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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第ニ章
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世界の敵

「終わったみたいだな」

「そうだなとりあえず皆にも見せて…記録できてねえ?」

 手元の呪文がまともに機能していなかった。

 遺言があると言う話だったので、とりあえずこっちでも情報伝達呪文を造っていたのだが…。

 不思議な事に、この辺一帯の情報伝達が阻害されている。

「アマデウスの事だ、無意味に様式美を持ち込んで、こういうのは一回きりとか言いかねん」

「それにしては変だな。さっきの記録は残っているし、証拠を残したくない訳じゃなさそうだが…」

 俺たちの間で、定番の記録消滅ネタがよぎった。

 だが、残された遺言の方は無事で、また誰かくれば伝えられるようになっている。

 これでは記録の情報の移動を封鎖する程度の意味しかないが…。


「おっ。動き始めた。なんだったんだ、一体」

「何でも良いだろう。もしかしたら、覗き見や遠隔で訪れる事を止めさせるだけかもしれん」

 暫くすると、機能していなかった呪文が動き出す。

 確かにこいつが言うように、現地に訪れた者しか聞けない様になっている可能性はある。

 だが…他に何かの意味がある様な気がしてならないのだが…。

「考えるべきは、死体を持て帰るか、他の連中を連れて来るかじゃないか?」

「それもそうだな。…モルガナやアマデウスなら、死体を一時的に小さくするとか別空間に仕舞いそうだが、俺らはどうするかね」

 より重要な案件で、俺は推論を停止してしまった。

 後から考えれば、ヒントはあったし、千歳一隅の奇襲を掛けるチャンスだった…。


「…行動中なら絶対に連れて帰るべきだが、今は始点ってトコだ。居住区も近い事だし、みんな連れて来て葬儀といこうぜ」

「確かにな。背負っていては何か居た時に面倒だ。距離を考えると、皆を連れて来る方が早いか」

 元々、ここも居住区の離れ…という位置に有った。

 毒の谷があったせいで遠回りしなくちゃならねえ区角になっていたが、毒はなんとでもなると判ったら気が早いもんだ。

 なんというか不思議な信頼感と言うべきか…。

 毒の谷を用意したアマデウスが、死体を始末したり、無意味に破壊して回らないと確信していた。

 あいつがそう言うのをする時は、自分が開く役になった時に自爆する為だろう。


 そうして、少しの時間を掛けて捜索と掃除。

 証拠を兼ねて、持ち帰れそうな小物を回収すると、死体に布を掛けて簡単に弔った後、俺達は居住区へと帰還を開始する。

「なんだ、また立体映像か…今度は何の伝言だ司書?」

「…ん、そうだな。(…このタイミングで?)」

 帰還途中の俺達の前に、再び立体映像が出現する。

 場所はアマデウスの伝言があったよりも少し向こうで、今更何の用だと馬鹿女が進み出る。

 不意に嫌な予感を覚えた俺は、手を握って歩くのを止めさせた。

「君たちに二人にもう一つ、伝えなければならない事があるんだ。近くにもう一つモジュールの生成装置が置いてある。せめてもの形身として…」

「…猿芝居は止めろ、4番目。何の用だ?」

「何を言っているんだ、ただの映像だとさっき貴様自身が…」

 死んだダチの姿を借りた真似っ子に、俺は唐突に怒りを覚えた。

 同じ形の存在で、個性が違うって言うなら端からそう主張すれば良いんだ。

 姿形が同じだからと言って、姑息に使う辺りが許せねえ。

 制止した俺が、逆に進み出てて、まだ気がついて居ないこの馬鹿に止められる事になった。


「…今、二人って言ったろ?伝言の方は、おやっさんか俺かって言ってた。つまりこいつは、良くできた偽もんだよ。アマデウスが情報を写しているって言ってなかったか?」

「そう言えば…。しかし、4番目が本当に…」

「フンっ。せっかく竜が守る御宝に誘導してあげようと思ったんだけどねぇ。まあ仕方ないか、何時から僕がドローンじゃなくて情報体だって気がついた?」

 4番目の正体、それは動き回る情報、モジュール干渉波だったのだ。

 俺も最初は自立型ロボット、ドローン・ユニットに情報を写した物だと思っていた。

 ここに来る前は、誰かが票増しに用意した物。ここに来てからは、アマデウスが用意した稼働用ボディだと。

 だが、幾つかの追加情報が、俺に次の回答を用意させたのだ。


「確信したのは、ついさっきだ。旅の途中で適応が早過ぎると思った時、最初は上手く監視されているだけかと思ったよ。だけどまあ、本人が動いた方がはええよな」

「ふうん、それがどう答えに繋がったのかな?…ああ、そうだな。ついでに、僕がやろうとしている事に対する反応も聞きたいな」

 知りたがり病は同じだが、顔つきが凶悪な物に変わっていた。

 どうやらこいつは、本格的な悪役になる事を決めたらしい。


「吸血鬼は流れる水を渡れない。…アマデウスが用意した結界は、情報の動きを遮断する物だった。てめえがドローンの身体を持ってるなら、無意味だよな?そう言う訳だ、判ったか三流魔王?」

「フフフ…。今時、魔王は無いだろう魔王は。よりエレガントに、世界の敵と呼んでくれないかな?人の進化を促す為の敵だよ」

「世界の…敵だと?」

 即座に攻撃しようとするこの馬鹿を、俺はギリギリの所で止めた。

 せかっく御喋りに興じてくれてるんだ、情報は少しでも引きだしたいし、……だいたい物理攻撃は効かねえよ。

 その為にも、もう少しだけ反応を見る必要があった…。


ゲーム風解説第24回


@クラス:イモタール

特典:肉体を持たないので、物理現象に囚われず、干渉による封鎖のみを受ける。

 4番目のドミネーター、エキスマキナは情報を星間通信にアップロードした情報体である。

ゆえに物理的な干渉を受けず、後に彼を研究した魔術師たちが自身を同様の状態に転写している。

 イモタールは肉体的な行動がとれない代わりに、壁のすり抜けなど、冒険においてはかなりの強さを見せる。

反面、モジュール干渉波による封鎖を受けた場合、アドレス的な移動・管理を行っている為、ちょっとした障害を乗り越える事が出来ない。

 例で言うと、物理的な壁ならば何でも潜り抜けるが、モジュール干渉を受けた棒が閂として横たわって居たら、通る事が出来ない。

しゃがんでリンボーダンスは論外だし、肉体が無いので持ち上げてはぁずす事も出来ない。

(勿論、呪文で破壊する事も出来るが、MPを使い果たすと死んでしまう)

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