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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
北伐 龍は北へ向かう

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闘争と闘走

 互いの消耗が、目に見えてきた…


 バロックの額に汗が滲んでいる。双剣を握る腕が、わずかに重くなっている。その目は、油断なく全死んでいない。


 ブレストの腕の傷が深い。血が流れている。しかし体が揺れない。剣を握る手が、震えていない。


 周囲の兵たちが遠巻きに見ていた。誰も近づきはしない。とても近づける空気ではなかった。2人の間に張り詰めたものが、見えない壁になっていた。


 剣が交わり、弾かれ。また来る、受ける、押す、引く…


 止まらなかった。


「バロック…」とブレストが言った。剣を交えながら。


「何じゃ…」


「お前は、わしが裏切られた話を、どこまで知っておるのじゃ?」


「少したった後に噂だけだ…」とバロックが言った。「詳しいことは知らん…」


 ブレストが「では、話してやろう…」と言った。

「その気はないが、ここが最後かもしれんからな…」


「わしは最後にするつもりはないが…」とバロックが言った。


「わしもだ!」とブレストが言った。

「しかし、まぁ話したい…」


 剣が交わる。その音の中で、ブレストが語り始めた。


「わしが将軍になった頃の話だ…」


 バロックが聞いた。剣を受けながら。


「わしは奴隷に近い、一兵卒から始まった。誰にも信用されなかった。いやされてなかったようだ、しかし戦えば、誰よりも『生き残った。』、気づいたら隊長になっており、副将になり、あれよあれよで、将軍になっていた」


「まぁ、聞いた噂と同じだ」


「ああ…、仕えた将軍が、わしを認めた。初めてだったよ、誰かに認められたのが…」


 ブレストの剣が重くなった…

 バロックが受けた。


「それが間違いだったのか?」とバロックが言った。


「そうだな…」とブレストが言った。

「出世するほど、仲間が変わった…。かつての仲間が遠ざかった…。あいつは危険だ、あいつがいると、わしらの出世がない…、そういう目で見られ始めたのだ…」


「気には、しなかったのか?」


「気にはしなかったな、まぁ気にもしないで満身して戦っておったのだ…」とブレストが言った。「何より戦えばいい。それだけだと思っていた…」


「ある夜、呼び出されたのじゃ…」


 ブレストの声が、わずかに変わった。


「話がある、と…」


「信じたのか、まぁ普通なら信じるわな…」とバロックが聞いた。


「信じたというか、何も気にせずに行っちまったという感じだ」とブレストが言った。

「その一瞬が、緩んだ若いわしの唯一の油断だった、今や教訓だわな…」


 剣が止まった。


 一瞬だった。


 2人が向かい合ったまま、止まった。


「背中から、何の前触れもなく来た…」とブレストが言った。

「今も背中に残るが、一本ではなかったの… 全くわけがわからず、そして何本も来た… 仲間と思っていたやつから死ねと言われた。」


 バロックが何も言わなかった。


「瀕死で逃げた。後ろからまた刺されて切られてするのか思いながら、自分でもどこへ向かうか… 覚えていたのが、ただ北へ走っていた… 倒れ、起き上がり、倒れて、また走った…」


 ブレストが剣を再び構えた…

 バロックも構えた。…


「北の蛮族の地に辿り着いた時、泥で真っ黒で、もう声も出なかった…、奇跡的に回復して、そこでも戦って見せた。そしてのし上がった…」


「それで、今のお前になったというのか…」とバロックが言った。


「そうだ…」とブレストが言った。

「もう切られるのは嫌での、誰も信じなかった。しかし、 戦えば認められた。それだけは変わらなかったな…」


 剣が再び動き出し、何かが変わっていた。


 2人の動きが、少しずつ重なって見えた。若い頃の2人と、今の2人が、同じ場所で重なるようだった。


 焚き火の前の若いバロックが、今の白髪のバロックと重なる。


 「生きるためだ。それだけだ」と言った若いブレストが、傷だらけの今のブレストと重なる。


 あの夜、2人が向かい合った。今、2人が向かい合っている。


 同じだった…


 場所が違う。年齢が違う、傷の数が違う…

 しかしその目だけは、変わっていなかった…


 鍔迫り合いになった。


 バロックの双剣とブレストの大剣が、押し合っていた。どちらも動けない。どちらも引けない。


 力と力が、真正面からぶつかっていた。


 バロックが「お前は強くなったな…」と言った。


 ブレストが「お前もな…」と言った。


「あの夜と、同じ言葉であるな」とバロックが言った。


 ブレストが「そうであるな…」と言った。


 どちらも笑わなかった。目だけが少し、緩んだ。


 押し合いが続く…


 消耗が著しい…


 しかし止まらない…


 戦場全体がまた、静かになっていた。誰もが2人を見ていた。次の瞬間、何かが起きる。その予感だけが、戦場に漂っていた。


「法は貴賤を論ぜず、縄は曲直を択ばず…」

ーー韓非子ーー


法は身分を問わない。

縄は曲がりを選ばない。

ブレストは戦争孤児であった。

誰にも信じられなかった。

戦場では、身分も出自も関係なかった。

強い者が生き残った。

そしてブレストは、生き残り続けた。

バロックとの鍔迫り合いの中で、その重さが、押し合う剣に乗っていた。

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