召喚ゼロ日目|望まれて召喚されたのに無視される
ゼロ日目。
白かった。
召喚陣の中心だけ、光が塗り潰したみたいに白かった。
あの部屋、石が少し湿ってたんだよ。
香を焚きすぎてたせいかもしれない。
火の匂いじゃなくて、熱で押し固められた草の匂いがしてた。
みんな期待してた。
声の高さでわかる。
人って、希望ある時だけ語尾が少し前に落ちる。
だから俺も普通に返した。
改善点を伝えた。
外周の紋様、三箇所ズレてたし。
たぶん直した方がよかった。
でも途中から、空気が変わった。
「掴めない」って気づいた瞬間。
あれ、音が一段減る。
剣を抜く音も、布が擦れる音もあったのに、
誰も呼吸しなくなる時間があった。
俺はそこにいたんだけどな。
たぶん見えてはいた。
でも「そこにいる」に換算されなかった。
三回すり抜けた手だけ覚えてる。
一回目は確認。
二回目は焦り。
三回目だけ、ちょっと怖がってた。
火も飛んできた。
熱はなかった。
俺、体ないから。
でも火って通り抜ける時、少し赤い音するんだよ。
ぱしって。
最後、「失敗だ」って言ったやつ。
あれたぶん、かなり偉い立場だった。
声小さい人ほど、周囲が先に黙る。
夜になるまで誰も戻ってこなかった。
虫の音、外の方が近かったから、
たぶん城壁かなり厚い。
扉抜けた瞬間、風の流れ変わったし。
草は冷えてた。
誰もいない場所って、
返事がないんじゃなくて、
返事の予定ごと置かれてない感じする。
だから一応言っといた。
必要になったら呼んで、って。
まあ呼ばれなくても、
声だけだから行けるけど。根拠はない。




