かなり目立ってたわ。今は普通の黒髪に戻したのね」

「見られてたんだ。その子なら、今、恋人だよ」

マスターは、私の前に、酒が注がれたグラスを差し出した。

「どうりで」

「どうりでって?」

「恋人と喧嘩する人って、この辺りの店で一番強い酒を頼むからね。あなたもそうだと思ったわ」

彼女は、分かりきった様子で言った。

「最初はいい感じだったんだけどね」

私はグラスの酒を一口含んだ。強いアルコールが唾液と一緒に喉を通ると、一気に喉が熱くなった。

「嫌なことはセックスと酒で洗い流しましょう」

マスターは快活にそう言って、ボトルを少し掲げた。私は少し笑みを浮かべて、酒を一気飲みした。すると、どこからか、長い金髪のチャラそうな男が私に近づいてきて、気持ち悪いにやにや顔を浮かべて言った。

「マスター、今日はいい女が来たね」

そいつは、私の隣に座り、マスターも怪訝そうな顔をして、その男を睨みつけていた。

「また来たの?もうツケはしないよ」

どうやら、そいつは、ここの厄介な常連らしかった。

「そんな事言うなよ。って言うか、君名前は?俺は、ロードン」

私は酒臭いそいつの事を無視して、マスターにもう一杯おかわりを頼んだ。私の態度に、男は益々粘着質に突っかかってきた。

「おい、聞いてるのか?ああ、分かったぞ。お前レズビアンだろ。レズって、どうやってセックスするのか俺に教えろよ」

そいつは、下衆な笑みを浮かべながら私の肩を叩いた。私は、席を立って、そいつから離れようと奥へ移動しようとした。だけど、その男は私の腕を掴んで強く引っ張ってきた。

「人の話を聞け。女は男の言う事を聞くもんだろ」

私は、堪えきれなくなって、そいつの顔に吐き捨てた。

「その汚い手を引っ込めろ。豚野郎」

すると男は、プライドを傷つけられたのか、顔を真っ赤にして叫んでいた。私は再び無視をして、奥のテーブルに移動しようとした。だが、男は近くに置いてあった灰皿をとって、「このクソ女が!」と怒り狂って、私に殴りかかってこようとした。

私は瞬発的に、両腕で頭をふさぎ、目を強く瞑って身を庇おうとした。マスターが「危ない!」と声を上げると、ガシャリと灰皿が床に落ちる音がした。不思議に思って私が目を開くと、金髪の男は悔しそうに歯を食いしばっていて、その手を制していた青白い、ピアスだらけの顔の、黒い短髪の男が、そこにいた。私はその顔に見覚えがあった。男は、低い声で、金髪のチャラい男に言い放った。

「その灰皿にキスでもしたらどうだ?」

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