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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第ニ章
33/85

4人目の正体

『ここに居ると言う事は、ボクの手引き無しでも抜けれたと言う事だね。君ならば…』

「アマデウス!何時の間に…」

「落ちつけ、ただの伝言だよ。俺もやってるだろ?」

 罠や探知魔法の類が無い事を確認して移動したはずなのに、立体画像が俺達を出迎えた。

 温かで服装によって時期を判断できないが、割りと前に仕掛けられた物だろう。

 誰かさんが突如現れたアマデウスの姿に驚いている間に、俺は周囲をサーチしてモジュールの反応を調べた。


「あった。情報伝達のモジュールだ。探知魔法が無い事は確認したんだが…、毒が払われてからの経過時間かな」

「おい!そんな事を調べている場合か!…司書の奴が死んでいるとか言っているぞ。少しは真面目に…」

 十分、真面目に聞いて居るよ。

 俺はそう答えながら、やはりそうなのかと納得している自分に気がついた。

 ダチが死んだのが悲しくない訳は無いが、とっくの昔に覚悟していたからだろう。


『彼はボクの無茶に付き合ってくれる数少ない友人だからね。その遺言は聞く事にした。…4番目がどういう個性に成るのかしらないけれど、君が遺言を聞く間は介入できない様にしておくよ』

「っ!ちょっと待て、『個性に成るのか』だと!どう言う意味だそれは!」

「伝言だと言ったのは貴様だろう。返事があるわけないじゃないか」

 そんな当たり前の忠告をされるほど、俺の頭はノータイムで反応していた。

 これまでさんざん話に出て来ながら、ちっとも姿を現さなかった奴の話だ。これが反応せずにいられるか!


『ああ、そうそう。4番目に関する事は、遺言の中でも聞けるからね。じゃっ』

「…本当に伝言なんだろうな」

「そのはずだけどな。まあアマデウスらしいと言えば、らしいんだろうよ」

 ここまでは奴の予想通りなのだろう。

 来るタイミングが前後したとはいえ、俺が出し抜く事も計算に入れてやがったんだ。

 きっとこの伝言、そしてモジュールは、奴の案内無しに辿り着いた…ちょっとした御褒美のつもりなのかもしれない。

 今後に役立つ物なので、今はありがたく頂いて置くとしよう。


「何をしているんだ?行くぞ」

「…ん。ああ、直ぐに行く」

 早く遺言を聞きに行こうと言う声に、俺は少しだけ時間を掛ける事にした。

 何が待って居るのか判らないが、4番目の目的が人類に脅威を与える事になっていそうなので、アマデウスが仕掛けた対策とやらが気になったからだ。

 呪文の探知呪文なんて組んでないので手さぐりになるが、今の状態を記録しておいて、後で研究するなり誰かに聞いてみるとするかね。


「…どうした?死体は見慣れていると思ったんだが」

「馬鹿っ!そう言う物じゃないだろう。それに…これは何をやったんだ?」

 辿り着いた場所には、痛みの酷い死体と幾つかの見慣れない機材。

 そして、おやっさんの所で見たモジュール生成ユニットがある。

 これで少しはマシになるかなと冷めた目で思いつつ、コンピューターに繋がれた友人の死体を眺める事にした。

『やあ。この遺言を聞いて居ると言う事は、君か親父さんのどちらかが着ているのかな?まあ見ての通り、僕は死んでしまっていると思う』

「この段階じゃあ、致命傷の治療を施そうとしている処かな。どう見ても駄目もとっぽいが」

「なんでそんなに冷静に成れるんだ!少しは悲しいとか、怒りが湧いてこないのか?」

 気持ちは判るが、そういうのはとっくに済ませちまった。

 なんとなく察していたし、判断を突きつけられたりしたものな…。

 死体を眺めながら、俺は傷口を軽く確認していた。

 確かに攻撃されたと言うよりは、事故に巻き込まれたとしか見えない、大きな傷だった。

 こんな風に傷つけて置いて、ギリギリで生かしておくなんて、逆に難しいだろう。


「と言う訳で、モジュールの分布表はあらかた造っておいたよ。初心者でも扱える物を中心に親父さんに頼んであるし、新しい物が研究されたり、不便になったら設定し直すと良い。ついでにだけど…」

「そのついでにを早く喋れよ。後は聞いて居る事と同じだろうからよ」

「だから無理な事は…。そうか、いや。すまん…」

 それが貴様の悲しみ方なのか?と余計な心配をしやがる。

 関係ねえよと言いながら、俺は可能な限り冷静で居ようと頭を御土貸せようとしていた。

 モジュールに関するつまらない説明を飛ばしたくなりながら、ようやく話は本題にへと移る。


『アマデウスに僕の知識をアップロードを頼んである。残念ながら自分の知識を自分で確認出来ないのが、非常に残念なんだけどね』

「悪趣味にも程があるだろう…。しかし、記憶……。アマデウスの野郎、ドローンに情報をダウンロードしやがったな」

 判り易く言うと、司書と呼ばれた男の記憶を元に、ロボットか何かを造り上げた訳だ。

 そいつを4番目として登録し、暫くの間、マスターナンバーの交替を凍結。

 事態がより良い方向に移ってから、円満に交代劇をしたかったようである。

 つくづくおせっかいな奴め……。

 俺は死んでしまったダチにか、それとも余計な事をアマデウスにか…。文句をつけながら話に聞き入っていた。


ゲーム風解説第23回


@モジュール分布表と推奨属性、オマケの再設定

 司書の解明したモジュールは、始めから全てが選べるわけではありません。

この話の時点で失われた物が1つ見つかっていますが、それとは別に初期では不要な物だからです。

最も良く使う攻撃や回復などを中心に素材で属性を持ったり、アイテムとして取得できます。

滅多に使わない、あるいは強力な物は後から欲しい能力に絞って覚えて行くわけです。


@モジュール内容の再設定

 各モジュールに設定されているコマンド・投射パターン、フィギア・スタッフの素材属性ですが

確かな理由があり、マスターが許可すれば内容を変更して構いません。

これは黎明期に設定されたルールであり、より正しいと思われる組み合わせであれば、変更するのが当然だからです。

 なお、この時にちょっとした内容であれば、アークエージェント(学校では教師)並の権限を

分布表や素材表を大幅に変える変更であれば、次席権威者(教頭)並の権限を得ることができます。

(便利だから、自分が強くなるから・・では駄目で、しっかりした理論です)


 例えば

キャラクターが初期に設定出来るジュエル系素材ですが

石:MP15:作成ポイントに追加2

ルビー:火属性・ダメージ+2

サファイア:水属性・回避2

エメラルド:風属性・移動力2m

琥珀:木属性・距離延長2m

ダイヤモンド:地属性・装甲2

と仮定しましょう。

この状況で、宝石やパワーストーンを調べて提案したり、データを比較して変な所があれば

内容をソックリ入れ変えたり、明らかに効果がおかしい物は、修正を求める事が出来ます。

学生がこの時に1部を修正すれば教師並のクラス委員長、全体を修正すれば教頭並の各委員長(生徒会役員)などに成れるわけです。

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