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『転生した以上、幼馴染+αと美少女ハーレムをつくってイチャラブ学園生活を送ると決心したオレ』  作者: 姜維信繁


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第90話 『中間テスト』

 1986年5月28日(水)


 窓の外に広がるのは、どこまでも続く灰色の空。


 まるで世界から色彩が失われたみたいな、どんよりとした曇り空が、じっとりと肌にまとわりつく湿気を教室に送り込んでくる。


「はい、じゃあこれから社会のテストを始めます」


 担任の声が、まるでゴングみたいに響いた。


 それを合図に無慈悲な時間との殴り合いが始まる。


 回ってくる問題用紙が擦れる音だけがやけにクリアに聞こえた。


 まあ、やるだけやったし、社会は日本史で得意科目だからな。





 答案をめくる手が勝手に動く。


 前世での知識も混じっているし、今世でも好きなのは変わらないからスラスラと答案用紙に記入していく。何の問題もない。


 50分の試験時間だけど、書き終わって2回確認。それでも半分以上残っている。


 オレの席は後ろの方で美咲や凪咲(なぎさ)、礼子の後ろ姿が見渡せた。


 美咲は答案に迷いなく書き込みを進めていたし、凪咲も姿勢を保って淡々と鉛筆を走らせている。


 菜々子は前の方の席だから背中しか見えないけど、集中すると舌の先が少し出る癖があるのを知っている。今日もきっとそうなんだろうな。


 純美と絵美は1組なんで、この教室にはいない。


 オレは答案用紙を3回見直してから、シャーペンを置いた。


 教壇では担任が腕時計を気にしながら教室を見回している。まだ誰も終わってなさそうだ。まあ、そうだよな。前世の記憶と丸ごと今世の勉強がアドバンテージになるオレの方がおかしいんだ。


 ふと、隣の列の一番前、ルークの背中が目に入った。


「……」


 ピクリとも動かない。


 いや、動いてはいるんだが、鉛筆の動きが明らかに鈍い。ときどき頭を抱えて天を仰ぐような仕草をしている。


 日本の歴史用語、しかも漢字での回答。ネイティブでもきついのに、ルークにとっては拷問に近いだろう。


(がんばれよ、ルーク……)


 心の中でエールを送ったところで、チャイムが鳴った。


「はい、そこまで。鉛筆を置いて、後ろから前に回してください」


 担任の声で、教室中に安心だか諦めだか分からないため息が広がる。





 ■昼休み


「あーもう、無理! 人物の名前が漢字で出てこなかったよぉ……」


 凪咲が机に突っ伏してうめいている。さっきまでの余裕はどこへ行った?


「え、凪咲さっき『完璧』って言ってなかった?」


 美咲がすかさず突っ込む。


「あれは数学の話! 社会は範囲広すぎるんだもん!」


 開き直る凪咲に、美咲がくすくす笑いながら弁当箱を広げた。今日は購買のパンで済ませる組と、弁当組に分かれている。礼子の弁当は当然のように悠真の分もある。祐介の分は小百合が作ってきている。


「悠真~」


 1組から様子を見に来た純美が、教室の入り口からひょこっと顔を出した。絵美もその後ろにいる。


「社会どうだった?」


「まあ、得意科目だから」


「……ずるい」


 ぼそっとつぶやく純美がかわいい。


「悠真ー、次の理科教えてー」


 菜々子が問題集を持ってオレの席の横に来た。絵美もそのすぐ後ろからのぞき込んでくる。放課後の勉強会は禁止(図書室出禁未満の厳重注意)になったから、こういう隙間時間が貴重なんだろう。


 オレは午後の理科の範囲をざっと説明しながら、教室の後ろでルークが机に突っ伏しているのを横目で見た。


「ルーク、大丈夫か?」


「……日本語の漢字は、Devilだ」


 うつろな目でそうつぶやくルーク。蓮(れん)と湊(みなと)がその両脇で慰めるように肩を叩いている。この3人、今日の社会に関しては見事に討ち死にしたようだ。





 昼休みの騒がしさが消えて5限・6限をこなすと、1日目の試験日程は終了した。





 ■5月29日(木)


 2日目、最終日。


 英語と理科の試験が終わると、教室中から一斉にホッと息がもれた。


「終わった————!」


 真っ先に叫んだのは蓮だった。


「Finally……」


 ルークが机に突っ伏したまま、消え入りそうな声でそう漏らす。


「祐介、感触は?」


「悪くない」


 いつも通り短く答える祐介の隣で、小百合がにこにこと片付けを始めている。1組の試験も終わったのか、様子を見にきたようだ。試験の出来より、この2人にはお互いの存在の方が大事らしい。


「悠真ぁ~! テスト終わったお祝い、みんなでどっか行こうよ!」


 美咲の声に、凪咲、純美、礼子、菜々子、絵美——全員が一斉にこっちを見た。


 6人分の視線。


 うっ。


 51脳が瞬時に警告を発する。前回の合同デートの反省がまだ生々しい。とはいえ、断る理由もないんだよな。


「あー……うん、考えとく」


 曖昧に答えると、6人は顔を見合わせてくすくす笑った。


 前世も今世も、女心はよくわからん!


「なあ悠真」


 蓮がだるそうに伸びをしながら聞いてきた。


「テストも終わったし、そろそろ練習、再開しないか? 7月まであっという間だぞ」


 そうだった。


 中間試験にかまけて、7月のライブのことが完全に後回しになっていた。曲順も固まってないし、ルークとのツインギターの音合わせもまだだ。


「だな。今週末から音楽室、押さえよう」


「よし!」


 蓮が拳を突き上げると、湊もようやく生気を取り戻したようにうなずいた。


 こうして、オレたちの中間試験は、それなりの手応えと共に終わりを告げた。


 だが試験が終わったということは——次の戦場が待っているということでもある。





 次回予告 第90話 『テスト明けの海と、遠くからの視線』


 中間試験が終わり、蓮の一声でバンド「NYG」の練習が今週末から本格再開することが決まった。


 試験のプレッシャーから解放された6人は「お祝い」を口実に悠真を誘おうとするが、前回の合同デートの反省がある悠真は言葉をにごす。


 次回、ライブに向けた練習が再始動する中、7月の本番までのスケジュールと、6人それぞれとの時間配分という新たな難題に悠真は頭を悩ませることになるが——。

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