あるいていっても
アルファポリス主催
第七回絵本・児童書大賞に参加しました。
よろしくお願いします。
「いいかげん、おきれよな」
ネコをみて、きいててほしいなとおもいながらつぶやく
あれから、たった一回、目をあけてニャアとないただけ
まっ白い、わたげみたいなネコ
だいているのが、そのうちめんどうになったぼく
かたにのせて、そのままあるいていく
おなかは空かないのかな
さむくないかな
ぼくばかりが、ネコを気にしてる
ぼくを気にするものは、なにもない
「きょうも、だれにも会えなかったな」
まだゆうやけが空にひろがっているだけなのに
「きょうはここで休もう」
いつもよりも早く、足をとめた
だれかに会えなかっただけじゃなく
あまりなにかをひろうこともなかった、きょう
リュックはかるいままで、ラクチンだったけど、ものたりなかった
まいにちあるいて、ちょっとずつなにかに会えなくなっている
「このまま、ひとつもひろわない日もあったりして」
かんがえないようにしていたこと
いっちゃえば、ほんとうのことになりそうでこわかった
まだ明るい空
なのに、光がほしくて、火をおこした
ゆっくりゆっくり、にじむように空がかわっていく
きょうもぼくは、ひざをかかえて空を見てすごす
オレンジの空に、よるがにじむんだ
かたの上、ひとつだけあたたかいばしょ
それをひざの上にそっとうごかす
ねむってばかりで、ぼくに気づかないネコ
一人はイヤだなとどこかでおもってた
けど、おかしいんだ
「ぼくと、おまえ。いっしょにいる方がさみしいっておもうのは、どうしてなのかな」
一人じゃないのに、さみしいなんて、おかしいよな
「気づいてもらえないって、こんなにさみしくなるのかな」
あるいていっても、あるいていっても
どこまでいっても、ぼくは一人で
「おきろよ、ネコ」
耳をくすぐってみても、じゃまくさそうに耳がうごくだけ
むねが、いたい
一人でいるのが、いたい
あるいていったって
「なんで、あそこにいたんだよ。おまえ」
ぼくを元気にするものには、出会えないままなんだろうか
どうしてぼくはネコと出会ったんだ
こんなにぼくをさみしくさせるものに……
ふしぎな出会いに、ぼくは空をにらむだけ
「なんでぼくは、あるきつづけるのかな」
あるきつづけて、なにがあるの?
明日はあるくのをやめようかななんておもったとき
「ネコ?」
ネコがおきて、ぼくからはなれて、あるきだした
「どこにいくんだよ」
小さなあたたかさが、はなれてしまった
まっくらなみちで、ニャアというこえと
星みたいに光る、ネコの目
ぼくは、ネコをおいかける
あるいていく
火をランプにわけて、ネコのあとをついていく
ネコはぼくを気にしてないのか、どんどんあるいていってしまう
「どこにいくんだよ。きょうは、もうあるけないよ」
そういいながら、でも、ネコをおいかけて、ぼくはあるいていく