第72話 生まれ変わった男
1話を3分割したので今日明日明後日と更新します。
新たな国を巡り、大陸中の人間が巻き込まれる形となったが、彼等たちの中に不平を口にする者は少なかった。
いくら国の1つもない、村や街だけの田舎のような大陸でも、新聞のようなものはある。
勿論そこには最近のアンビシャスの行った侵略も記事になっており、そのやり方などを快く思わない者もかなりの数になっていた。
かつてアンビシャスにリズアニアの故郷を襲撃された者、アンビシャスのやり方が気に食わない者、周りに流される者など、理由は様々だったが、誰かに諭される訳でもなく戦える者達は、アンビシャスへと抵抗を開始した。
そして、早朝に始まった侵略は、深夜になり再び勢いを強め始めた。
本来の性能に戻した機械兵が徐々に現れ始め、抵抗する人々を苦しめ始めたのだ。
〜小さな街、クーチェク〜
「オラァッ!!」
街の入口を守護している傭兵の男が、機械兵の腕を切り落とす。
男がそのまま胴体を切り付けようとするが、機械兵の方が早かった。
「……ッんだとぉ!?」
なんと機械兵の背中からもう一本腕が伸び、備え付けられた手甲剣で男の腕を切断してしまった。
「下がれッ!!どりゃァァ!!!」
腕を落とされた傭兵を押しのけ、冒険者の男が機械兵の胴を槍で貫いた。
そのまま槍を振るい、先端に突き刺さった機械兵ごと、周囲の敵を薙ぎ倒す。
「ハァ……ハァ……昼間よりもかなり強くなってやがる………大丈夫か?」
「な、なんとかな……すまねぇ………なんなんだ……アイツらは……!?」
腕を切断された男は、他の傭兵に治癒魔法を使用してもらい、傷口の止血は出来たが、腕は元通りにはならなかった。
しかし、男は腕が無くなった以上に、目の前で行われている異質な光景に、背筋を凍らせた。
……バギッ……ゴギッ……ベギィッ………
壊れた機械兵の身体に、別の機械兵たちが馬乗りになり、手足をもぎ取っている。
それはさながら、死肉に群がるハイエナ、砂糖に集るアリのような、ゾワゾワとした嫌悪感を感じさせた。
<複合……完了。あなた方の抵抗は無意味です。>
同胞からもぎ取った手足を身に付け、機械兵たちは襲いかかって来た。
「き……気持ち悪ぃ……これじゃ倒した分だけ相手が強くなるって事じゃねぇか……!」
誰かが発した悲鳴にも似た言葉に、その場にいた全員が数歩、下がる。
1人の恐怖は伝染し、周囲の士気が下がり、代わりに見て見ぬ振りをしてきた恐怖が湧き上がり始めた。
本来の性能を取り戻した機械兵。
戦闘力、素早さが更に向上しているが、最たるは自己強化能力である。
既に倒された同胞の腕、足、武器をもぎ取り、己が力とする。
複数の手足が付いた姿はまるで大きな蜘蛛のようであり、その異形の姿もかなりの不気味さを放っていた。
昼に戦っていた機械兵とはあまりにも違う。
周囲には徐々に重傷者、死者が増え始め、逃げ出す者も現れ始めた。
「ヒィ………!!く………来るな……!来ないでくれ………!」
足を切断され、逃げる事が出来ない男。
複合機械兵は一切の慈悲無く、彼に襲い掛かる。
「うろたえるんじゃあないッ!!!!」
足を切断された男と複合機械兵の間に、謎の男が割って入った。
「闘法!伊達男×伊達男!!」
ヴゥン……
男は2人に分身し、片方は引き続き負傷した男の前に立ち、もう片方は素早い身のこなしで機械兵の真横へと滑り込む。
<排除します。>
ザシュッ!
「ぐぁぁっ!!」
機械兵に切り裂かれた偽伊達男は、その場で霧散して消えた。
「俺はこっちだッ!!」
ザンッ!
魔力を固め、実体のある偽伊達男が身代わりとなり、その隙に本物の伊達男が複合機械兵を斬り倒す。
実体のある分身を作り出すのは、魔法、闘法共にかなりの練度が必要となるが、彼はそれをマスターしているようであった。
「結合部を見るんだ!」
謎の男は、手にした剣で倒れた機械兵の手足を指さす。
その根元には、パーツ同士を合体出来る部分が顔を覗かせていた。
「つまりッ!」
──────ザザザザザザンッ!!!
華麗な剣技が、複合機械兵の手足を根元から斬り壊してしまった。
他の機械兵は壊れた手足には目もくれず、別の手足が無事な壊れた機械兵へと群がり始めた。
「結合部となる部分を破壊すれば、コイツらは合体できない……フンッ!」
そう話しながらも、男は次々と華麗な剣さばきで、襲い掛かる機械兵の手足の結合部分を正確に切り落としていく。
そうこうしている内に、男は一帯の機械兵を片付けてしまった。
「ひとまず落ち着いたか。まだ油断は出来ないがな」
ふっ、と一息つくと、彼は剣を鞘へと納めた。
助けられた男は間近で見ていたので分かったのだが、あれだけの数の機械兵を倒しておきながら、彼の剣は一切の刃こぼれをしていなかった。
本当に結合部を正確に切り落としていたのだろう。
「あ……ありがとう…………アンタは、一体……?」
彼らの前に向き直った男は自身の名を告げた。
「────俺はダン。ダン・ディーノだ。とある人が俺にそうしたように、誰かの前に立ち、人々を守る事にダンディを見出した男さ」
見た目だけでなく、中身も徐々に伴い始めた、凛々しい顔付きのダン・ディーノの姿がそこにはあった。




