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後編

後編です。お楽しみいただければ幸いです。

「いきなり話しかけてごめんなさい。わたしもそこの問題、ちょっとわかりづらくてつまづいてたんです。あの、説明すごくわかりやすいので、わたしも聞かせてもらっていいですか?」


すごいな、ヒロイン。初対面の人にもグイグイ行くね。対してみちるはもうすでに固まっている。ヒロイン相手でも緊張で固まっちゃうのだから、戦うなんてできるわけがないと思ったんだよね。


「僕は彼女に説明をしてるのであって、見ず知らずの君に教える義理はないよ。」

「あ、あの、混ぜてもらおうとは思ってないので、隣の机で聞いていてもいいかなって」

「嫌だね。君がそこにいると、彼女が集中できない。迷惑だ。」


こうやってはっきりと言ってしまうから真也君は敵が多いんだと思うな。ま、私もだけど。


「じゃあ、彼女と一緒じゃない時に教えてもらえませんか?わたし、桃園学園の」

「ねえ、しつこいと思わない?彼が嫌だって言ってるんだから、引き下がってよ。自己紹介すれば見ず知らずじゃないとか言いたいの?人に時間を取らせておいて自分の都合のいいように話を進めようとするのやめてくれる?」

「なっ何ですか、私はこの人と話してるんです。」

「君と話をするつもりはないんでね。二人とも、行こう、ここじゃ邪魔が入るだけだ。」


まだ何かヒロインは言っていたけれど、無視して三人で図書館を出る。何であんなにしつこいの。・・・もしかして、『図書館の君』って真也君のこと?図書館って学園の図書館じゃなくて市立図書館のことなの?場所を私の部屋に移して続きをすることになったのだけれど、これは言っておいた方がいいんじゃないかな。


「みちる、真也君にあの話をしよう。」

「え?で、でも真也君に変な子だと思われるよ。」

「大丈夫、元から十分変な子だから問題ない。」

「ひどいよ、奏ちゃん。」

「二人で内緒話?僕にも教えてほしいな。」

「真也君はみちるが本当だって言えばおかしなことを言ってたって信じるでしょ?」

「奏ちゃん!」

「うん、信じるよ。みちるちゃんが本当だって言うならね。」


ほらね。真也君はみちるの言うことは疑わないんだよ。渋々みちるが話し出した。乙女ゲームがわからない真也君にも丁寧に説明した。


「ふーん、で、みちるちゃんはその記憶で誰かを攻略しようとしたの?」


うっわ、怖っ。真也君めちゃくちゃ声が低い。みちるが誰かを攻略とかできないってわかってても、しようとしたら怒るんだよね、全く、まだ真也君の彼女になってないのに。


「前世で?あんまりよく覚えてないんだよね。あ、生徒会長は攻略したと思うよ。」


見事に逸らしたね。これが真也君が怒ってるから誤魔化そうとしてるんじゃないところがみちるの凄いところだ。便乗するわけじゃないけど、話の方向を若干変えよう。


「私は図書館の君っていうのが、真也君だと思うんだよね。」

「僕?」

「ええ!?そうなの!?図書館ってうちの学園のかと思ってた。よくわかったね、奏ちゃん。」

「だって、あの子、しつこかったじゃない?イベントを成功させようとしてたとか、そんな感じ。」

「どんなイベントかは知らないけど、あんな子と仲良くするつもりはないよ。」

「知ってる。真也君、ああいう人嫌いだもんね。」

「そんな嫌な子だったの?」


そっか、みちるは知らない人が話しかけてきた緊張感で何も聞こえてなかったか。大丈夫なのか、みちる。知らない人に話しかけられて固まってるうちに誘拐とかされそうだ。目を離さないようにしなくちゃ。


「丁寧な物言いだったけど、自分が断られることなんてありえないって感じだったね。」

「もう会いたくない。ねえ、これからは勉強は僕のうちでやろうよ。待ち合わせ場所を図書館じゃないところにして、うちでしよう?みちるちゃん。」

「真也君、私もいるんだけど。」

「でもみちるちゃんの方が大変なんでしょ?奏がいない時はみちるちゃんと二人で勉強するんだから、うちに来ればいいよ。」


なんだかんだ言って、真也君はみちると二人きりになりたいのだ。でも、真也君の部屋ってみちるに別の危険があると思うんだけど。真也君をじっと見るが、いつも通り胡散臭い笑顔を張り付けている。いつだってこの笑顔なのだ、もちろんさっきのヒロインに対する時もね。だから余計に怖いんだけど。それが、みちるに対してだけは心からの笑顔だ。笑顔ってこんなに種類があるんだって思う。まあ、普通の人はその違いに気づかないみたいだけど。


「真也君、迷惑じゃない?」

「全然。みちるちゃんが僕を頼ってくれるのなら、こんなに嬉しい事はないよ。」

「もう、ほんとに心配してるんだから、茶化さないでよ~」

「本気だってば。みちるちゃんだけ、特別なんだよ。」

「小学校の時から迷惑かけてるもんね。特別手のかかる子でごめんなさい。でも、甘えちゃっていいかなぁ。」

「もちろん。」


みちるの鈍感さが半端ない。これなら真也君も部屋に連れてってもどうにもできないだろう、うん。




・・・・・・


うう、痛い、痛いって言うか気持ち悪い、気持ち悪いって言うかもう、だめかも。


「奏ちゃん、真っ青だよ。保健室行ってきなよ、先生には言っておくからさ。ついていった方がいい?」

「・・・へいき。保健室行く。先生、お願い」

「うん、気をつけてね。」


頷くこともままならない。いつものこととはいえ最悪だ。口を開けたら吐きそうだ。ただいま絶賛お月様中。女に生まれたことが憎い。頭痛い気持ち悪いお腹痛いがグルグルと回っている。早く保健室に行きたい。そんな私に声をかけてくる馬鹿がいた。


「あ!あなたこの間の!!ねえ、彼とどういう関係なの?ちょっと、目黒真也君とどういう関係か聞いてるんだけど。」


うるさい、きもちわるい。あたまいたい。無視して横を通り過ぎようとした私の肩をつかんでくる。恐らく私は酷い顔色をしているだろうに、全く気にしてないようだ。もう、だめかも。いいんじゃない?こいつに向かって吐いちゃっても。


「大丈夫か?俺に捕まって。」


ああ、声がする。とても安心する声だ。


「いい。何もしゃべるな。保健室まで連れていくから。」


そう言うとひんやりとした手が額の上に乗る。冷たくて気持ちいい。


「少し熱もあるな。この子は俺が連れていくから、教室に戻れ。授業が始まるぞ。」


横抱きにされて、保健室へ連れていかれる。彼女は大人しく2組へ帰っただろうか。保健室に着くとベッドに下ろされる。湯たんぽが入っていた。気持ちがいい。頭には冷やしたタオル。少し時間がたつと大分体調も戻ってきた。頭もすっきりとしてきて、疑問が出る。何で湯たんぽが用意されてるの?


「すみませんでした。ありがとうございます、大橋先生。」


私を連れてきてくれたのはこの保健室の先生、大橋先生だ。


「気にするな。」

「あの、湯たんぽが入ってたんですけど。」

「ああ、今日あたり奏が来るだろうなと思って。」

「・・・人の周期覚えてるとか、気持ち悪い。」

「奏の覚えておくのはもう、義務じゃん。」

「義務って何ですか、変態くさい。」

「でも、毎回症状が重いよな。奏が望むならいつだって生理止めてやるのに。」

「はい、アウトー。学校で何言ってるんですか。」

「一点の曇りもない本心。」

「犯罪だ。」

「犯罪にはならねえよ?その前にちゃんとこれ出しておくから。」


そう言うとクリアファイルに挟まった紙をこちらに見せる。


「・・・何で書類完成してるんですか?」

「いつでも出せるように。」

「まだ提出しないけど、証が欲しいって言うから、私のところだけ書いたんですよね?お守りに持っていたいんだって言ってましたよね?」

「うん。そう言った。でももう奏16歳になったろ?後の空欄部分埋めれば役所に出せるなと思ったら、完成してた。」

「ちょ、完成してたじゃないでしょ。私が預かります。」

「駄~目。ほら、まだ顔色悪いんだから寝てろ。なんなら添い寝してやるぞ。さすがに初めてが学校の保健室なんて嫌だろうから、理性を総動員して我慢して添い寝だけ・・いや、お触りぐらいなら・・」

「一人で寝るのでお構いなく。祐司君、起きたらその書類シュレッダー行きね。」

「大事な婚姻届けだ。奏が寝たらまた隠す。」


本当にどうしようもない大人だと思う。保健室の先生、大橋祐司は私の婚約者だ。一応、ヒロインのことを聞いてみる。祐司君に接触してきたのではないだろうか?


「あの、さっきの彼女のことなんだけど。」

「彼女?ああ、さっきの。女だったっけ?奏しか見てなかったから生徒だなとしか認識しなかったな。」

「その子に言い寄られなかった?」

「お。嫉妬か。珍しいな、奏が妬いてくれるなんて。」

「そ、そうじゃなくて・・・」


みちるから聞いた話をする。すると何やら思い当たることがあるようだった。


「ああ、なんか納得。いきなり会ったことのない女生徒から『先生の悩み知ってます。おうちの病院に入るかそれ以外の病院に行くのかお悩みなんですよね?』とか言われたことがあるんだ。そんなのとっくの昔に解決してるし、誰かと間違えてるんじゃねえかと思ってたんだけど、そう言うことか。」

「祐司君、そんなこと悩んでたことあったの?」


初耳だ。


「ああ、かな~り前な。奏がさくっと解決してくれた。」

「え?私?」


全く身に覚えがないんだが。祐司君はやさしく笑うと頭をなでてくれる。


「そんなことより、早く寝ろよ。そんな顔色悪いと、こっちが辛い。」

「う、うん、寝ます。おやすみなさい。」

「おう。」


私はゆっくりと眠りに落ちていった。


「こんな具合の悪い奏につっかかるとか、どうしてやろうかと思ったけど。嫉妬する奏なんて滅多に見られないもの見せてくれたのは感謝だな。でも、それとこれとは話が別。あの女が奏の傍に近づけないようにしなくちゃな。」


祐司君が悪い笑顔とともにつぶやいた言葉を私は聞かなかった。

奏と祐司の会話がR15かなと思って、タグにつけました。


番外編をかけたらいいなと思ってますが、一旦完結にします。


読んでくださってありがとうございました。

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