第74話 猪突を制するは麗しき男装の翼竜
もう1つ、書きたいものが浮かんだのですが、どっちの連載も潰れそうで怖いです。
ノワルの襲撃により、センヤとの連絡が途絶えた後、城護は各々の判断に従って行動を開始した。
アッシャーは引き続き機械兵の掃討、及び機械兵に使われているアンビシャス産の軽量鉄鋼にのみ効く、超腐食毒を振り撒く柱を、訪れた街や村の周辺に建てていた。
「上手い具合に私を避けて行動していましたね。そのような知能があるようには見えませんので、きっと誰かに誘導されていたんでしょう。道中の機械兵が邪魔で遅れてしまいました」
キンッ!
「ヌウッ!?」
大斧を軽く刀で打ち返すと、ガイネスは大斧ごと数歩よろめき後退した。
ボロボロのダンを片手で治癒すると、アッシャーはガイネスへと向き直る。
「フン!貴様……話には聞いているぞ。つい最近蘇った吸血鬼、そしてその下僕として付き従う魔人としての誇りを失った、城護などと言うクズ共がいるとな!」
ガイネスは体勢を建て直し、魔族を裏切り吸血鬼側へと付いたアッシャーを罵った。
この時、彼がもっと冷静だったのなら、彼自身の結末は変わっていたかもしれない。
「しかしゴミ人形に苦戦するなどとは……余程部下の見る目が無いようだな!お前の主は!まぁお似合いだぜ、馬鹿な主に役に立たぬ下僕の組み合わせはなァ!!」
「…!」
この迂闊な発言が、ガイネスの末路を決定付けた。
アッシャーは内心激怒していたが、それを顔に出す程、伊達に永く生きてはいなかった。
「私の事はなんとでも仰ってください。しかし……我が主を愚弄するのは誰であろうと許しはしません」
「ワイバーン族の恥晒しめが!オーク族、魔人筆頭の俺が奴らに代わり、じっくりといたぶり殺してやろうぞ!!」
アッシャーは二本目の刀を抜き、ガイネスへと構えを取る。
「はぁ、じっくり……ですか」
アッシャーはガイネスと向き合った時に、既に脆い場所を見定めていた。
後は、その場所を正確に斬り、毒を仕込むだけだ。
「────『死人に口無し』」
───────スッ…………
「…………!!!」
目の前にいた筈の女が、いつの間にか自身の背後にいた。
気配は分かる。
しかし、振り向く事が出来ない。
首が回らないのだ。
(な……なんだ!?何故俺は動けん!?)
その場から動けないガイネスへ、アッシャーはゆっくりと、諭す様に話し掛ける。
「良いですか?まず、残念ですが貴方はもう死んでいます。ですが、私がこの刀を納めるまで貴方は死にません」
(コイツは何を言っている?俺が?死んでいる?馬鹿言え、俺の意識はまだこうやって────)
理解が追いつかないガイネスとは反対に、オークの魔人たちは数分前のガイネスのようにいきり立っていた。
「筆頭に続………ッ!」
……ボチャッ
「……なっ!?………ァ…?」
ドチャッ
声を発したオークは、言葉を全て言い終える事無く、首を落とされた。
驚いたその隣のオークも、既に首が落ちている。
(………ハァ!?)
動けないガイネスは唯一動かせる眼球を動かし、次々と細切れ肉と化す仲間を見ている事しか出来なかった。
「では1つ目。私は城護ですが、その全員が魔将に匹敵する力を持っています。貴方は魔人筆頭。力の差は歴然」
ワイバーンの翼を生やし、敵と味方の間を縫うように飛び、駆ける。
通り抜けた後には既に死んでいるオーク、破壊された機械兵が残り、それを傭兵や冒険者などの人間たちは、唖然とした表情で見ていた。
「2つ目、私が遅れたのは人、地形、環境に配慮しての事です。抑えずに力を振るえば機械兵の群れなど簡単に消し飛びます。勿論、並の街ですら跡形も無くなりますが」
異常な勢いで命が消えていく。
軍勢だったものは今の段階で既に小隊のような数にまで減らされている。
『ガイネス!!どうした!何が起こっている!?お前の仲間の悲鳴しか聞こえてこないぞ!!オイ!返事をしろ!!ガイネスッ!!』
「ァ………ァ………」
(だ、駄目だ……!喋れねぇ……!)
通信機ごしに異常を察知したムスコロや、レザールからの連絡が入るが、最早、通信機を手にする事すらままならなかった。
「3つ目、貴方は王を愚弄した。これが決定的です。だから私は貴方の殺し方をこの方法にした」
周囲にはオークの亡骸が積み重なり、既に死んではいるが、残っているのはガイネスのみだった。
「そして、これはまぁ3.5、でしょうか」
アッシャーは気を失っているダンを一瞥し、次にガイネスの目を真っ直ぐと見つめた。
「人であれ魔人であれ、誇りを誰が馬鹿にできましょう。例えどんな事であれ、真っ直ぐと曲げないモノを1つ持っている方は美しい。私はそう思うのです」
そう言うとアッシャーはゆっくりと1本、刀を納めた。
(待て!!待て待て待て刀を納め──────!!)
「それでは」
────キンッ……
アッシャーが2本目を納刀したと同時に、ガイネスの身体はボロボロと崩れ落ち、周囲のオークと等しく肉塊となった。




