レッサードラゴン
「さて。倒すとなりゃあ、本格的に情報を集めないとな」
俺は遠視呪文を維持したまま考えを切り替えると、状況を確かめる為の観察から、倒す為の情報集めに走る。
それまでは広く、何も見逃さない様に長めていたが、今度は逆にピンポイントで調べ始めた。
呪文攻撃と同質のモジュール干渉として、まずは射程と効果範囲から。
次に獣たちの傷や、周りの木々から威力のほどを調べて行く…。
「範囲は口元から放射状に延びて…、威力は絶大だな。神話のドラゴンにでも出会った気分だぜ」
パッと見ではあるが、それほど見当違いでも無いだろう。
大地はともかく木々は抉れているし、獣たちに生きのこっているモノは居ない。
倒された方は見慣れた獣なので、たまたま弱かったと言う事もないからだ。
「この時点で判らねえ問題としてはあと2つだな。これが精一杯なのかどうか。もう一つは他にも使えるか…」
独り言を口に出し、考えをまとめる手助けにする。
これが人間との諜報戦ならお笑い草だが、相手は生物だ。自分を落ち着かせる為には仕方あるめぇ。
その程度のリスクで冷静になれるなら構わないし、この距離で気がつくような恐竜であるなら、それはもう恐竜というよりは怪獣映画に登場する化け物だ。
「あの一発が獣から逃れる為の最大火力ならなんとでもなる。当たる位置に居なきゃいいし…罠って手もあるしな。問題は連発できるかどうかと、強化や防御呪文を使う知恵があるかだ」
連発はしかねない、というかやって来るべきだと危険視しておこう。
あの馬鹿女なら同じ事が出来る訳だし、その上で対処するとしよう…。
問題は、脚力を強化して近寄られたり、倒したと思ったのに生きてたら…死ぬしかない。
「罠を造って強化や防御を確かめる?いや駄目だ。それで仕留めそこなって、覚えられたらコトだ。なら取りうる手段はっと…」
生憎と死ぬ気は無いので、俺は注意深く対象の周囲から更に広範囲を、ザっと見返した。
今度は細かく把握すると言うより、周囲に何が居るのかを確かめる為だ。
何か適当なのが居るなら、煽ってぶつけるという古典的な手が使えるんだが…。
「居た居た。いつもの奴が居ましたよっと。あいつを煽って引っ張るか。まさか手下にはならねえだろう」
よく見かける恐竜を発見すると、俺は誘導する為の案を練り始める。
そのまま近づくに任せるってのは駄目だ。いくらなんでも、さっきの奴が直ぐに気がつくだろう。
ならばこいつが奇襲くらいは掛けられるように、お膳立てをしてやらねとな。
「あいつが有利になった状態でどうするかで、だいたいの能力が判るな。喰いつかれても攻撃呪文を使うような奴なら、逆に対処し易い…」
そうあって欲しいと思いつつ、俺はそこまで虫の良い考えは出来なかった。
さっきの奴が…(この際だから、レッサードラゴンとでも名前を付ける)、そこまでの火力馬鹿なら流石に今まで生きては居ないだろう。
急速成長させられているにせよ、野生生活のどこかで致命的な失敗をして、喰われている可能性の方が高いのだ。
「やっぱ風で迂回させるか。血の臭いの向きを変えるとして、どこまで近づけばいいかな」
俺は遠視呪文を打ち切ると、自分の周囲を確認してから飛び出した。
中途半端な位置で風向きを変えても仕方が無いし、だからと言って近寄りすぎたら俺が危険なだけだ。
獣と違って姿隠しの呪文が効くだけありがたいが、場所によってはレッサーのブレスに巻きこまれちまう。
「仕方ねえなぁ。呪文の射程を延ばすか…」
半端な距離を延ばしても意味が無い。
加算系を使って、投射呪文に投射呪文を上乗せする形で無理やり射程を延ばす。
使うコマンドは勿論、風の生成。
時間は数分で十分設定し、俺が集中しなくても良いようにして、起動と同時に離れる予定だった。
「後は運を天に任せるぜ。…あばよっ」
呪文を起動すると、俺はゆっくりとその場を離れる。
風向きが変わった事で、こちらに影響が出ないとも限らない。
第一、せっかく恐竜vs恐竜の勝負を仕掛けたんだ、特等席で拝まなきゃ嘘だろう。
やがて来る怪獣大決戦を眺める為、俺は所定の位置に向かった。
「後は野と成れ、山と成れだ。…これで感知まで出来るとか言うなよ?」
レッサーの方は、多少はじけ飛んじゃいるが、肉を喰らってご満悦だ。
この状態で倒される事は無いにしろ、初手ブレスで味気ない勝利を見る事なんてないだろう。
問題なのは、探知能力を有していて、近寄ったら判る場合だが…。
その場合は厄介どころの話では無いので、生き残りを掛けて起こせる奴は全員起こして、力を合わせ狩って歩く事態になるだろう。
「まっ流石にそんなわきゃねえよな」
恐竜たちの争いは、オーソドックスに始まった。
御馴染さんの恐竜は、途中で気がついたレッサーによって阻まれる。
最初に一撃喰いついたのが精々で、その後は一進一退の攻防が続いて居るように見えたが…。
「……おお、嫌だ嫌だ。しっかり防御呪文も使ってやがらあ。回復しねえのはありがたいけどよ」
途中で体表の硬度をあげる呪文を使ったのか、目に見えてレッサーの方が有利になって行った。
そして逃げ出そうとした恐竜を、レッサーは追いついて喰い殺す。
防御呪文まで使う碌でも無いこいつに驚きながらも、十分に対処出来るレベルである事に俺は胸をなでおろした…。
ゲーム風解説第16回
@呪文の維持と集中での維持
この世界の呪文は、時間維持するタイプの設定が可能である。
モジュールの強化項目で、時間延長とかを入れれば良いのだが
それとは別に、呪文に集中することで、意識して管理し続ける限り使い続ける方法がある。
長所としては、感知や回避行動が出来ない事、やはりMPの消費は有ると言う事である。
この方法を取得する為には、専用のスキルが必要になる。
・門派スキル
どこかの魔術門派に所属すると、門派専用のスキルと、汎用スキルを選択する事が出来る。
今回の話に登場する集中による維持もその一つで、感知や回避行動などが出来ない以外はMP消費などは特に増大し無い。
(基本MPは必要だし、防御は別の者に頼むしかない)
これはキャラクターの行動を集中のみに絞り、ゲームマスターの管理が減る為のボーナスである。




