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第81話 戦の果てには

最近胸が全体的に痛いです。

バックンッ!って感じになったりします。

亡くなったらハネルも転生できるでしょうか。

便利なスキルとかチートは要らないですが、最低限、世のため人のために働ける力は欲しいです。

皆が幸せになるのが良いですよ。

バッドエンドが苦手です。




「『剛破断』!!」




「ぐあッ!!」




レザールの太刀が複数の人間の鎧を破壊しつつ、人体へと重い一撃を繰り出す。

横に薙ぎ払われた人間たちには目もくれず、ひたすら視界に入る敵を排除する。




デュラハルド大陸の地下に住むリザードマンの魔人は、基本的に斧を使うが、グァンダレラ大陸のリザードマンは太刀を使う。

古き時代の転生者に刀工がおり、この世界に日本刀や、太刀などが広まったという。

元々は馬上で使う目的で太刀はあるのだが、リザードマン達の体格では普通の刀では小さすぎる為、太刀が主に使われている。




レザールは幼い頃から体格が一族の中でも大柄であり、様々な武器を使いこなしていたが、彼らの象徴たる太刀を最も上手く使いこなした。

頭1つ飛び抜けた才能と体躯を持つレザールは魔人筆頭となり、こうして一族を纏めあげている。




「お前たち!筆頭に遅れるなよ!!」




「応ッ!!」




筆頭補佐の発破に応える仲間達。

そうだ、筆頭の私が別の事を考えていては彼らに申し訳が立たない。

彼らの中には、妻子がいるから降りろと言われても、誇りの為に戦うと聞かなかった何人かが居た。




(今は何も思うまい………殺らなければ、こちらが殺られる)




耳に入る悲鳴や怒号に混じり、血が、剣が、銃弾が視界を飛び交う。

レザールは己の使命を全うする為、太刀を振るう。




(戦いの果てには何が残る……?戦いで獲られた仮初の平和など、次の戦いまでの短き夢でしか無い。血が血を呼び、死が死を招く………)




「た、助け………」




ヴゥンッ!!




レザールは助けを乞う人間を薙ぎ払う。




(誰かの死は誰かの怒りを買い、仮初の平和は脆くも崩れ去るだろう。人が王を必要とするように、我々魔族にも王が必要なのだ)




視界に入る人間、機械兵、魔骨兵を次々と斬り、払い、薙ぎ、レザールは前へ前へと突き進む。




(人間はリズアニア、魔族はグァンダレラ、吸血鬼はデュラハルド………それで良いではないか)




遠距離から飛んできた、魔力で出来た魔弾すら見切り、斬り落とす。




(教えてくれ、ラクリマ。俺は正しき事を成しているのだろうか……)







────────────────────




レザールには昔、親友がいた。

名をラクリマと言い、彼もまた、レザールと同じリザードマンであった。

子供の頃からの付き合いで、真面目なレザールとは対照的に、彼は自由で楽観的であった。




レザールが筆頭になる前、2人が部族の戦闘部隊に所属していた頃、ラクリマは気の合う同種族の女性と結婚する事を決めた。




「レザール、俺は結婚するぞ!!!」




「ず、随分と急だな……まぁ祝うが。おめでとう。式はいつだ?」




「3日後だ!披露宴には友人代表のスピーチを頼んだぞ!」




「おいっ!昔からそういう大事な事は予め言っておけと何度言った!?結婚するんだから少しはその辺りをしっかりしないと愛想尽かされるぞ!!」




しかし結婚式の前日、彼は人間の冒険者によって殺されてしまった。

ラクリマは結婚式の料理の材料を用意する為、リズアニアとグァンダレラの中間にある、果実や魚がよく採れる小島へと船を出していた。

彼はそこで運悪く人間と遭遇してしまった。




「に、人間!?」




「ま、魔人だッ!!」




「待て!俺に戦う意思は無い!!俺はただ食料を調達しに……!」




その証拠に、ラクリマは武器を小舟に置いてきており、持っているのは果実を採るための袋のみであった。




「騙されるかッ!!俺はここで死ぬつもりはねぇ!!喰らいやがれッ!!」




(……あ、あれは………!)




ラクリマの瞳に、迫る剣と冒険者の首元に下げられた1つのペンダントが映った。




小舟に乗っていたメイクゴブリンが争う声に気付き、グァンダレラへとリザードマン族の救難信号弾を打ち上げた。

救難信号弾の音に気付き、冒険者たちは急いで小島を離れた。

レザール達が小島へと辿り着いた時には、腹を割かれて息も絶え絶えのラクリマがいた。




「ラクリマッ!何があった!!?」




「……ハハハ……冒険者に、やられちまった……」




「待ってろ!今、治癒魔法を……!!」




「いいや、もう、無理だ………分かるんだ。……レザール………だが、奴を、恨むな………復讐は、終わら、ない…………」




「アイツを……ソティスの事、頼んだぜ……レザール…………」




ラクリマはそう言い残し、ゆっくりと目を閉じた。

その後、レザールを含め、救援部隊のリザードマン達がどれだけの治癒魔法を施しても、彼が目覚める事はなかった。




ラクリマの手の中には、抵抗した際に取れたのか、冒険者の鎧の一部が握られており、それが彼を殺した人間についての唯一の手掛かりであった。




その日から、怒りに取り憑かれたレザールは日々の鍛錬や職務を放棄し、全てを、親友を殺害した冒険者を探す事に費やした。

ラクリマは『恨むな』と言い残したが、結婚間近の親友を殺された事を、レザールは許す事が出来なかった。




そして1ヶ月が経とうとした頃、レザールがいつもと同じ様に小島周辺を探し回っている時の事だった。




「あ、あれは……!!い、いたッ!!見つけたぞッッ!!!」




鎧の片側の肩の装飾が一部取れており、もう片側にはラクリマが手にしていたものと同じ装飾が付いている、冒険者の姿がそこにはあった。

視界に入った冒険者を絶対に見失わんと、レザールは木々を薙ぎ倒しながら夢中で仇の元へと向かった。




「なっ、…ま、またリザードマンかッ!!クソッ!」




また(・・)………だと………!お前が……!!お前がラクリマを殺したんだなッ!!!殺す………殺してやるぞッ………!!!」




レザールは怒りのままに太刀を抜き、もはや型などとは言えない動きで、ただ怒りのままに太刀を振るった。

冒険者も剣を抜き、抵抗をするが、レザールの鬼気迫る雰囲気に気圧され、防戦一方であった。




「ヴォォォオオォォオオオッ!!!」




「ひッ……!」




ザンッッッ!!!




抵抗する冒険者の剣を叩き折り、鎧の上からラクリマと同じ様に腹を斬り裂いてやった。




「お前にラクリマの無念が分かるかッ!!!!アイツはなぁ!!アイツは……!!これから幸せになる筈だったんだ!!!お前がアイツの未来を閉ざしたんだ………!!!」




「あ゛ぁ………あ゛……すまねぇ………、ず、ずまねぇ………!まだ……死にたぐねぇ……死ねねぇ…………メリー………マール………俺は………俺はァ………」




冒険者は腹部から大量の血を流し、虚ろな目で涙を流し、宙を見ながら、ヒューヒューと荒い息を立てうわ言のように謝罪を口にする。




「貴様……ッ!!!誰に向かって言っている……!ふざけるな………!!!死ねぇッッッ!!!」




レザールは太刀を横薙ぎに振り、親友の仇である冒険者の首を落とした。




その瞬間、仇の首から何かが落ち、まるで「これを見ろ」と言わんばかりに、それはレザールの前へと投げ出された。

倒した者から何かを剥ぎ取る事は、レザールを含めリザードマン族はしない、しかし、彼は何故かそれから目を離すことが出来ず、膝をついて、彼の手にはあまりにも小さいそれを拾った。




(これは……ペンダントか。………………な………ッ!)




まだ新しいペンダントの中には、彼の伴侶であろう女性の姿と、その子供である幼い男の子が映っていた。

それを見た瞬間、彼は大きな衝撃と共に、心に穴が空いたような虚しさを感じた。




「………わ……私は………私は何をしているんだ……?」




最後の誰かへの謝罪、目の前にあるたった今斬り捨てた人間の亡骸、落ちたペンダント、家族の写真。

心が揺さぶられ、頭の中でそれらの情報が渦巻き、激しく脈打つ心臓の音がバクバクと大きく聞こえる。




(こいつがラクリマを殺したのは違いない、だが、だが………)




数分前に、自身が発した言葉が刃のように自身の心へと突き刺さる。




「………これではッ…………!これでは、同じではないか…………!ぐぅっ……ッ……ゥオオオオオオオオオオォォォォォオッッッッッ!!!!!」




親友が人間に未来を閉ざされた場所、そして、自分が今、人間の未来を閉ざした場所で、レザールは耐えきれずに激しく天へと叫んだ。







レザールはその後、ソティスにラクリマの仇を取った事をのみを伝え、本来の仕事へと戻った。

仲間からはラクリマの仇を取った事を口々に賞賛されたが、その度に彼の背中に背負われた咎が、重く、大きくなっていった。

大量の血液こそそのままだったが、遺体は数日後に無くなっており、きっと彼の関係者が故郷へと持ち帰ったのだろう。




その数ヶ月後、彼は恵まれた体躯と武術の技、そしてラクリマの仇を取った事が評価され、リザードマン族の新たな魔人筆頭に任命された。

憧れていた役職だったが、この頃から彼は、戦う事の意味、命を奪い合う理由について考えるようになっていた。

心の中では、自分がこの役職に就くのはあまりにも部下に失礼だという思いがあった。






────────────────────




「………あら、貴方は………」




心の中で己と、亡きラクリマへと戦いの意味を問い続けながらも戦うレザールの前に、戦場ですら優雅な立ち振る舞いを見せる、蒼い髪を持つ女性が立ちはだかった。




「城護………!!」




レザールの前に現れたのは、城護、ジューン。

彼女は自身の周囲に2つの小さな渦を発生させており、それで敵の武器を破壊、素手で向かって来た場合は渦で急所を突いて気絶させ、極力相手を傷付けずに戦っていた。

しかし、ガイネスは城護に殺されている為、レザール自身も殺される可能性を考え、気を引き締めた。




「私が死ぬ時は………奴の子供が私の元へと復讐に現れた時だ………!」




レザールは片手で懐のペンダントを握り締めた。

リザードマン族は死体を漁らないが、彼は迷った末に、冒険者の遺体から落ちたペンダントを持ち去った。

この思いと後悔を忘れない為、そして、この写真のに写る子供が成長し、自身を殺しに来た時に分かるよう、そして自身が死んだ時、相手が、レザールこそが父親の仇だと分かるように。




レザールの執念と諦観、そして迷いのある瞳を、ジューンは慈しみの目で見つめていた。








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