新惑星で、最初のエンディング
「気でも効かせてくれたのかねえ。おせっかいな年寄りどもだぜ」
伯爵たちが出て行った先に、もう一つ天幕があるのが見えた。
おやっさんが姿を見せてないものの、死んだと言う話を聞かなかった事と、モルガナが疲労で眠っていると言う事は…。
「…体力が戻ったら、直ぐに行ってしまうのか?」
「なんだ、意識があったのかよ。言ってくれりゃあ良かったのに」
俺は隣で眠っていた…、正しくはフリをしていた女に振り向く事にした。
何時までも先延ばしに出来る訳でもないだろうし、気不味い事は優先順位をつけて済ませる性分だからな。
…どうやら、俺が直に振り向くなんて思って無かったらしく…。
バサリと顔を隠して照れやがった。
「なんだよ。話があるんじゃなかったのか?」
「…面と向かって話すと…照れくさくて。それになんだか、会話的に…」
確かに船乗りと気人が、情事の後で出港の話を切り出してるッポイな…。
しかし、まあなんだ。
そう言う事を考えられなかった時期に比べたら、意識してしまう分だけ進展したと言えるし…。
むかし風に言うと、後朝の別れってやつなら、また逢う事を前提にする訳だしな。
「そんな事を言うもんじゃねえよ。まだ始まってもねえだろうに。後ろ髪を引かれる言葉ってのは、夜通し存分にすったもんだを繰り広げてから聞きたい台詞だね」
「くっ。き、貴様…。そんな不埒な事を、へっ、平然と口にしたな…」
ははっ。
間接的に伝えたもんで、照れやがった。
…こっちとしては存分にそういう仲になっても良いと思うのだが、いかんせん身体が上手く動きやがらねえ。
この場は直球で伝えた方が良いと思うんだが、まあ少し勘弁してもらうとすっか。
「冗談は置いて置くとして…。俺としては自分が暮らす世の中には、作為な悪意だけは取り除いておきたいもんだな。子供達とか遠い子孫の話しは置いて置くとしてよ」
「…わざとからかっているな?もう良い、判った。私としても貴様の性格は判ってきたつもりだ。それに、此処で黙って送りだすのが…、つ、つまの。良くできた妻の役目というものだろう?」
ぶっ!
俺の投げた玉を受け取って、剛速球で投げ返して来やがった。
ちょいと仲を進展させて、お互いに楽しく行こう…。なんて薄情なつもりは無かったが…。
いや、まさかプロポーズを既に言った扱いにされるとは思わなかったぜ。
…だけどまあ今を逃すと言えなさそうだったので、ついでとばかりに便乗する事にした。
「つーわけでちょっくら4番目の足跡だけ辿って来るわ。情報伝達で送れる範囲も巡る可能性はあるな。…名残惜しいから出発前は酷使しちまうかもしれねえけど、勘弁してくれよ奥さん」
「…ばかっ」
毛布からはみ出た頭を撫でて、髪の毛を梳く。
…別に良い匂いなんかしなかったが、赤い髪の毛がさらっとこぼれて、不思議と綺麗だった。
あと、な。
効率重視で攻撃呪文ばっか使うんで、こいつが戦闘の専門家ってのを忘れる所だった。
照れ隠しのボディーブローをギリギリの所で止めたが、直撃したらやばかったろう。
水に飲まれた3人の中で、おやっさんがこいつにだけ装甲呪文を掛けておいたのを聞いたのは後になってからだ。
「…本当に書類を出さなきゃだめか?」
「私を次の指導者としてみとめてくれるのだろう?ならば、私の方針に従ってくれたまえ。…それと君もだアマデウス」
「はいはい。…えっとー、エキスマキナが発生した時の話だったね?面倒だし結論から言うよ?」
食事に起れるくらいに回復した後で、隣の天幕を訪れた俺に、伯爵は古臭い紙の書類を手渡した。
端末があるこのご時世に、紙かよ…と思うのだが、伯爵からしてみればずっと端末が使えるかどうかも信用して無いと言う話だ。
確かに事故で色々あったとはいえ、いきなり端末が使えなくなるって事は無いと思うんだがねえ。
それはそれとして、アマデウスの奴がいきなり本題に入ったので耳を傾ける事にした。
俺の新しい作業にも関わる事だったし、4番目の発生理由を考えれば聞き逃せなかったからだ。
「星間通信ネットにアップしたら、直ぐそこに発生した。…この点から導き出される結論は2つ。1つめはネットと干渉波が混在して、そこらかしこがネットあるいはスクリーンになっている。もう1つは…」
「プロジェクターいらずの映画館と言う訳だ。情報管理がいよいよ怪しいな。…それでもう1つは?」
ヲイヲイ、本当に人さまの記憶を直接アップしたのかよ。
…プライバシーもへったくれも無いな、それってハックできる奴なら誰でも覗き見できるだろ。
俺が苦笑を浮かべた時、伯爵は目で俺を制して、アマデウスに続きを話させた。
せっかくアマデウスが真面目に学者をしているから、茶々を入れるなって事だろうな。
判ったよボス…。
「もう1つは擬似的にだけど精神波への干渉が可能になったって事。…ああ、エキスマキナの精神面に関しては、そこから派生した偶然だろうね。これを研究し尽くすのは骨が折れそうだ」
「…ワリィがそんなもんを研究すんな。人の意思が発生するなんざ、それこそカミサマに任せときゃいいんだよ」
「同感だな。自立型のドローンが判断力を持つ程度に留めて欲しい物だ」
意思を作るのが、神または魔のモジュールのコマンド効果かな?
そう言って笑うアマデウスは、まさにバケモノだ。
人造人間なんて作って欲しいとは思わないし、偶然に人造人間が誕生した時に、そいつらが研究すれば良いんだよ。
俺の意見に伯爵も同意見だったようで、お互いに肩をすくめて苦笑を浮かべる事にした。
「それではアドベンチャー。現時点を持って君の任務を変更する。あのイモタールとでも言うべき存在の資料探索と、回収封印を任せる。もちろん不可能なら破棄しても力ずとも良い」
「了解。コマンダーの指示通り、過給的速やかに探索して来ます。…情報媒体は可能な限り消して来るぜボス」
…次に合う時はロードとかマスターって呼ばなきゃならねえのかねえ。
その時には、計画実行の為の次席権威者ではなく、正式にマスターナンバーに就任しているだろう。
初の任務の中に、俺たちの結婚式を放りこまない様に釘をだけ刺して、俺はその場を後にした。
それから暫くの話をする必要はねえよな?
こうして俺の任務は一区切りを終え、新しい旅の門出となったのだ。
フィギア・スタッフの記録装置に蓋をして、俺は旅に向かう事にした。
今度の旅は短い予定だし、カミさん待たせちゃまずしいな。
んじゃ、アバヨ!
ここでアドベンチャーの記録は終了する。
新しい門出に、祝杯を送るとしよう。
ここまでお読みくださった方々には、感謝の言葉もありません。
この物語は、此処で終了。
気が向いたら第二部に成ります。
予定通り作業的には、ここから折り返しに入り
誤植や表現の修正、初期設定をそのまま通した事による変な部分の削除・修正にはいります。
それと並行して、次回からは世界観とルールを記載して行こうと思います。
良ければ適当に見ながら、お暇つぶしの相手を願えれば幸いです。
それでは、みなさま。
拙い作品をお読みくださり、誠にありがとうございました。




