第一層 無責任な咆哮
適当に思い付いたお話です
不定期で投稿して行きます
更新頻度は低いです
灰色のビル。自動ドアが開くと、そこは精神を削るためだけに設計された巨大な迷宮だ。
受付では「おはようございます」という形だけの挨拶が、意味を失った呪文のように飛び交う。
「――またか。」
タイムカードを切り、冷え切ったフロアに足を踏み入れる。
ここは、まともな人間が無頓着な生き物へと退化していく場所だ。
【ボス猿のマウンティング】
フロアの奥から、けたたましい怒声が響く。
課長――通称「ボス猿」。
声の大きさと役職という名の序列だけで周囲を威圧する男だ。
「おい! もっとやる気出せ! 気合だ、気合!」
投げつけられるのは、実体のない“やる気”という名のデバフ。
空気を濁らせ、同僚たちの集中力をじわじわと削っていく。
濁った目でパソコンに向かい、不衛生な残業という泥を捏ねる彼ら。
【責任のワープパネル】
私のデスクに、一通のメールが届く。
「これ、午後の会議までに資料にしておけ。君の成長に期待してるぞ」
ボス猿からの責任転嫁――名付けて“ワープパネル”だ。
内容は矛盾だらけ。まともに取り合えば、休憩時間を失う罠になっている。
だが、私は止まらない。
感情を切り捨て、迷宮の構造(社内規定と責任の所在)を俯瞰する。
【攻略者のカウンター】
キーボードを叩く手を止め、猿ボスのデスクへ歩み寄る。
怒る必要はない。ただ、研ぎ澄まされた「事実」の刃を抜くだけだ。
「この指示、前回の部長判断と矛盾しています。このまま進めればプロジェクトは破綻します」
「なんだと? そこを『なんとか』するのがお前の仕事だろうが!」
ボス猿が顔を真っ赤にして挑発してくる。
動じない私はさらに続ける。
「無理な指示で損失が出れば、責任はあなたに帰属します。このやり取り、BCCで部長と人事にも共有しておきます」
フロアに静寂が訪れる。
“期待”という言葉で他人を動かそうとしていた猿は、自分の首が絞まったことを悟り、黙り込んだ。
今を生きる
淡々と事実を突きつけるだけで、不毛な罠は解除される。
ボス猿は舌打ちをして、別の獲物を探しに席を立った。
私はデスクに戻る。
会社への忠誠も、上司への怒りも、自分への期待もない。
ただ、この不衛生な会社を、自分を汚さずに通り抜けるだけだ。
窓の外、ビルの隙間から冬の青空が見えた。
それが何を意味するのかはわからない。
けれど、猿の咆哮よりも、ずっと確かな“今”だった。
今日もまた、新しい一日が始まる。
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