帰還、そして始動
どこから手をつければいいのか…、全くわからない…。
馬上では、ずっとそのことを考えている…
ブレストのコイン、ランブルグの顔、キングマリンの割り込み、9国の署名…
全てが、うまくいった…
そのはずだ…
なのになせか全然、すっきりしない…
ヴィクターが横を見ているが、気にしている。ラウルが後ろから、こちらを気にしている。エリカが前を向いたまま、耳だけこちらに向けている。
誰も声をかけない様に、俺を気にしている。何より、邪魔しないようにしている。
それでいい。ありがたい…
今は、1人で考えたい。
王都に入っても、すぐには動けなかった。
広場の端に馬を止め、石段に腰を下ろす。
「皆、悪いが先に行ってくれ」
皆、理解してくれ、全員が散った…
子供が遠くで走っていて、笑い声が聞こえる。普通の王都の昼だ。
3連の首飾りを触る…
ここに戻ってきている。
しかし、何かが足りない気がする。戦い終えた達成感のようなものが、どこにもない…
なぜだろうか、どこかひっかかる…
子供の笑い声が、また聞こえる。
俺はこの子たちのことを、ちゃんと考えていたのか? 北伐で戦い、会議で言葉を戦わせ…、この街の人たちのことを、本当に考えていたのか?
頭ではわかっているのだが、しかし心では、ずっと、戦いのことだけを中心に置いて、考えられていたのか…
それが、すっきりしない理由かもしれない。
父王への謁見に参加した。
全部話す…
会議のこと…
ブレストのコインのこと…
キングマリンのこと…
掴んだ3年間の休戦のこと…
父王が静かに目を瞑り、聞いている。
話し終わると、父王が少し間を置く…
「ルークよ…」
「はい…」
「お前が作ってくれた陣形と軍の強化、それについては、ワシに任せよ…」
「父上が…」
「そうだ…」と父王が言う。「軍はワシが育てる。その間、1年目はお前たちが武器を作り、国を拓き、財を育てろ…。2年目は人材を獲れ。武将と、軍を動かせる者を…。そして3年目に、ワシが育てた軍とお前たちで、本当の意味で一つにしていく…」
「いつからお考えだったのですか?」と俺が言う。
「お前が北伐へ発った日からだ…」と父王が言う。
俺が、黙る…。
北伐に発った日から、考えていた…
あの時の俺は10歳で、父上に心配をかけているとは思っていた。しかしそうではなく、こうなる事を予見されていた…、父上としては、まさか、こんなことになるまで感じておられたのか…
「お前の、お前たちの親の仕事をさせてくれ…」
胸が、熱くなる。
言葉が出ない…
「ありがとうございます、父上…」と俺が言う。声が少し掠れた。
「礼はいらん…」と父王が言う。「お前はワシに代わり、結果を出せ」
父王が、静かに立ち上がる。
その背中を見ながら、俺は思う。
1人じゃない…
ずっと、 1人じゃなかった…
夜、部屋に戻る…。
机に向かい、紙を取る…。
書こうとして、止まる…。
もう一度書く前に窓を開ける…。
王都の夜景が広がっている、灯りが点いている、どこかで笑い声がする…。
昼間の子供の声が蘇る。
俺はこの街のために、戦っているのか?
戦っている…
戦わなければならない…
しかし、戦うだけでは足りない。
この灯りが消えないように、あの笑い声が続くように…
それが、本当の理由だ。
3連の首飾りを触り、
「行こう、やるしかない…」と俺が言う。
静かに…、しかし、決意を持って…




