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第76話 神に触れる


夜。


神祀庁中枢。


あの静かな空間。


だが今は違う。


わずかに、揺れている。


リョウたちが踏み込む。


もう止める者はいない。


止められない。


中央。


“それ”は座っている。


目を開いたまま。


こちらを見ている。


ユナが息を呑む。


「……前と違う」


サクヤが言う。


「ああ」


リョウは一歩前に出る。


「話できるか」


沈黙。


だが次の瞬間。


「できる」


声じゃない。


でも、はっきり届く。


ユナが驚く。


「すごい……」


リョウが言う。


「お前、分かってるよな」


一歩近づく。


「このままだとどうなるか」


少し間。


「全ては安定する」


リョウが首を振る。


「違う」


強く言う。


「止まるんだよ」


“それ”の目がわずかに揺れる。


サクヤが言う。


「変化が消える」


「それは、悪か」


問い。


真正面からの問い。


ユナが答えに詰まる。


リョウは、少し考えてから言う。


「悪じゃねえよ」


全員が一瞬止まる。


リョウは続ける。


「でもな」


「それだけじゃ足りねえ」


「なぜ」


リョウが言う。


「人は、揺れるから進むんだよ」


その言葉。


空気がわずかに震える。


ユナが前に出る。


「私ね」


少し震えながら。


「つらいの、イヤだよ」


正直な言葉。


「でも」


“それ”を見る。


「全部なくなったら」


小さく言う。


「なんか……違う気がする」


「違う、とは」


ユナは考えて、


ゆっくり言う。


「ちゃんと、生きてない感じ」


沈黙。


サクヤが一歩出る。


「我々は選ぶ」


「重さも含めてな」


“それ”が三人を見る。


長い、静かな時間。


その内部。


無数の感情。


後悔。


怒り。


願い。


安定。


すべてが混ざり合っている。


そして。


「私は、何だ」


問いが来る。


リョウが即答する。


「まだ決まってねえ」


「未完成か」


リョウが笑う。


「最高だろ」


一瞬。


ほんのわずかに。


“それ”の表情が、揺れる。


その時。


背後から声。


「そこまでです」


神祀庁の男。


だが今までと違う。


少し荒い。


「それ以上の干渉は、システムに支障をきたす」


リョウが振り向く。


「まだ言ってんのか」


男は言う。


「これは人類の最適解です」


“それ”が男を見る。


「お前は、選んだのか」


男が一瞬、止まる。


「……はい」


わずかな間。


「本当にか」


その一言。


男の表情が、初めて揺れる。


リョウがぼそっと言う。


「刺さってんな」


サクヤが言う。


「当然だ」


男は言い返す。


「私は――」


だが言葉が続かない。


その時。


“それ”が立ち上がる。


空間が震える。


だが、暴走じゃない。


違う。


“選ぼうとしている”


ユナが小さく言う。


「……決めるんだ」


“それ”が、ゆっくりと手を上げる。


片方は――神祀庁のシステム。


もう片方は――街へと繋がる流れ。


二つの道


リョウが言う。


「どっちでもいい」


全員が見る。


リョウは続ける。


「でも」


「誰かに決められるなよ」


沈黙。


そして――


“それ”の手が、動く。


戦いは、決着へ。


管理された完成か

未完成のまま進むか


その選択が、世界を決める。

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