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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第ニ章
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レッサードラゴン



「さて。倒すとなりゃあ、本格的に情報を集めないとな」

 俺は遠視呪文を維持したまま考えを切り替えると、状況を確かめる為の観察から、倒す為の情報集めに走る。

 それまでは広く、何も見逃さない様に長めていたが、今度は逆にピンポイントで調べ始めた。

 呪文攻撃と同質のモジュール干渉として、まずは射程と効果範囲から。

 次に獣たちの傷や、周りの木々から威力のほどを調べて行く…。


「範囲は口元から放射状に延びて…、威力は絶大だな。神話のドラゴンにでも出会った気分だぜ」

 パッと見ではあるが、それほど見当違いでも無いだろう。

 大地はともかく木々は抉れているし、獣たちに生きのこっているモノは居ない。

 倒された方は見慣れた獣なので、たまたま弱かったと言う事もないからだ。

「この時点で判らねえ問題としてはあと2つだな。これが精一杯なのかどうか。もう一つは他にも使えるか…」

 独り言を口に出し、考えをまとめる手助けにする。

 これが人間との諜報戦ならお笑い草だが、相手は生物だ。自分を落ち着かせる為には仕方あるめぇ。

 その程度のリスクで冷静になれるなら構わないし、この距離で気がつくような恐竜であるなら、それはもう恐竜というよりは怪獣映画に登場する化け物だ。


「あの一発が獣から逃れる為の最大火力ならなんとでもなる。当たる位置に居なきゃいいし…罠って手もあるしな。問題は連発できるかどうかと、強化や防御呪文を使う知恵があるかだ」

 連発はしかねない、というかやって来るべきだと危険視しておこう。

 あの馬鹿女なら同じ事が出来る訳だし、その上で対処するとしよう…。

 問題は、脚力を強化して近寄られたり、倒したと思ったのに生きてたら…死ぬしかない。

「罠を造って強化や防御を確かめる?いや駄目だ。それで仕留めそこなって、覚えられたらコトだ。なら取りうる手段はっと…」

 生憎と死ぬ気は無いので、俺は注意深く対象の周囲から更に広範囲を、ザっと見返した。

 今度は細かく把握すると言うより、周囲に何が居るのかを確かめる為だ。

 何か適当なのが居るなら、煽ってぶつけるという古典的な手が使えるんだが…。


「居た居た。いつもの奴が居ましたよっと。あいつを煽って引っ張るか。まさか手下にはならねえだろう」

 よく見かける恐竜を発見すると、俺は誘導する為の案を練り始める。

 そのまま近づくに任せるってのは駄目だ。いくらなんでも、さっきの奴が直ぐに気がつくだろう。

 ならばこいつが奇襲くらいは掛けられるように、お膳立てをしてやらねとな。

「あいつが有利になった状態でどうするかで、だいたいの能力が判るな。喰いつかれても攻撃呪文を使うような奴なら、逆に対処し易い…」

 そうあって欲しいと思いつつ、俺はそこまで虫の良い考えは出来なかった。

 さっきの奴が…(この際だから、レッサードラゴンとでも名前を付ける)、そこまでの火力馬鹿なら流石に今まで生きては居ないだろう。

 急速成長させられているにせよ、野生生活のどこかで致命的な失敗をして、喰われている可能性の方が高いのだ。


「やっぱ風で迂回させるか。血の臭いの向きを変えるとして、どこまで近づけばいいかな」

 俺は遠視呪文を打ち切ると、自分の周囲を確認してから飛び出した。

 中途半端な位置で風向きを変えても仕方が無いし、だからと言って近寄りすぎたら俺が危険なだけだ。

 獣と違って姿隠しの呪文が効くだけありがたいが、場所によってはレッサーのブレスに巻きこまれちまう。

「仕方ねえなぁ。呪文の射程を延ばすか…」

 半端な距離を延ばしても意味が無い。

 加算系を使って、投射呪文に投射呪文を上乗せする形で無理やり射程を延ばす。

 使うコマンドは勿論、風の生成。

 時間は数分で十分設定し、俺が集中しなくても良いようにして、起動と同時に離れる予定だった。


「後は運を天に任せるぜ。…あばよっ」

 呪文を起動すると、俺はゆっくりとその場を離れる。

 風向きが変わった事で、こちらに影響が出ないとも限らない。

 第一、せっかく恐竜vs恐竜の勝負を仕掛けたんだ、特等席で拝まなきゃ嘘だろう。

 やがて来る怪獣大決戦を眺める為、俺は所定の位置に向かった。

「後は野と成れ、山と成れだ。…これで感知まで出来るとか言うなよ?」

 レッサーの方は、多少はじけ飛んじゃいるが、肉を喰らってご満悦だ。

 この状態で倒される事は無いにしろ、初手ブレスで味気ない勝利を見る事なんてないだろう。

 問題なのは、探知能力を有していて、近寄ったら判る場合だが…。

 その場合は厄介どころの話では無いので、生き残りを掛けて起こせる奴は全員起こして、力を合わせ狩って歩く事態になるだろう。


「まっ流石にそんなわきゃねえよな」

 恐竜たちの争いは、オーソドックスに始まった。

 御馴染さんの恐竜は、途中で気がついたレッサーによって阻まれる。

 最初に一撃喰いついたのが精々で、その後は一進一退の攻防が続いて居るように見えたが…。

「……おお、嫌だ嫌だ。しっかり防御呪文も使ってやがらあ。回復しねえのはありがたいけどよ」

 途中で体表の硬度をあげる呪文を使ったのか、目に見えてレッサーの方が有利になって行った。

 そして逃げ出そうとした恐竜を、レッサーは追いついて喰い殺す。

 防御呪文まで使う碌でも無いこいつに驚きながらも、十分に対処出来るレベルである事に俺は胸をなでおろした…。


ゲーム風解説第16回

@呪文の維持と集中での維持

 この世界の呪文は、時間維持するタイプの設定が可能である。

モジュールの強化項目で、時間延長とかを入れれば良いのだが

それとは別に、呪文に集中することで、意識して管理し続ける限り使い続ける方法がある。

長所としては、感知や回避行動が出来ない事、やはりMPの消費は有ると言う事である。

この方法を取得する為には、専用のスキルが必要になる。


・門派スキル

 どこかの魔術門派に所属すると、門派専用のスキルと、汎用スキルを選択する事が出来る。

今回の話に登場する集中による維持もその一つで、感知や回避行動などが出来ない以外はMP消費などは特に増大し無い。

(基本MPは必要だし、防御は別の者に頼むしかない)

 これはキャラクターの行動を集中のみに絞り、ゲームマスターの管理が減る為のボーナスである。

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