騙し合い
「頼むからてめ…じゃなくて、あんたは切り札なんだ。迂闊に動いて気がしないでくれよ?おやっさんと俺で始末していくからな」
「舌を噛んだらいかん。できれば口も開かないでくれるとありがたい。わしらで十分だからな」
洞穴の入り口に用意されていたのは獣たちで、このレベルならまあ、切り札を使うまでもねえ。
おやっさんの装甲呪文を盾にして、俺たちは快進撃を続けた。
余計な事を喋られても計算が狂うので、もう1人に対し、俺たちは慎重に取り扱った。
つか、場合によっては口を塞いで無理やり騙らせてるんだが、本人が気にして無いんでありがたい。
轟!!!
そうこうする内、入り口の方向で強烈な爆裂音。
洞穴の中を、ワンワンと耳鳴りがしそうなくらいに木霊し始めた。
「つー。来ると判ってるからいいけど、実際に聞くとなるとたまらねえな」
「アホほど威力に注ぎ込んどるからな。まとにぶっ放したら、3人くらいでようやっとというところか」
「……っ。……」
あれはドラゴンに対し、モルガナ達が強力な火力呪文を使った音だろう。
爆裂音が強いのは、洞窟のせいか、それとも護衛でも居て、範囲呪文に修正したのか?
音からは詳しく判らないが、早々に出せるレベルではない高威力とだけは判る代物だ。
俺たちは苦笑しながら突き進み、そろそろ本命がやってくるだろうと、気を引き締め直した。
やがて現れたのは、猫科か何かの猛獣の群れ…。
そして4番目のご登場だった。
「やあ。お早いお付きじゃないか。どれほど飛ばして来たのか判らないけど…。この辺で引き返してくれないかなあ?仲間が心配でしょ?」
「けっ。まさかてめえがこんな場所でお出迎えしてくれるとは思わなかったよ。自分には脅威じゃないからって数ばっかり揃えやがって。それとも護衛のつもりか?てめえの不死身ぶりの種が割れてるってよ」
「(…おしゃべりは任せる。わしらは少し下がるぞ)」
得意げな4番目の、死んだ友人にソックリな顔を見ながら、嫌悪感が走った。
俺とあいつはともかく、おやっさんは無理やり我慢しながら少しずつ後退して行く。
ハッキリいって、この数は脅威であると同時に…。
明らかなブラフだからだ。本当の本命から目を反らす為の、囮に過ぎない。
「いやいや。戦いは数だよ。特に君たちのように……一人ひとりの重要性が高いチームにとっては尚更に効率的だ」
「…もしかして褒めてくれんのか?それとも欠け替えの無い仲間の列に戻してくれって?…まあいいぜ、てめえが愚にもつかない目的を捨ててくれるならな」
罠だと判って、俺は4番目の時間稼ぎに付き合った。
この時点で必要なのは2つ。
1つはこっちも時間稼ぎがしたいって事、もう1つは…。
俺たちと『同じように』、ペテンを掛けているかを確かめる為だ。
「降伏勧告のつもりかい?それとも…君たちの方が降伏してくれるつもりだったのかな?それなら考えなくもないけど」
「冗談はよせよ。そう言う駆け引きが嫌で、伯爵と妥協までしてから早めに駆け付けたんだ」
4番目は情報体だ。
この場に画像と音声だけ流されていても、俺たちの努力が徒労に終わるだけだ。
そうなのか、それとも本人なのか、テンプレートな台詞に混ぜて、細かいニュアンスを変えながらおしゃべりに付き合う。
決定的な決戦状を叩きつけるのは、それからって訳だな。
「その苦労も無駄になるんじゃないかな?どうだろう、ここは一度出直してみては?次はゆっくり相手してあげるよ。一体一がお望みなら、そう言うのもいいかな」
「遠慮しとくよ。臆病者をもう一度探しだすのは骨が折れるし、…それにだ。この場で片をつけようと思ってるのはてめえだけじゃねえよ」
臆病者の気があるのは俺の方だが、この際だから、数に紛れるつもりの奴を罵ってやる。
怒らせるのは本人確認の常套手段だからだ。
表情やトーンは当てにならないが…、リアルタイムで動くかどうかで随分と差がある。
密かに見比べていた動きに、違和感が無いことから仕掛ける事にした。
「まあその通りなんだけどさ。もうすぐ何の心配は要らなくなるとは言え、伯爵の力は脅威だからね。…圧倒的な数の前に、呑まれて消えちゃってよ!!」
「ばーか。そうは行くかよ!…壁よ、長城を築け!」
奴は俺達の後方を見据え、何かしらの信号を発した。
壁か何かの呪文が崩れ、一か所に留め置かれていた獣たちがこっちに殺到! それと同時に俺は土の壁を周囲に巡らせ始めた!!
4番目としてもこの事を予想して猫科を誘導しておいたのだろうが…。
この際、視覚を遮るという意味で、重要な役割を持っていた。
読まれているなら、それを元に策を立てるだけだ!
「採算はあるんだろうな!?この数は洒落にならんぞ!」
「あったぼうよ。俺が負ける博打をするかよ」
十中八九、この猛獣たちは数に目を向かせる為の囮だ。
極端な話、こっちの装甲次第じゃあ獣なんぞ意味が無い場合がある。
実際におやっさんの装甲呪文は大したもので、その意味では序盤戦は互角と言えるだろう。
その上で、次の手をどうするかが勝負所と言えた。
「…奴の次の手は読めてる。逃がさない様に戦おうぜ(スナイプに気をつけといてくれ)」
「(判った。緊急起動に備えておく…)一歩も近寄らせんわ!お前こそ4番目が逃げるのを見落すなよ!」
「……っ!」
数がブラフなら、次の手は何か?
呪文を使える獣を用意しているとしたら、潜伏させて食いつかせるか、あるいは攻撃呪文で撃ち抜く気だろう。
俺たち全員を殺す気なら悠長な事と言えるが、奴としては『伯爵』が死んでくれるなら、それで良いんだ。
ならば俺達としては、『伯爵』が死なない様にしておけば良い。
その上で、この数を順次蹴散らして行けばOKと言う訳だ。
…もう1人が今にも暴れ出そうとするのを、俺たちは必死で宥めながらチャンスを待ち詫びた。
奴が本命を起動させる為に仕掛けた瞬間!
それこそが、奴に対する反撃であり、本人の最終確認だと言えるだろう。
ゲーム風解説第43回
@緊急起動、あるいは、特定対象への効果
特定の状況に対してのみ、効果を発揮するような呪文を組む事ができます。
この呪文の利点としては、特定の状況が発動するまでは起動しないのでコストが掛からない事。
また、気を付けて条件を組めば特定の対象以外に効果が及ばない事です。
もちろん、使用には重大な問題があります。
1:使用に対し、難しい技能が必要である事。
2:条件設定が正しい事。
3:効果範囲や時間は、周囲全体・時間全体を補える事。
1・2に関しては、呪文登録して
いつでも確認出来る事や、前提となるスキルを覚えている事が前提に成りますが
重要なのは3つ目です。
部屋の中で相手だけに作用する呪文を作るには、対象の周囲だけでは無く…。
部屋全体を覆う範囲にしておいて、その上で、対象を絞る条件をつける。
あるいは、長時間の時間を全てカバーしておいて、特定の状況にだけ作用する条件を突ける必要があります。
例で言うと
返事した相手だけ吸い込むヒョウタンを作る場合は
部屋全体を覆う程の効果範囲にする事が第一条件。
死んだ時に発動する蘇生呪文であれば、死ぬかもしれない危険のある時間帯全ての間、ずっと維持して置く必要があります。
呪文をずっと使用しているのと同じなのですが、発動していない時は
コストが掛からないという利点は存在します。
今後の修正予定
1:誤字脱字の修正
2:不要な文章の削除、必要な文章の付け足し
3:初期設定に存在しても、後から見ると不要な事項の削除
と言う感じで修正する予定です。
基本的には1話2000字の内容を、1800字くらいに削って
読み易いようにまた2000字くらいに直して行く感じなりますが
所々、これは要らないと言う者があるので、その辺は削ったり修正予定です。
(ミステリーではないので、初期段階で全員の名前を出したり
ネズミのネームドモンスターや、クロガネのエネルギー装甲は不要なので削除。匂わせる程度に修正となります)
それと並行して
ルールを1章分使って手直しする感じになります。




