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召喚術の支配者  作者: 人間失格
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異世界効果

「これは……」


必死の思いで考えを巡らせる。

なぜこんなところに、誘拐?

いや、それなら誘拐犯の姿がないのはおかしい。

それにこんな草原に教室を再現する必要性がわからない。

バトルロワイヤルの再現にしても生徒しかいないのはおかしい。

なぜ先導役がいないのか。

全くわからない


「まさか!」


考え込んでいると教室の中で生徒の一人が声を上げた。

何事か、全員がその彼の方を見る。

その先で彼は左手一本で逆立ちをしていた。

教室の誰もが言葉を失う。

いま片手で逆立ちをしている彼は、控え目に言ってふくよかな体型だ。

少なくとも体重は三桁を超えているだろう。


「やっぱりだ!」


彼は声を上げる。


「どういうことだよ」


クラスの中でも比較的素行の悪かった生徒が声を抑えてふくよかな生徒に掴みかかる。


「い、以前読んだ漫画で似たようなシチュエーションがあったんだよ

異世界トリップって言って地球とは違う世界にトリップしてしまうんだ」


その言葉を聞いてそんなまさか、という事となるほど、という二つの考えが頭に浮かんだ。

そんな非現実的なことがと思いつつ、そうでなければ目の前の彼がやっていた行為に説明がつかない。

端で悩んでいる僕をよそに彼は説明を続ける。


「その漫画だと異世界に行った主人公は今までとは比べ物にならない力を手に入れるんだ。

筋力や、耐久力をね。

それでその主人公は世界を救うために奮闘するんだ! 」


ふくよかな彼の声は上ずっている。

おそらく興奮しているのだろう。


「……くだらねえ」


その彼を素行の悪い生徒は突き飛ばした。

そして唾を吐き捨て、自分の荷物を持って教室から出ていってしまった。


それに数名の、同じように素行の悪い生徒が続いた。


それ以外の生徒は教室に残っている。

先ほどのふくよかな生徒もそうだ。

しかし、もう逆立ちはしていない。

その代わりに椅子を弄んでいる。


「春樹、春樹! 」


「……ん? 」


少し考え事に熱中しすぎていたみたいだ。

美鶴、幼馴染の彼女が話しかけてきたのを無視してしまっていた。


「ごめん、なに? 」


「また悪い癖ね……まぁいいわ。

これからどうするつもりなの」


これから、そうこれからが問題だ。

この教室を拠点にするのも問題だが、行くあてがない。

だからといって他に何をすればいいかもわからない。


「美鶴、食料はどれくらいある?

あぁあと水も」


「え?えーと……多分みんな500mlのペットボトル1、2本くらいかな。

運動部なら2Lのペットボトルくらいは持ってると思う。

ご飯なら……お弁当とお菓子がちょっとだけど」


「そうか……一応荷物を確認しよう」


そう言いながら自分のカバンに手を伸ばして気づいた。

普段学校指定のカバンを持ってきている。

けれど今僕の机にかかっているカバンはプライベートで使っている肩下げのカバンだ。


満の方を見ると同じように、彼女が私生活で使っているポシェットだ。

不思議そうに首をかしげている。


ひとまずあまり気にせずカバンを開けて驚愕した。

カバンのそこが見えない。

まるで宇宙空間のような闇が広がっている。


恐る恐る手を差し込むと相当深いようで肩までカバンの中に入ってしまった。

少し考えてからなにか入っていないか考えた瞬間、手になにか触れた。

引っ張り出してみると大きめのアタッシュケースのようだった。

ひとまずそのまま取り出し、再び手をカバンに差し込む。

するとまたアタッシュケースが取り出せた。

繰り返す都度五回、アタッシュケースを出し終えると今度は水筒がいくつか出てきた。


その次は食料が出てきた。

携帯食料、保存食と呼ばれる物体だ。


「春樹……? 」


「なんかいろいろ出てきた」


事実を事実のまま伝える。


「私もこんなのが……」


満が僕にむけて差し出されたものを眺める。

ぱっと見白い木刀のように見える。


「ん? 」


向けられた木刀をよく見ると切れ目らしきものが見える。


「これってまさか……」


「うん、日本刀みたい。

しかもこれ、うちの家宝と全く同じ」



「家宝?

たしか守刀ってあつかいだったけ? 」


「うん、うちの守刀。

先祖代々受け継いだものらしいけど……」


美鶴が言葉を濁す。

以前、といってももう十年ほど前になるが彼女はこの守り刀のせいで人殺しの子孫といじめられたことがあり、いい思い出はないようだ。


「僕はこんなものだったよ」



カバンから引っ張り出したアタッシュケースを見せる。

このケースには何も記憶がない。

思い出も、記憶もそのまま何もない。


「中身は? 」


そう言われてみると中身がなにか知らなかった。

とりあえず開けてみると中から大量のカードが出てきた。


「カード? 」


確かにカードゲームやボードゲームといったものは好きだ。

思考を巡らせるタイプのゲームはなんであれやっていたからだ。

しかしこれは……。


「過去に見たことのないカードだ」


「春樹が見たことないなら私が知るわけないけど……」


カードをくまなく見てみる。

けれど普通のカードと変わらない。

カード固有の名前と、その効果、そして絵柄が合わさったものだ。


「【フラッシュ】ねぇ」


カードの名前を読み上げた瞬間、まばゆい光に包まれた。

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