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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第ニ章
47/85

ペテンで、ゲーム盤をひっくり返せ!

「馬鹿にしやがって!ボクにアマデウス程の才能がないとでも言うのか!?殺してやる、殺してやるぞ!」

「…?もしかしてドラゴンを作ったのはアマデウスなのか?ハハっ…、気にしてたんだ。しょせん、貴様は。その程度…」

 黙れえ!!!

 ここまで来ると、売り言葉に買い言葉。

 お互いに、何を言っているのか把握しないままに、攻撃呪文を連打する!

 物理的に不死身であると言う余裕が、エキスマキナに不要な戦闘を続行させたのかもしれない。

 サルマンデルがあと少しで倒せると言っても、彼にとっては優先すべき別に脅威では無かったのに…。


「ははは。強がった所で、君も死に掛けじゃないか。…他の3人の後を追わせてやるよ、この死に損ないが!!」

「うるさい!生きている!絶対に生きているから、死なせたりはしない!」

 一見、エキスマキナの圧倒的優位に戦況は進んで行く。

 サルマンデルは空気のある一定範囲を動けないのだし、そもそも情報体に攻撃できない。

 加えてであるが…、情報を減産させたり情報移動を停止させる呪文を預かっていたとしても、彼はそれ専用の解除呪文を用意していた。

 仕切り直して良し、時間を掛けて良し、いたぶっても良し…。

 これだけの絶好条件が揃っているからこそ、彼は油断していたのだろう。


「案外しぶといなぁ。…もしかして、装甲呪文でも掛けて貰ってたのかい?まあ、それが遺言にならなければ良いねえ。…くそっ、ボクの話を聞け!無駄な攻撃なんてするんじゃない!」

「うるさい、うるさい、ウルサイ!諦めなければ、間に合うかもしれないじゃないか!」

 繋がっているようで、繋がらない会話が続く。

 そもそも、この時点でスレ違っていたのだろう…。

 エキスマキナは自分という個性を認めさせたいのであり、サルマンデルは洞穴の端を余計に崩して、少しでも水を退かせたいのだ。

 互いに錯乱していると言えるし、冷静になればお互いの状況に気がついたはずだ。

 どれだけ自分が危険な状態なのか、そしてこの泥試合を終わらせる有効手段を…本当は持っていたと言う事に。


「ボクは司書の代用品でも、アマデウスの劣化互換でも無い!…ボクこそが、この世界を…」

「黙れ。誰かが誰かの代わりになんかならないって、そんな当たり前の事なんて言うな!!」

 互いにやつあたりを繰り返し、時間と状況の推移を把握し始める。

 サルマンデルの体力は装甲呪文に頼れるほど残っていないし、ゆっくりと水が退き始めていた…。

 あと少しという状況ならばエキスマキナの方が勝利に近く、そして…諦めきれないのも彼だったろう。

 時、ここまで来て逃げ出したら、此処に来ている連中を皆殺しにしたとしても…。

 この先の長い生涯の中で、誰かが後ろ指を挿すかもしれない。

 …いいや、自分自身こそが許せなくなると思っていたのだろう。


「…あと、すこ…。し、で」

「アハハ。ようやく終わりかな?人間は不便だねぇ。いまトドメを…それとも、減産呪文で空気を減らすことで苦しむだけ苦しませて…」

 粘っていたサルマンデルが、あっけなく沈み始める。

 色々な装備を持っていなければ浮く事もあったのかもしれないが、そんな想像は無意味だ。

 そこまで来てエキスマキナは、強力な装甲呪文があるなら減産呪文で体力をすり減らせば良いと言う事にようやく気がついた。

 最初からクロガネの呪文と判っていればそうしたのかもしれないが、今更だろう。


 何しろ、彼は最後の最後で勝利を取り逃がしたのだから…。



「…えー。それはもう、遅いんじゃないかなあ~?」

「へっ!?あ、アマデウス…。い、今更何をしに来た!ボクを笑いに来たのか?見ろ、ボクは勝ったぞ!この状況で、君らにボクを追い掛けて来る事なんか…」

 突如、掛けられた声に、エキスマキナは慌てふためいた。

 夢中になるあまり、彼の接近を見逃したのか?

 サルマンデルがここに居る以上、ドラゴンを倒すのには時間がかかるはず…。

 いや、そもそもアマデウスが制作者とはいえ、モルガナと2人で倒せるはずが無いというのに…。

「まさか、無力化するキーコード!?」

「やだなあ。そんな興冷めなものは取りつけてないよ。そもそもあれは興味本位で作ったんだし…。というか、逃げなくても良いの?」

 ここに来て、アマデウスはどこまでも変わらなかった。

 楽しければどうでも良い、有効手段だとか、そう言う物には興味が無い。

 …そして、まだまだ遊べそうだから、彼は本気でエキスマキナの事を心配してあげたのだ。

 直ぐそこまで来ている、死神の訪れを告げる為に、さっさと駆け付けて来たのである。


「いろいろ聞き捨てならん事を聞いたが、この際だから聞かなかった事にしておこう。…最初からどっちの味方でも無い者が少しでも協力してくれたのだからな」

「…っは、伯爵!?馬鹿な、伯爵はさっき水の中に…」

「やあねえ。最初っから、幻覚を作って入れ変わってたに決まってるでしょ。だいたい、人数とかのチェックがあると思って苦労したんだから」

 全ての準備を終えて、伯爵とモルガナが声を掛けた。

 …そう、これはペテンだ。

 ドラゴンを速攻で倒すには、サルマンデルを含めて3人。

 エキスマキナを倒すには、伯爵とアドベンチャーが必須、そこに護衛が加わったら頭数が足りない。

 この状況をひっくり返す為、入れ替わっていたのである。


ゲーム風解説第37回


@アークエージェントと、委員長

 前回に、モジュール効果などの入れ替えを提案すれば

昇格可能だと書きましたが、具体的に何が可能になるのかを少し。


0:ドミネーター・教師の権限を分権される

1:課題物・成果物の順番、分配などを決定できる。

2:戦闘中の呪文作成など、ドミネーター・教師マスターが忙しい時に出来ない確認・許可を、代わりに確認許可できる。


1つめは、授業などで使うアイテムを

委員長は先に自分が使う事も、どちらでも良い課題を自分が都合のよい順番で出来ます。

任務の振り分けや戦利品分配も、平等・理由があるなら可能になります。


2に関しては

時間が無いから、マスターがいちいち見て居られない事を

代行して、問題が無いと決定する事が出来ます。

今回の様に溺れそうな時は無理ですが、戦闘に参加せず、呪文変更を見守って

認可する事が可能です。

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