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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第ニ章
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エキスマキナの最後

『いっ、いやだ。死ぬのは嫌だ!助けてくれ、お願いだから助けてくれアマデウス!』

「使命の為なら泥を啜って生きるというのも判らぬでもないが……」

 水流の中を、為す術なく流されていくエキスマキナ。

 みっともなく騒ぎ立てる彼に、伯爵はもう一度だけため息をついた。

 格好良いとか悪いとか、そういった物と使命の重さを比べる気にはならない。

 その意味ではプライドも何も無く、助けてくれそうな相手に救援を頼む姿勢は、むしろ感心できそうだった。


 問題なのは、助けを求める相手だ…。

「助ける?そりゃあ、別に構わないけど、その理由は?」

『へっ?助けてくれるのか?」

 その時、エキスマキナは初めてアマデウスを本当の意味で見た。

 ニコニコとした顔はいつも通りで、最初に協力を要請した時と同じく、二つ返事で引き受ける。

『ありがたいぃぃ、死にたくないから、ここから引きあげて、伯爵たちか、ら、逃がして…』

「だから理由があるなら良いよ。さっきも言ったでしょ?助ける理由を教えてくれないなら、助けてあげる必要もないんだけど?」

 …だけれども、本当にそんな事があり得るのか?

 スポーツなら、今まで戦っていた相手チームのメンツが救助する可能性はあるだろう。

 だが、彼らは命のやり取りをしていたのだ。アマデウスが巻き込まれて死ぬのだって、お構いなしなのに?

 それなのにアマデウスは理由があるなら別に構わないと、平然と良いよと口にした。

 この状況を覆すだけの、面白おかしい理由さえあれば…。


 その様子を見ていた伯爵は、吐き気を抑えるように口元をおおって忠告した。

「よくもまあ、アレに命乞いをする気になったものだな。…理由を考えるなら理屈を通して置くか、アレの心を動かすだけの内容にしておけよ」

『…理由。…理由さえあれば、何でも良いのか!?だったら、ボクは君の役に立ったろう。それにボクだって、同じドミネーター……なんだ』

「ふうん。それで?理由にはなるけど、それだと伯爵も同レベルで要請してこない?」

 この星の環境に適応させたバイオパーツが、暗闇の中でランランと輝いて居る。

 それはまるで、神話の中に出て来る魔物か何かの様だ。

 つき合いの有る伯爵は、アマデウスの心情が良く判った。

 理屈が通っているか面白ければ本当に助けてしまうだろうし、いま本人が口にしたように…。


 同レベルの要請ならば、簡単に掌を返してしまうだろう。

 何しろ同僚である伯爵たちの都合を考慮せず…、新参どころか、人間でも無い情報体のエキスマキナの迷惑な要請すら聞き届けていたのだ。

 伯爵が助けるなと言えば、アッサリと助けた手をひっこめるに違いない。

『ほっ、本当に助けてくれる気があるんだな!?…そうだ、これからは君の都合が良いように世界の方向を。いっいや違う。少しでも面白くなるようにランダムな…」

「見るに堪えんな。そろそろ終幕にしよう。アドベンチャーたちも気になる」

「はーい。それじゃあお疲れ様。君に魂があるのかしれないけれど、成仏してね」

 哀れっぽく色々と案を口にした中で、良い思いつきだと考えたアマデウスの為の世界は致命的に怒らせたらしい。

 そんなつまらない世界こそ、彼が最も嫌うであろうと判らなかったのか?


 錯乱した彼に情報量を減産する呪文が投げかけられた時。

 どうしてアマデウスに利益だとか感情論が通じると思ったのか、エキスマキナは最後にそんな疑問を浮かべた。

 次の機会があれば、自分はもっと上手く説得できるだろうか?

 いや、もっと上手く戦術を…。

 …そもそも、自分は何を目的として。

 …なに、を、す…る。


 あっけなく消え失せた情報体をしり目に、二人は水の中に居る仲間へ気持ちを切り替えた。

 伯爵は提携を結んだ相手、しかもそれなりに認めた相手が生きている事を望み。

 アマデウスはこの展開を作り上げた面々が、次にはどんな事をやらかしてくれるかを考えながら…。

 そうして視点は暗転し、元の位置に戻る。


「…ここは何処だ?」

「おや~ようやく気がついた?あれから何日か経ったんだけどね」

「直ぐに判る嘘は止めないか。勘違いを起こされても後が困る」

 俺が目を覚ました時、天幕で覆われた…それなりに清潔な場所だった。

 隣に何人か寝てるのを見て安心しつつ、この状況で冗談を口にする馬鹿はスルーして置く事にした。


 目を向けると伯爵も気がついたようで、話をする為に咳払いを掛けた。

「案件は一応終了した。アドベンチャーの体調が回復次第、記録物が無いか調査を要請したい。ここには無かったがね…」

「了解した。せっかく片ついたってのに、またあんなのが出てこられても困るしなあ…」

 伯爵はエキスマキナを始末したと手短に答え、同じ物を作る為のデータが残されてないか俺に依頼してきた。

 気持ちは判るので、快諾すると同時に、全ての現況に視線で窺う事にする。


「…何で二人同時にボクを見るのさ?エキスマキナが生まれたのは偶然だから関係ないし、同じ事をするなら、したい人が勝手に研究するんじゃない?」

「どうだか。面白ければ何でもする癖によ。だいたい、俺らが4番目の正体を知りたがっている事も承知だっただろうが。まあいいや、口で言われても納得できねえしな」

「…ふう。後は任せるよ。モルガナも看病疲れて眠っているし、オチオチ休む時間も無いくらいだ」

 心外だなぁ…。

 そんな感じで肩を竦めて見せるアマデウスを引きずって、伯爵は天幕から出て行った。


ゲーム風解説第39回


@冒険の舞台

 色々な冒険の舞台があり、その一環として学校もあります。

呪文を覚え、研究する場所が学校であるとするならば、当然ながら他にも必要に合わせて建設されています。


0:母船:惑星壊滅以外で、基本的に立ち居る事は許されない

1:学校:教育・研究移設。個人経営のものは単に私塾と飛ばれる。

2:アリーナ:闘技場として、戦闘力の訓練などに当たる。個人経営の物は単に道場と呼ばれる。


3:世界の果て:以外に近いが、未到区域全体の事。

まだ判って居ない事もあるので、踏み入り、帰還するだけでもそれなりの功績が手に入る。


4:居住区

一応は安全地帯であり、解明区域が広がるに連れ、町・市…いずれは国へと発展して行く。

現在は初期移民の200名のうち、わずか数名だけであり

惑星の概要が明らかになってから。第二期移民が市民権を持ち始める。


5:魔境:判り易い危険地帯

 居住区の周囲に居たモノや、未到達地域で発見された危険なモノが追いやられている。

判っていないだけの世界の果てと違い、こちらは完全に危険区域である。

ただし、発見されていないモジュールその他も多いので

こちらを目指して踏み入ろうとする者も、きっと耐えないと思われる。

なお、今回で退場したエキスマキナのクラスであるイモタールの資料は居住区には無いので

こちらに入って調査・研究しないと、現時点では転職する事もできない。

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