馬車
荷物をまとめて宿の主人に挨拶をする。
昨夜に今までの礼としてチップに銀貨を3枚渡したら断られてしまったので、部屋のテーブルの上に置いといた。
それから武具店や魔法屋にも挨拶を済ませて乗合所に向かう。
その途中で、知り合いになった人たちとも挨拶を済ませた。
「いい街だったね」
美鶴がぼそりとこぼした。
僕も同意見だった。
少し名残惜しい、そう思うがここで立ち止まっても何も変わらない。
進んでも変わらないかもしれないけれど、それはそれでという物だ。
「よう、話は聞いているぞ。
1人銀貨1枚100シンでアザレスの街までだ。
途中下車の場合でも値段は変わらないからな」
「思ったよりも安いですね」
「おいおい、商人ならこの値段を安いなんて思わないだろ」
「護衛付の安全な旅でそのお値段なら得ですよ。
個人で護衛を雇うよりもよほどね」
「まぁ……今はそうだろうけどな」
今は、という言葉に少し違和感を感じたが大商人にでもなればまた別という事だろうか。
それとも奴隷でも使うのだろうか。
「二人分で200シンです」
「うむ、確かに。
そんじゃ、あの馬車の中で待っててくれ。
護衛の騎士と討伐者が集まり次第出発する予定だ」
「わかりました、荷物は抱えていても構いませんね」
「むしろそうしてくれ、盗まれてもおれたちは責任取らんからな」
ふむ、やはり自分の物は自分で守るべきという考えが主流なんだろう。
そうなると、美鶴が少し心配だ。
普段から抜けているところがある。
「美鶴、荷物に気を付けてね」
「春樹も、商品を盗まれないようにね」
美鶴も言うようになったものだ。
これなら大丈夫かもしれない。
少しだけ安心した。




