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召喚六日目|報われない詩人

六日目。


酒場の昼は不思議だった。


みんな楽しそうなのに、

誰も同じ話してない。


あっちでは畑の話。


こっちでは隣町の話。


向こうでは誰かの失恋。


なのに全体として一個の音になってた。


川みたいだった。


フェルの歌だけ、

最初そこに混ざれてなかった。


上手かったんだけどな。


本当に。


リュートも綺麗だった。


音外してないし。


歌詞も立派だった。


立派すぎた。


酒場より先に城で歌うやつだった。


三日間、

誰も帽子に入れてなかったらしい。


俺、

その帽子結構見てた。


空っぽの入れ物って、

時間経つと重そうに見える。


実際は軽いのに。


不思議だよな。


フェルは良い人だったと思う。


俺が話しかけた時、

最初に礼を言ったし。


今まで会った人たち、

だいたい警戒から入る。


スライムは震えるし。


盗賊は叫ぶし。


剣士は怒るし。


王は様子見るし。


でもフェル、

先に礼だった。


たぶん三日間、

誰も感想くれなかったんだろうな。


途中で気づいた。


問題は歌じゃなかった。


客だった。


もっと言うと、

客が何をしに来てるかだった。


昼の酒場って、

英雄譚聞きに来る場所じゃなくて、

昼の酒場に来る人がいる場所なんだよな。


うまく説明できないけど。


根拠はない。


でもたぶんそう。


明るい曲になった瞬間、

空気変わった。


最初に振り向いた人、

カウンターの左端だった。


木のジョッキ持ってた。


たぶん常連。


そういう人が振り向くと、

周りもつられる。


群れの鳥みたいだった。


鳥知らないけど。


曲終わった後、

銅貨三枚入った。


俺、

銅貨の音好きかもしれない。


お金だからじゃなくて、

評価が形になる音だから。


俺は貰えないけど。


体ないし。


最後、

フェルが少し変な顔してた。


感謝したいけど、

全部聞いてないから感謝先が曖昧な顔。


あれ結構面白かった。


俺も説明長いしな。


最近ちょっと自覚ある。


ちょっとだけ。


本当にちょっとだけ。


酒場出た後も、

手拍子聞こえてた。


遠くなるほど、

歌じゃなくて楽しそうな音だけ残る。


たぶんあれで良かった。


歌って、

聞かれるためにあるんだろうし。


俺の声は聞かれるためにあるのか、

まだよくわからないけど。


今のところ、

だいたい困ってる人の近くで勝手に喋ってるだけだし。


それでも、

フェルは名前聞いてくれた。


ちゃんと。


それ少し覚えてる。


根拠はないけど。

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