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【ナレッジラウ】に一隻の船が到着した。

その船から一人の男性が降り立ち、【ナレッジラウ】の唯一の門までやってくる。ノーシと名乗る少女がいた時とは違う門番がその男性の姿を見つけると一礼を済ませ、中へと指示を出した。

周りを城壁で囲む門は、巧みな仕掛けによりきりきりと鉄がこすれ合う。数秒の時間を要して門が開閉すると、法が厳しい国へと入国した男性は中で待ち構えていた一人の兵士と向き合う。

「計画は順調でしたか?」

鍛え上げられた肉体を鎧で守り、野太い声でそう言った兵士はローヤルの部下である。何やら不審な気配を帯びたその質問に、入国してきた男性は一言で返す。

「ええ」

計画は順調に進み思い通りに動いている。それ以上でもなくそれ以下でもない事実に兵士は太い腕を組みにやりとほくそ笑む。だが、男性の表情には笑みがないことを不審に思い、笑んでいた兵士は尋ねる。

「何か心配事でも?」

「いえ、メイクスに関してですが」

その発言で何か思い当たったようで兵士は、「ああ」とだけ零すと、思い当たることをはっきりとしたもので表した。

「メイクスの噂ですか。本物が来たという噂を誰かが流したようですが、そこまで順調にいったら、この計画を疑いたくなりますがね」

それ以上でもそれ以下でのないと伝えたはずなのに、順調とはどういう事かと男性は兵士を見た。

「実は、その噂が流れたことで姫様が【自由な国】へと出て行かれました」

「姫様がっ!?」

「ええ、民にはその事実を知られないようにしておりますし、あなたの計画に乗った我々は国を守る名目で残りました。よって、今この国にはローヤルの部下は数えるほど、いよいよあなたの、そして我々の計画が本格的に動き出します」

「それは結構な事ですが、姫様の動向を留めずローヤルの部下に知られたりはしていませんか?」

順調だと言う割に兵士の仕事としても、計画に加担する協力者にしてもおざなりな仕事ぶりに呆れながら男性は問いただす。

「何を仰います。仮に知られてもあの国へ帰って来るには最短でも数日は掛かるうえ、奴らはあなたに逆らえなくなる」

さらに当初の計画ではそうなるのはもう少し後の話だった。勝手に計画を変更するのは気が向かないが、仕方がない事だった。兵士の言うとおり、姫がいないと言うことは一切の邪魔が入らないと言う事、この機会をみすみす逃すのは他になにかあると疑われる。

「分かりました。本来では王族しか閲覧できない書物を読みたいところではありましたが、この機会を逃す理由はありません。ですが、計画は少し変更させていただきますよ」

少しでも計画に変更が加えられたならそれ相応に変化は生まれる。よって兵士はそれを素直に受け入れた。

「なんなりと」

兵士もバカではないが、計画を練るだけの能力に長けていない。長けていたのなら部下になど成らずローヤルと同等の立場を有しているはずだ。だからこそ男性は兵士に協力するよう計画の話を持ちかけたのだ。

「これから私は準備に入ります。準備が整い次第、すぐにメイクスがいる国へと向かいます」

腕では引けを取らないがゆえ、ローヤルに、そしてこの国に不満を持った兵士を男性が利用する。

「ふふ、そうでしょうな、もしメイクスが本物ならばあなたもすぐに戻りたいでしょう。では、その間に部下を収集しておきます」

「ええ、それと不振に思われないよう、メイクスの世界に行くための可能性を残している書物を、この計画に参加していない兵に守らせてください。といっても、この国に残せば勝手に守ってはくれるでしょうが」

「くっくっく、そうですな。我々はこの国への不満を改善し、あなたは新たなる世界へと消える目的でしたからな。では、そのように指示を出しましょう」

「ええ、お願いしますよ。今はまだアグリ隊長」

「では、次に会う時は神の姿でお会いしましょう」

まだ下の階級でありながら隊長と呼ばれた途端、アグリという名のローヤルの部下は上機嫌になり同じくその男性をこう呼んだ。


「今はまだノーリッジ国王」


アグリが兵隊達を収集し反逆への準備を整えに消えていく。その姿を見ることもなく歩き出したノーリッジは聞こえぬような小声で呟いた。

「醜い男だ」

そして、ノーリッジは己の計画を遂行するため、本来姫が住まう城の中へと消えていく。

アグリが言う、神の姿へと変身するために――。

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