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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第一章
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将来の為に悩めること

「炎よ、遮れ」

 言葉と共に、火炎の壁が道を遮る。

 効果は数分ほどだが、それだけあれば構わない。

 サルマンデルは自分への道を閉ざす攻勢防壁に満足すると、獣たちを一匹ずつ指差していった…。

「沈め!」

 ドン、ドン、ドン。

 彼女が言葉を発し、指差すごとに一匹の獣が落ちる。

 中には強靭な生命で生き延びた個体もいるが、二発喰らえば同じ運命だ。

 逆襲し様にも火の壁が遮ってとうてい辿り着けるようには思えない。もっとも、つき抜けて喰らいつこうとしても、途中で落とされるのが関の山。

 サルマンデルは以前にも増して手際よく、獣たちを始末して行った。

「…十分に狩れたか。恐怖を覚えて、離れてくれればありがたいが…」

 新しい装備の肩慣らしを兼ねていたとはいえ…。

 必要なのはこの場所を通行可能な場所として確保することで、無意味な虐殺がしたいわけでは無い。

 血を流している個体を探して、一体ごとに軽く炙って臭いを消して行った。


「精が出る様だな。算段の方はついたか?」

「此処を確保するついでに習熟は完了しましたよクロガネ。『山』に行くにせよ『谷』の周囲を抑えるにせよ、どちらでも大丈夫でしょう」

 騒音が途絶えた後、のっそりとクロガネが姿を現した。

 技術やらしく、上手く使えているか気になるのだろうとサルマンデルはあえて誤魔化そうとする。

 だが、そんな無茶が通じるはずは無い。

 彼女がクロガネから言われている事は、別に新技術の習熟だけではないのだ。

「教師としてやれる算段はついたのかと聞いとるんだ。言っておくが儂らもそれなりの数を教える事になる。一人だけ楽ができると思うな」

「その台詞は司書や四番目にも言って欲しい物です…。ここに居ない連中の事は置いて置くとして…。モルガナにでも相談しますよ」

 仕方無い、丸投げしよう。

 そう瞬時に決断したサルマンデルに、クロガネはあからさまにため息をついた。

 それでも怒りださないのは、相談するという選択肢の中でも、一番まともな相手ゆえだ。

 ならばなりゆきを見守って、文句があれば大枠が判った段階で口を出せば良いだろう。

 そう思って、軽く手をあげて続きを遮ると、自分の仕事に戻って行った…。


「…と言う訳なんですが、酷いと思いませんか?」

「んー。小さな子供に教える訳でもないし、気にし過ぎだと思うのだけれどもねえ」

 炉端で肉を炙りながら、サルマンデルは何度も出し汁に漬け直した。

 浸した肉から水を切って、炉に掛け直すと良い匂いが立ち始める。

 簡単な料理であるが、これもモルガナから教えてもらった新レシピだ。上手く焼けたので、少しだけ気分がいい。

「そこなのですよね。いっそ小さな子供なら、何を教えても無駄にはならないと思いますが…。今回は自分と同じエージェント達です」

「いっそ子供なら、予行演習だと思えるのにねえ」

 ぶっ!と息を突いて、炉で炙られた以上にサルマンデルの顔が赤くなる。

 パクパクと魚の様に口を開けて絶句する彼女に、モルガナは笑ってお茶を出してやった。

 ずずっと一息に啜って、落ち着くのを待ちながらコップを幾つか並べ始めた。


「だからさ、難しく考え過ぎ。クロガネは弟子とか技術屋仲間に作品を見せる程度のつもりだし、伯爵なんかも行政に必要な事の合間に聞いたことを答えて行くつもりみたいね。出来る範囲でやろうと言う態度で良いと思うんだけどさ」

「…口でそう言うのは簡単ですが、部下に戦闘やフォーメーションを教えるのとは違うんですよ?モルガナの様に上手く教えるコツなんて知りません」

 少しだけすねて見せるサルマンデルをあやす様に、モルガナはコップへ色々な物を注いで行く。

 まずは熱いコーヒー、次に先ほどの爽やかなお茶、そして最後はチョッピリのお酒。

 順番に飲みなさいなと声を掛け、舌を焼く様なコーヒーを自分も啜っていく。

「何もかも一遍に考え過ぎなのよ。あんたは専門の教官って訳でもないし、あたしほど数をつけられるって訳でもないでしょ?」

「それでも何人も居ると思います。内の半分が同じ道の同業者で、コツだけ知りたい奴とかチームとして遜色なければ良い奴。とは判ってるんですけど…」

 このままじゃあ、あたしが校長先生って呼ばれる日も遠く無いかもね。

 なんて冗談を言いながら、モルガナはカップを置いた。

 その間にも、サルマンデルはコーヒーを飲み干して、お茶で口の中を洗っている。


「そこまで判ってるなら良いじゃない。コツだけ知りたい人間関係なら悩む必要は無いし、残りの人は会ってみないと事情は判らない物ね」

「その為に、今は悩む以外にはする事が無いと言うのが難点で…。そういえば、モルガナはどう言う感じで私達に教えてくれるんですか?」

 コツに関しては、気がついた事を教えて、自然にやっている事は勝手に真似させれば良い。

 だが、本気で教えを請いたいメンバーに、どう向かえば良いか判らないのだ。

 それがサルマンデルの悩みであり、真面目に1つ1つ片付けて行く彼女の良い所でも、悪い所でもあるだろう。

 くすっと笑ってモルガナは、参考になるかは判らないけれど…と自分のやり方を口に出した。

「大した事は考えて無いけどさ、まあ。その人の物語を考えて、必要そうな事を教えたり物を渡したりしてるね。あんたなら、普段は猪突猛進だけど男の事になると不器用な女の子とか」

「それを言わないでくださいよ…。でも、その人の物語と、必要な物かあ…」

 辛口の酒を胃に流し込み、サルマンデルは黙りこくった。

 どうせ答えの出無い答えの一つだ、うじうじ考えるよりも、その時になって行動する方が感所らしいだろう。

 モルガナはうとうとし始める彼女に、最後に1つだけ囁いた。

「出来る限りの事をやって、自分が教えれない物に関しては、あたしらを頼ったら?それを知る事もあんた自身の役に立つんだからさ」

 おやすみ。

 それだけ言って、モルガナは毛布を掛けて炉の火を消えない程度に調節した。

 すやすやと眠るサルマンデルを残し、モルガナ自身は別の作業に移る。


 当面の目的と今後の展望が決まるまで大して時間も無い事だ、悩む時間も必要なのかもしれない。


ゲーム風解説第11回


@呪文のコストと、モジュール属性の利点

 モジュールで呪文を組む時、当然ながらコストが発生する。

1:呪文作成に必要な、モジュール群の費用

2:呪文自体が圧迫する、モジュール呪文の重さ・容量


 費用に関しては、レアリティが重要なファクターで

簡単な数値で表すと、コモン1つごとに、アンコモン1つ3、レア1つが5(許可が必要)と言う感じで

モジュール属性があれば、費用0で組み込めるので若干のコスト削減になる。

攻撃呪文1つ造るだけで、キャラ作成pだとかお金が3も5も飛んで行く。


 次に呪文の重さに関しては、モジュール属性は大きな作用をもたらす。

簡単に数値化すると、モジュール群1つごとに1ほど重く、容量を圧迫する。

この場合、1分間に作業出来る性能が低いと、2分間に分けて作業したり、ターン終了時に攻撃した利する必要が出て来る。

この時、モジュール属性によって組み込んだモジュール群は重さ・容量に関係ないので、性能の良いスタッフでなくとも、同時に2つ3つと呪文を使う事が出来る。

 例として作中では、サルマンデルが火炎の壁を維持しながら、攻撃呪文を放っている。

これは単純な火の攻撃呪文を無コストで撃ちながら

同じ呪文に壁型・時間維持を付け加えたバリエーションを造っているだけなので、「形状:壁」と「強化項目:時間延長x●分」だけで済むのである。

(もっとも、サルマンデルは火属性x3で攻撃呪文は無コストに近いレベルで扱えるのだが、他の便利系のコストはどうしても重くなる)

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