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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
番外編

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それぞれの頂点

俺は、剣術トーナメントの出場者名簿を、前日から3回確認していた。


エドの対戦相手を全員分析した。

動き、癖、利き手、過去の試合記録。

全部頭に入れた。


そして、俺自身の分析もした…


結論は明確で、エドに勝てる確率は……

ほぼ0%だ。


しかし、だからといって、手を抜くつもりはなかった。


隣でニコラスが「……ヴィクター、大丈夫ですかね。俺たち、全員負けますかね?」と言った。


「……可能性は高い。」


「やっぱりそうですかね……。ニコラス、昨日眠れなかったですよ……」


「……試合前に眠れないのは普通だ。」


「ヴィクターは眠れましたか?」


「……無論、眠れなかった。」


「やっぱりそうですか……!!」


ニコラスが頭を抱えた。

こいつは本番に強いのに、なぜかいつもこうなるのか…



エドの試合が始まった。

なんで試合をしようとラウルが言ったのか…


一回戦、相手は剣術が得意な五年生だった。学院で五本の指に入ると言われている。


試合前から大いに盛り上がっていたが、試合開始から……8秒で終わった。


観客が度肝を抜かれて、静かになった……


誰も笑っていなかった、笑う間もなかった…


「速すぎて見えなかった…」とラウルが言った。

そもそも学院にいた時から圧倒的なエドにお前はなぜ「今なら勝てる!」と思ったのか…

「……エドは相手が構えた瞬間に、三手先まで読んでいた。最初の一手を、相手が動くより先に打った!」


「それってエドの一手遅れる癖が治ったってこと?」


「それはルーク殿下の話だ。エドは別の変化がある」


「どんな変化?」


「……剣が、前より重い、さらに重い…」


ラウルが「重い?何それやばいじゃん…」と首を傾げた。


「守るものを意識した時、人の剣はさらに重くなる。重くなった剣は、振り抜きの速さが増す。エドの剣は1ヶ月前より、確実に重く速くなっている…」


ラウルが「……なんかよくわかんないけど、やべーけど、かっこいい!」と言った。


マルティンが、静かに「剣が重くなると速くなるの、弓も同じだな…」と言った。


全員がマルティンをゆっくり見た。


「……マルティン、弓やるのか?」と俺は聞いた。


「うん。矢が重い方が、風に流されにくくて、結果速く届く。肉も、厚みのある部位の方が、旨味が逃げにくくて、焼いた時に…」


「待て!!」

「なぜ、肉の話になった?いい話だったのにお腹が減るだろう?!」とラウルが言った。


「……すまん」とマルティンが言った。全く反省していない顔だったし、ラウルもラウルだ…


ヴォルフガングが、静かに言った。

「…でも、エドの剣が重くなったのって、守るものができたからだろ?」


全員が、少し静かになった。


「…そうだな」と俺は言った。


「根付、だよな、たぶん…」とヴォルフガングが言った。

「あのエドが鞘に付けてるやつだよ。」

ヴォルフガングが、何でもないことのように言った。


誰も何も言わなかった。


ニコラスが「……ヴォルフガング、それ今言う?」と言った。


「え、違う?」


違わなかった。だから誰も答えられなかった。



女子体術の会場では、ミア様の試合が始まっていた。


俺は二つの会場を交互に見ていた。


ミア様の動きは、独特だった。


軸がぶれる。1ヶ月前と変わっていない。しかし、ぶれた瞬間に、相手の予測を外していた。


「あれって…」と、ニコラスが「意図的にやってるんですかね?!怖いですね…」と言った。


「……半分は意図的、半分は天然だと思う。後は体感を鍛えての、両方の覚醒…、一体どんな修行を王都でしてるんだ?」


「どっちが怖いですね…」


「……両方怖い」


「ですね……!!」

ニコラスが震えた。


二回戦、ミア様の相手が踏み込んだ。

ミア様がブレた瞬間に、相手が「え?」という顔をした。

その一瞬に、ミア様が動いた。


「わわわ!!」という声がして、相手が転がった。


観客が笑った。


ミア様が「大丈夫ですか!?」と相手に駆け寄った。相手が「……大丈夫です」と言いながらも笑っていた。


「……ミア様は試合中も優しいな」とヴォルフガングが言った。


「それが、一番やりにくいんだよな…」とラウルが言った。


「なんで?」


「怒れないじゃないか。転ばされても優しくされたら…」


ヴォルフガングが「あ、そっか…」と言った。本当にわかったのかどうか、顔では判断できなかった。



準決勝、エリカ対ミア。


エリカが、俺の隣に来た。

試合前だというのに、表情が変わっていなかった。


「……エリカ」


「……はい」


「……分析は終わったか?」


「終わりました。ミア様の軸のブレは 左に6割、右に4割。踏み込む時は必ず右足が先。それを全部対策してきました…」


「……それで勝てると思うか?!」


「……思いません。」


エリカが、少し間を置いた。


「でも、全力でいきます。分析してきたものを全部ぶつけます。それが私に出来る事です。」


エリカが試合場に入った。


ミア様が「エリカ! 今日は本気で行かせていただきますよ!!」と言った。


「……私もです!」とエリカが言った。


試合が始まった。


エリカが、凄まじく速かった。本当に速かった。ミア様のブレを全部読んで、踏み込みを全部対策していた。


ミア様が「うわ、読まれてる!!」と言いながら動いた。


「……喋ってる場合ですか!!」とエリカが言った。


「でもエリカ、めちゃくちゃ速くなってるよ!! この1ヶ月で!!」


「……ですから、喋るなと言っている!!」


「いや本当に! すごい!!」


エリカが、一瞬止まった。

「……あ、ありがとうございます」と思わず言ってしまった…


その瞬間、ミア様が動いた。


エリカが、地面にいた。


観客が、ワッと歓声になった。


「……喋りながら戦わないで下さい。」とエリカが天井を見たまま言った。


「ごめんね…、でも、本当に凄く速くなってたよ!!」


「……わかりました。次はもっと速くなります!」


「うん!! 一緒に頑張ろう!!」


エリカが、少し目を細めた。

それだけだった。


ラウルが「エリカも笑えよ!!」と叫んだ。


エリカが「……うるさい」と言った。

でも、少し、口角が上がっていた。



剣術決勝、エド対ヴィクター。


俺は構えた。


エドが、真っ直ぐこちらを見た。

目が静かだった。


ニコラスが観客席から「ヴィクター、頑張って下さい!大丈夫ですかね?!大丈夫じゃないですかね?!とにかく頑張って!!」と叫んでいた。


うるさい…

しかし、嫌いじゃなかった。


試合が始まった。


俺は最初から全力で打ちに行った。

分析した全てを使って…

エドの癖、呼吸のリズム、利き手の動き…

全部頭に入れてきた。


三合だった…


三合目に、俺の剣が弾かれた。

体勢が崩れた、次の瞬間に木剣が喉元に止まっていた…


「……参った」と俺は言った。


エドが木剣を下ろした。「三合、持てた…」


「……それだけか」と俺は言った。

「勝ったのに…」


「……王都ではいつも修行で騎士団長相手に三合が精一杯だった。今日は、もう少しいけた気がした。でも、まだ足りない。」


エドが首を振った。


俺は、少し呆れた。


三合で制した男が「まだ足りない」と言っている。

どこまで行くつもりなのか…


「……次は四合にする」と俺は言った。


エドが、少し目を細めた。

「……来い」


それだけだったが、それで十分だった。



3会場の結果が、揃った…


体術:ルーク優勝

剣術:エド優勝

女子体術:ミア優勝


誰も驚いていなかった…


ニコラスが「……やっぱりそうでしたね…。でも、三合持ちましたよ、ヴィクター!!」と言った。


「……ありがとう。」


「大丈夫でしたね!!」


「大丈夫ではなかったが…」


「でもエド相手に三合ですよ!! 凄くないですかね?!」


マルティンが「三合って、普通は他のやつ同様に一合で終わるんだよな」と静かに言った。

「腹減った…」


「今か?」とラウルが言った。


「……うん」


ヴォルフガングが、全員を見渡して、静かに言った。

「……みんな、全力でやれたよな。」


全員が、黙った。


「それでいいんじゃないか」

その一言が一番、正しかった。

俺たちも、もっと頑張らなくては!!

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