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ポッチャリと天使ちゃんの場合

今回は死産の話もあります。ご注意ください。

 3人目を作るにあたって、ノンビリーとセンセーは話し合いをしたそうです。

センセーは40歳を過ぎているし、ノンビリーも30歳を過ぎて子育てに無理が効かなくなっています。親戚の間でも男の子と女の子の両方の子どもがいるんだから、子どもは二人だけでいいんじゃないの?という空気が蔓延しています。

一番のネックが、センセーの定年です。

大学などの教育費が一番必要な時に無職になることが決まっている現在、これから子どもが出来たら、いえこれ以上できたら家計が崩壊することは必至。

どうしても3人目には二の足を踏む状態でした。(と思っていたのはジジババだけかも)


しかしセンセーは「兄弟は3人いたほうがいい。僕が育児休暇を取って、産後を支えるから。」という強固な主張を崩さなかったようです。

ノンビリーは「まぁ、赤ちゃんは可愛いし。」とセンセーに賛成することになったんだとか。


それを聞いて慌てたのは、ばあばんであるラクーです。

実はポホが産まれた時に、ノンビリーたちは12月の半ばからずっと実家にいました。

その上「センセーが春休みになってから家に帰ろうかなぁ。」などとノンビリーが言うのです。

いくらなんでも主婦が家を空け過ぎです。

実家滞在が3か月になる前にラクーが「いい加減にしなさいっ!」と言って、追い出した経緯があったのです。


本当に3人目を作るのだろうかと戦々恐々として1年間。

「やっぱり3人目は止めたのね。」

「そうだろうなぁ。」

ラクーとダンナーがのんびり話をしていた時に、電話がかかって来ました。

「お母さ~ん。3人目が出来たから、またよろしくね~。」

ノンビリーでした。


しかしその頃は、三女のネムルーとムコー夫婦との二世帯リフォーム同居の話が持ち上がっていて、「どうするよこれ。」という状態でした。

ネムルーが「お姉ちゃんが産後をうちで過ごせるように、リフォームを予定日前までに終わらせないと。」と言って、住宅会社の人と話し合いをしていました。


そんな時にネムルーのおめでたがわかったのです。

ネムルーとムコーは不妊治療に通っていたんですが、そのかいあって妊娠したことがわかりました。

ノンビリーの3人目と学年が同じで、従妹同士で仲良くできるねと喜んでいました。

お腹の赤ちゃんの心音が聞こえたので、お医者さんに次回の診察までに母子手帳をもらってきてくださいと言われたのです。

ネムルーが母子手帳を持っていそいそと病院へ行ったので、ラクーはいつものようになろうで遊んでいました。


そこに電話がかかって来たのです。ネムルーでした。

「うっうっう、おかぁさぁーん。赤ちゃんの心臓が動いていないって言われたー。」

死産になるので、別の病院で処置してもらってくださいと不妊治療をしていたお医者さんに言われたそうです。ネムルーはひどく泣きながら憔悴しているようでした。

心配になって「迎えに行こうか?」と言ったのですが、家から1時間ほどかかる不妊治療のためだけの病院へ行っていたので、なんとか運転して帰ると言います。


ラクーでさえ、頭が真っ白になってオロオロしてしまうのですから、ネムルーの心情を考えると胸が潰れる思いでした。

ラクーは仏壇の鐘をチンチンと叩いて、亡くなったじいちゃんばあちゃんに文句を言い、そしてネムルーとムコーの気持ちが落ち着きますようにとご先祖様に手を合わせました。


ネムルーはムコーに電話をしたらしく、ムコーが付き添ってくれて二人で帰って来ました。


しかし悲しみがうちに籠るタイプのネムルーは、食事に降りてきません。

これは、荒療治が必要だなとラクーは思いました。鉄は熱いうちに打たなければなりません。

ラクーは泣いているネムルーを抱きしめて言いました。

「親になろうと思っている人間が、泣いてばかりいたらだめだ。今回は残念だったけど、ネムルーとムコーを育てるためにこの子は来てくれたんだから、ちゃんと送ってあげなさい。」

そうして二人を仏壇の前に座らせて、ラクーがフライングで買って来ていた白いベビーソックスをおばあちゃんたちの写真の側に置きました。


こうやって祈ることで、二人とも気持ちのけじめがついたようです。


顔を見ることが出来なかった天使ちゃんですが、ばぁばんは忘れていないのです。


ネムルーは子宮外妊娠でした。そのままにしておくと命にかかわるということで、入院して治療を受けました。身体も心も痛めることになりましたが、この経験が二人の今後の糧になればと思っています。


 さて、長女のノンビリーの3人目ですが、こちらは順調に大きくなっているようでした。

しかしセンセーの方に問題がありました。半年以上前から育児休暇を申請していたのに、校長先生が手配をしてくれてないというのです。

「奥さんが入院している間は幼稚園の送り迎えはしてもいいから、授業には出て欲しい。」

女性(・・)の校長先生だそうですが、何の配慮もなかったということでした。

4月になってふたを開けて見れば、担任は持たされているし運動部の顧問や監督もそのままだったようです。こういう職場環境だと少子化になるのも無理ないですね。

学年主任の先生が気の毒に思ってくれて、ノンビリーが入院している間だけは、学年団でフォローをしてくださったようです。


子どもが3人になった今でも土・日は全部、部活動で潰れています。夜は遅いし、不良をする子供たちを夜中に捜し歩くこともある。「どーしてうちの子がレギュラーになれんのじゃ!」と何時間も文句をつけてくるモンスターペアレンツの方もいらっしゃる。先生というのはブラック企業なんですね。

ノンビリーは3人をお風呂に入れて、幼稚園のPTAをしたり地域の子供会の世話をしているんですから、よくやるよと思います。


 よーし、やっとポッチャリの話だよ。

ハシルンが幼稚園に行きはじめたので、里帰り出産をすることはできません。

そこでノンビリーたちは、ラクーを呼び寄せて泊りがけで手伝ってもらおうと考えていたらしいんですが、なんとラクーの体調が悪くなったのです。

一度孫の守りに行って泊まった後に、風邪のような症状が出て、いつまでも身体のだるさが抜けずに、とうとうポッチャリの出産の日まで体調が戻りませんでした。

今回は全然役に立たなかったばぁばです。


ラクーの穴を埋めてくれたのはセンセーのお父さんでした。

70代の方ですが、元気なじいじが近くにいてくれて助かりましたね。

そしてセンセーも慣れない料理を頑張って、ハシルンのお弁当をこしらえたりしたそうです。


ポッチャリが産まれた翌日に、ラクーとダンナーとネムルーとムコーは4人で産院へ行きました。

ノンビリーの病室は、ハシルンが産まれた時と同じ部屋でした。すごい偶然です。

そこにはノンビリーの家族が5人全員揃っていました。

ポッチャリを見ると、新生児はこんなに小さかったのかとびっくりしました。ポポの大きさに慣れていたので変な感じがします。

そして髪の毛がフサフサしていたのです。これには驚きました Σ(・ω・ノ)ノ!

ポポは心配するほど髪がなかったんです。姉妹でも違うもんですね。


出産時のことを聞くと、4歳のハシルンはお母さんがいなくて寂しくて泣いたそうです。それを2歳のポポが頭を撫でて慰めてあげたんだそうです。おいおい反対だろっ。(笑)

皆が集まっていて興奮したのか、ポポは息もつかない弾丸トークで喋り続けています。

「もう、お母さん。どこに行ったんかと思ったわ。」

この言葉を繰り返していたので、ポポなりに心配していたんでしょうね。


ポッチャリは今では3歳児のポポと同じ体重になって、ハイハイを始めています。

子どもの成長速度は目を見張るものがありますね。

そして孫は可愛いものです。

ラクーは、孫の顔を見ることが出来た喜びに目を細めるのでした。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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