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第62話 未完成のままで

広場の空気が、一変する。


神祀庁の男の背後。


ゆらり、と前に出る数人の人影。


普通の人間に見える。


だが――


“違う”。


リョウが低く言う。


「……まだ壊れてない」


サクヤが続ける。


「だが、近い」


適合者。


完成前。


言い換えれば――


“壊れる寸前で止められている存在”。


男が静かに言う。


「彼らは優秀です」


「壊れず、しかし力を持つ」


リョウが吐き捨てる。


「ただの実験体だろ」


男は否定しない。


「過程です」


その言葉に。


空気が冷える。


サクヤが前に出る。


「やめろ」


男は首を傾げる。


「なぜです?」


「彼らは選ばれた」


リョウが言う。


「選ばされた、だろ」


男は少しだけ笑う。


「違いは?」


リョウは即答する。


「デカい」


一歩踏み出す。


「自分で決めてねえ時点で、全部アウトだ」


短い沈黙。


その間に。


適合者たちが動く。


一人が、リョウに向かって踏み込む。


速い。


人間の動きじゃない。


リョウが構える。


「来るぞ!」


ドン!!


衝突。


拳と拳。


リョウが後ろに滑る。


「……重っ!」


ただの力じゃない。


中に“圧”がある。


サクヤは別の一人と交戦。


刃が走る。


ザン!!


だが。


浅い。


適合者は止まらない。


感情が薄い。


痛みを無視している。


サクヤが言う。


「制御されている」


リョウが叫ぶ。


「厄介すぎるだろ!」


三人、同時に来る。


連携はない。


だが、それが逆に読めない。


リョウは避けながら考える。


(斬るか?)


一瞬よぎる。


だが。


違う。


こいつらは――


まだ“人間”だ。


リョウが叫ぶ。


「サクヤ!!」


サクヤが応じる。


「分かっている」


殺さない。


止める。


それが今回の条件。


難易度が跳ね上がる。


リョウが歯を食いしばる。


「くそ……!」


一人を受け止める。


掴む。


そのまま――


ドクン!!


干渉。


内部へ。


暴れている。


だが。


完全じゃない。


“押さえ込まれている”。


リョウが気づく。


「……これ、外から縛ってるな」


サクヤが言う。


「装置だ」


リョウが叫ぶ。


「切れるか!?」


サクヤが答える。


「やる」


一人を蹴り飛ばし。


装置へ向かう。


男がため息をつく。


「やはりそこですか」


手を上げる。


装置が反応。


ドクン!!


適合者たちの動きが変わる。


より速く。


より鋭く。


リョウが舌打ち。


「強化かよ!」


だが。


同時に。


わずかな“歪み”。


リョウの目が光る。


「……今だ」


完全制御じゃない。


負荷が増えた分、乱れが出ている。


リョウが一人の腕を取る。


「落ちろ!!」


ドクン!!!


強制的に、流れを乱す。


均衡を崩す。


適合者の動きが止まる。


「ぐっ……!」


まだ意識がある。


その一瞬。


リョウが叫ぶ。


「サクヤ!!」


サクヤはすでに間合いに入っている。


装置へ。


一直線。


男が目を細める。


「二度目は通しません」


空間が歪む。


重圧。


だが。


サクヤは止まらない。


「――斬る」


ザン!!!


装置の外殻が裂ける。


だが、まだ足りない。


男がさらに出力を上げる。


その瞬間。


リョウが叫ぶ。


「止めろ!!」


全力で干渉。


適合者たち全員へ。


繋がっているラインを――


一斉に引っ張る。


ドクン!!!!!!


限界。


頭が割れそうになる。


だが。


その一瞬。


装置の制御がブレる。


サクヤが踏み込む。


「今だ」


核心へ。


「――断つ」


ザン!!!!


装置が、完全に裂ける。


ドォン!!


接続が切れる。


適合者たちが、その場に崩れる。


静寂。


リョウが膝をつく。


「……はぁ……っ」


サクヤが息を整える。


男は、壊れた装置を見て。


静かに言う。


「……やはり、不安定だ」


リョウが睨む。


「当たり前だろ」


男は視線を上げる。


「だから、完成させる必要がある」


サクヤが言う。


「させない」


男は笑う。


「では、競争ですね」


一歩、後ろへ。


「どちらが先に“形”にするか」


そのまま去る。


止められない。


リョウは地面に座り込む。


「……競争、ね」


サクヤが言う。


「乗るしかない」


リョウは苦笑する。


「だな」


周囲を見る。


倒れた適合者たち。


まだ息はある。


助けられる。


リョウが呟く。


「未完成で止める」


サクヤが見る。


リョウは続ける。


「完成させない」


それが。


今の答え。


不完全なまま。


人として、生きる。


サクヤは頷く。


「ああ」


戦いは続く。


完成された“人の神”か。


未完成の“人間”か。


その境界で。


選び続ける物語が、加速していく。

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