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序列六位と七位 嵐の入札

「序列六位、ルーク・レギナルド」


俺の名前が呼ばれた。


一拍、間があった…


7歳。

その事実が、三派閥の代表の手を止めた。

一位から五位まで玄狼衆に全員持っていかれた後だ。

疲弊と警戒が混じった空気の中、誰も最初の一手を打てなかった…


蒼穹会の代表が、恐る恐る口を開いた。

「……200枚」


値段ではなかった。

様子見だった。7歳の最下位上がりに、とりあえず旗を立てた。


玄狼衆が動いた。


「400」


ぴったり倍だった。


会場が、一瞬だけ静まった。

誰かが小声で言った。「倍か」


紅炎団が「600枚」を出した。


玄狼衆。


「1200」


また倍だった。


会場がざわついた。

600枚に対して1200枚…

ぴったり二倍…

偶然ではない、という空気が広がり始めた。


蒼穹会が「1500枚」を出した。


玄狼衆。


「3000」


会場が揺れた。

1500枚の倍。3000枚。

7歳への入札が、3000枚に達した。

誰もが、耳を疑った…


紅炎団の代表が立ち上がった。

「……何のつもりだ」

声に感情が混じっていた。

倍々で値を上げる玄狼衆の意図が、まったく読めなかった。


シオン兄上は、書類から目を上げなかった。

紅炎団の代表の声が、その背中に届いているはずだった。

しかし反応しなかった…

返答しなかった…

ただ次の値を待っていた。


その沈黙が、答えよりも重かった。


紅炎団の代表が、3300枚を出した。

意地だった。

倍を崩すための、わずかな上乗せだった。


玄狼衆。


「6600」


3300の倍…


静寂が来た…


今度は本当の静寂だった。

誰も声を出さなかった。

出せなかった…


6600枚

7歳への入札額が、6600枚に達した。

先ほどヴィクターへの最高値が4200枚だった。

三位の実力者への値を、7歳が遥かに超えた。


会場全体が、玄狼衆のシオン兄上を見た。

シオン兄上は、書類を見ていた。

この場の異様な空気を、まるで気にしていなかった…

あるいは…

最初からこの空気を、作るつもりだったのかもしれなかった。


白鷺閥の代表が、小声で隣に言った。

「やめておけ。あれは値段の話ではない…」


蒼穹会が引いた。紅炎団が引いた。


ルーク・レギナルドは、玄狼衆に落ちた…


俺は表情を変えなかった。

しかし胸の中で、静かに整理していた。


倍…

毎回、倍をつけた。

それは値段の競りではなかった…

他の派閥に対する、無言のメッセージだった。


「お前たちが出す数字の意味など、俺には関係ない」


という意思表示だった。


6600枚

7歳の俺に、シオン兄上はそれだけの値をつけた。

それが何を意味するのか。

まだ、完全には掴めていなかった。


「序列七位、エド・カスパー」


紅炎団が、素早く立ち上がった。


エドの剣術は、学院全体に知れ渡っていた。

基礎学習の二年間で、上級生を含む実技訓練でも遅れを取らなかった。

紅炎団にとって、エドは最優先で欲しい人材だった。


「1500枚!」


序列七位への開始値としては、破格だった。

紅炎団の本気が、最初の一手から出た。


白鷺閥が「1800枚」を出した。

蒼穹会が「2200枚!」と言った。


三派閥が一斉に競い始めた。

七位のエドへの入札が、異様な速さで積み上がっていった。


紅炎団「2600」

白鷺閥「2900」

紅炎団「3300」


3300枚

ヴィクターへの価格に迫る数字だ。


玄狼衆は、まだ動いていなかった。


蒼穹会が「3700枚」を出した。

紅炎団が「4000枚」


三派閥が、完全に本気になっていた。

エドへの期待と欲求、六位まで全て持っていかれてる焦りが値段に出ていた。


会場がざわついた…

上級生の中にも、声が漏れた。

「序列七位にこの値か…」

「もう正気の沙汰ではない…」


蒼穹会「4500枚」


紅炎団の代表が、額に手を当てた。

値段の話ではない。

玄狼衆がまだ動いていない、その不気味さが、判断を乱していた。


紅炎団「…4、4900枚、頼む…」


その瞬間…

玄狼衆が動いた。


「6000」


会場が、凍った。


6000枚

一位ラウルへの落札額3300枚の、ほぼ倍だ。

ヴィクターへの4200枚をも遥かに超えている。

序列七位の入札が、6000枚に達した。


三派閥が、全員止まった…

もう心が折れている…


紅炎団の代表が、口を開きかけた。

しかし、シオン兄上の目が、その代表を一瞬だけ通過した。

温度のない目が、ただそこに在った。


紅炎団が引いた…

蒼穹会が引いた…

白鷺閥が引いた…


エド・カスパーは、玄狼衆に落ちた。


エドが、初めて表情を動かした。

驚きではなかった。

何かが腑に落ちた顔だった…

俺を横目で見た。

俺は小さく頷いた。

後で話す。


会場が揺れていた。

上級生のブロックから声が漏れ続けていた。

「序列七位に6000枚とは…」

「…玄狼衆は何を考えている」

「あの新入りたちの何が見えているんだ…」


三派閥の代表の顔に、明らかに疲労感が漂う…

一位から七位まで、全員を玄狼衆に持っていかれた。

しかも最後は6000枚という値で、競争の意志、そのものを叩き折られた。

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