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第90話 この夜は、貴方へ



〜前回までのあらすじ〜


カルマとノワルは、持久戦に持ち込めば自分達に分があると判断し、遠距離からの攻撃を続けていた。


続く戦いにメロやアディッカも疲弊し始め、城護を除いた人間は徐々に押され始めた。

センヤに追い打ちをかけるように空が白み始め、真血解放状態が間もなく解けてしまう時、ノワルはセンヤを煽り立てる。

焦るセンヤは2人を倒す為、一気に距離を詰めるが、それが2人の狙いであった。

ノワルが地中へと仕込んでいた『鏡光水晶・光天乱射』と呼ばれる太陽石のクリスタルが出現、それらは一斉にセンヤへと向け、眩い光線を発射した。



このままでは太陽の力を持った光線に焼き尽くされてしまう……しかし、それを既に読んでいた者がいた。

それは誰もが予期せぬ者────サナであった。


彼女は自身に芽生えた予知能力を使い慣らし始めており、自分だけが今、この状況に対応出来る事を知っていた。


予知で知り得た自分の使える魔法『紅蓮繚乱』を使い、センヤを守りきったサナは、カルマとノワルの前へと踏み出す。


「この戦いを、終わらせに来たのです!殺すだけの剣に、護る為の剣は負けません!センヤ様の剣は、明日へと繋がる希望になるんです……!!」


自身の信ずる力を否定され、激高したカルマは、センヤの『終告げる紅薔薇』が間に合うより先に『雷響』をサナへと振り下ろす。


しかしその瞬間、覚悟を決めた少女の身体は、誓いの黒炎へと包まれた。







「死ねェェェェェェェェェェッッッ!!!!──────ッ!?」




カルマの振り下ろした雷響の切っ先は、サナの纏った黒い炎を確かに斬り裂いたが、彼は何かを斬ったような感覚を一切感じなかった。

それどころか、サナを包み込んだ黒い炎は、周囲の荒々しい状況とは裏腹に、明るく、暖かな雰囲気で揺らめいている。

炎の中……時間にして数秒、彼女はほんの一瞬、夢を見た。







サナの知っている『誰か』と、サナは温かな草原に立っていた。





『貴方は……『サナ』となったのですね。ふふ……その先の未来を、私は観測する事が出来ません。あの『王』の存在は、私でさえ予測しえぬ特異なる現象……』




『あ……貴方、は……?』




『私は…………いえ、きっと、貴方が貴方を知った時、貴方は私を思い出すでしょう。それは必然、なんです』




『必然…………?』




『どうか、貴方のこれから歩む道行きが、幸せに満ちた旅路でありますように……そして、リラを……どうか…………』







柔らかな草原の中、まばゆい日差しが徐々に強くなり、サナと『誰か』の姿が光の中へと消える。

夢から醒める直前、サナはその『誰か』にとても懐かしい感覚を覚えた。

完全に夢から醒めた後、覚えていたのは、女性の声だったと言う事、『リラ』という名前、そして……『リラ』の名前を話した時、その声はとても悲しそうな声だったと言う事…………

不思議な事に、『誰か』の姿を思い出そうとしても、どうしても思い出す事が出来なかった。

しかしサナの今やるべき事は、夢を思い出す事ではない、この現実を変える為、未来へと進む事である。

意思が、想いが、全身を流れるこの血が、紅く、熱く、燃え上がる。




「私たちは、終わらぬ未来へと進む──────」




黒い炎が爆ぜると、なんとそこにはセンヤと同じ黒翼を得た、紛れも無いサナの姿があった。

別の生物から吸血鬼へと変化した者は、吸血鬼特有の翼が存在しない。

しかし『真血解放』へと目覚めた時、その身体は真の吸血鬼として変化し、新たに生まれ変わるのであった。




「これが私の『真血解放』……夜を紡ぐ力……!!」




「……なッ!?馬鹿な!有り得んッ!!」




「2人目の解放者だとッッ!!ズルいッ!!」




今まで誰もが経験した事の無い現象が、戦場に存在する全ての生命に降り掛かっていた。

なんと、白みかけていた空が再び暗さを増し、じわりじわりと夜へと逆行を始め、再び昇り始めた月は禍々しくも、美しい紅色へと変わっていた。




「夜は終わりません、終わらせません!!センヤ様、私の血を!」




「……ありがとう……!!サナ!!」




サナの首筋へと、センヤは牙を立てる。

彼女の血が喉を通り抜け、『解放者』と『解放者』の血が交わった時、周囲の大気を揺るがす程の魔力が、2人の周囲へと渦巻き始めた。




<測定値:エラー……複数回表示される場合、対象の魔力が極端に強大、或いは故障の可能性があります。定期メンテナンス……>




カルマの視界に表示される魔力測定機能は切っていた筈だが、それは余りにも強い魔力を感知して、際限なくエラーメッセージを視界に吐き出す。

少し前、センヤの姿に魔力の『鬼』を見たカルマは、それは魔力測定値の誤作動によるものだと認識していた。

しかし、制御を受け付けない測定機能の回路を無理やり遮断した今、その判断は誤りだったと理解した。




「俺は今、何を見ている……!?」




「ヌゥッ……!!や、やはりアレは……!!!」




どうやら隣に並ぶ魔将も、自身と同じモノが見えているらしい。

我々の目の前に立つ男、それは最早、先程まで我々が知っていたモノとは次元が違っていた。

そこには、巨大な魔力の渦が鬼の姿を取り、今まさに、カルマとノワルを喰い尽くさんと大口を開け、血が滴る牙をこちらへと向ける、異様な光景が存在していた。




「エラーではない……あの鬼は、俺達の目の前に実在している……!!」




国跡から遠く離れた沖合から確認した時ですら、視界にノイズを走らせるセンヤとノワルの魔力量に興奮したカルマだったが、今はそのような事を考えられる余裕など微塵も存在しなかった。







「どこまでも世界は非情だ……だからこそ、人は人に手を差し伸べ、優しさを分かち合う事が出来る……!!」




「ノワル、カルマ……死の上に更なる死を重ねるだけの貴様達に、夜明けが訪れる事は無い……貴様達へ訪れるのは、俺が告げる『終』だけだ」




駄目押しと言わんばかりに、センヤは支部長のリリーから貰っていた、魔力が詰まった『魔丸』全てを、片手で握り潰した。

人間より魔力を貯め込んでおける吸血鬼ですら、魔力の過剰供給により倒れ、最悪死に至る程の魔力を吸収するが、今のセンヤに魔力の底など存在しなかった。




『────感じるか!紅月千夜!!己が内に眠る我が力を!!そして貴様自身の秘めた力を!!貴様が望む果てなき我道(がどう)を進め!!貴様にはその力がある!!』




『我が成しえなかった貴様の未来(さき)へと繋がる力を見せよ!さぁ、我を超えて行け(・・・・・・・)!!!』




センヤの内に眠るヴァスターリアが、センヤへと昂る声音で語りかける。

自身と同じ様で、全く異なる存在であるセンヤの示す新たなる道行に、彼は心臓を高鳴らせていた。




「センヤ様、私もお手伝いを!!」




センヤの傍らに立つサナは、再び盾を炎に変え、センヤの異常な魔力に周囲の味方を巻き込まないよう、センヤと自分、カルマ、ノワルを取り囲む様に炎を発生させた。

センヤから発せられる魔力は非常に強く、その恩恵を受けたサナの『紅蓮繚乱』はかなりの威力を誇り、外部からの侵入、そして内部からの脱出を完璧に妨げていた。




魔力の鬼は紅蓮の嵐となり、その嵐を纏うセンヤへと力を与える。

その途端、彼の魔力で出来た鎧はバキバキと音を立て、徐々に禍々しい形へと変貌を始めた。

修羅の如きその姿はノワルとカルマの2人に、自分達の想像を超えた生物への畏怖と、すぐ側まで訪れている死の存在を認識させるには十分過ぎる程であった。







『ウウウウゥゥゥゥゥゥッッッ……!!!!ォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッ!!!!!』




大地を、大気を、生物を。

デュラハルド大陸に存在する全ての生命を、腹の底から激しく打ち鳴らす紅鬼の咆哮が大陸中へと響き渡った。












サナが『真血解放』へと至りました。

センヤは夜を統べる力、そして彼女は夜を紡ぐ力です。

長時間は持ちませんが、少しだけ夜を続かせる能力であり、昼からいきなり夜へと変える事も可能です。

なので能力を発動させる為に、例外的に彼女は昼でも一瞬だけ『真血解放』を使う事が出来ます。



しかし、昼間からいきなり夜へと変える場合、夜明けから夜を延長させる時に比べて、持続時間はかなり短くなります。

サナの能力を使用中は、月が紅くなり、吸血鬼と城護の全能力が大幅に強化されます。


あくまで夜の時間を延ばす能力なので、通常の夜が訪れている間は能力は使用できません。

限定的な能力の為、通常の夜間は解放中の身体能力向上効果でのみ戦う事となります。

彼女の『センヤを助ける』という思いによって、この能力を開花させました。

超限定的なサポート特化の能力ですが、ただでさえ強力な吸血鬼と城護を強化する能力なので、恐ろしい能力でもあります。





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