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第62話 解放のカルセドニー

今までセンヤとメロくらいしかまともに戦っていないので、城護&ファテナさん達にも戦ってもらおうと思い、暫く主人公不在でした。

次はレイズヴェル、カルマとか出てくると思います。




イフリータの城護であるブーケが、敵であるが同種族のイフリート・アスワードと交戦する中、同じく、デュラハルド大陸に現れたノワルと同種族である城護のウェンゲージは、彼と会うこと無く、自身の担当する領地へと来ていた。




「み、皆さんお強いですね……」




ウェンゲージが来る頃には、冒険者たちがあらかた街を解放していた。

丁度この辺りに新たな地下洞窟が見つかったらしく、その攻略に冒険者が集まっていたのが幸いした。




「まぁな。領主代理のお嬢ちゃん、新しく出来る国の王の使用人なんだって?しかし、使用人にしちゃあなんだか……強そうだな」




「そ、そうですかね…?あはは……」




冒険者の1人がウェンゲージをジロジロ見ながら、己の所感を口にした。

今は特に武器を展開したり、魔力を放出してる訳でも無いが、身のこなしで何となく分かってしまうらしい。

好戦的な傭兵などに、力試しを挑まれてはたまったものじゃない、取り敢えず笑って誤魔化す。




「あっ、お聞きしたいのですが、この領地内でまだ解放されていない街はありますか?」




「あぁ、それならあそこにあるデカい街だ。鳥人族の奴に空から見に行ってもらったんだが、なんかゴツいのが居てなぁ。アレは俺らじゃどうしようも無い」




冒険者が指さした先にある街。

確かに街の規模が大きく、あそこには指揮官や、普通の機械兵よりも上位種が存在するだろう。




「ありがとうございます。では、いってきます」




「おいおいお嬢ちゃん1人に行かせる訳にはいかん。行くなら俺らも手伝うぞ。数で押せばなんとかなるだろう」




歩き出したウェンゲージを慌てて引き止める。




「で、ですが皆さんばかりに……」




「いや、ここにいる奴らも、それ以外の奴らもそうだが、この大陸が好きなんだ。大陸を整備して奴隷解放を望むトップと、民間人ですら容赦無く殺しに掛かり、大陸丸々機械工場にするトップ、どっちが信用出来る?聞くまでもないな」




冒険者の男は、その場にいる全員に聞こえるようにウェンゲージへと話す。

それを聞いた冒険者、傭兵たちは不敵な笑みを浮かべながら、立ち上がった。




「……皆さん、ありがとうございます」




微笑んだウェンゲージは、彼らに同行してもらう事にした。







────────────────────







彼らは手馴れているらしく、機械兵の弱点である頭を攻撃し、手早く倒していく。

しかし、空から確認した滅銀機械兵が存在する建物周辺、そして広場にはなかなか手が出せないようだ。

ウェンゲージは彼らに感謝しつつ、止める間もなく1人で広場へと向かっていった。







「なんだ貴様は」




怪訝な表情を浮かべるアンビシャス兵。

中央には住人の人質がおり、機械兵が彼らを見張っていた。




「……私はウェンゲージと申します。この街を含め、ここ一帯の領地を任されている者であり、デュラハルド家に仕える城護の1人でもあります」




「デュラハルド……あぁ、新しい国の……女を寄越すとは正気か?フフ、ハハハハ!!!舐められたものだな!」




「……!」




大声で笑い出すアンビシャス兵に、ウェンゲージは静かに怒りを滾らせる。




「愚かな王に仕えると気苦労が絶えないだろう?どうだ、内心、お前もそう思っているのではないか?1人でここへ行けと命じた王に仕えても良いのかと。……こちら側に来い。マキナリア様には俺から話そう」




「私の事はなんとでも言ってもらって構いません」




「……ですが、私の主を侮辱する事は誰であろうと許しません。センヤ様は、私を信頼してくれているんです。私はデュラハルド家の、宝石のような美しい生き方に見惚れ、城護となりました。あの方たちはそれぞれ、考えや理想などは違いますが、一人一人違った美しさを見せてくれるのです」




「『信頼』か、それは命を預けられるほどかね?そして『生き方』だと?くだらん。無能の生き様などただの石ころに過ぎんな。我ら、赤褐色の力には遠く及ばん」







「……もう、言葉でのやり取りに意味は無いと理解しました。貴方を排除します」




鋭く尖ったカルセドニーの翼、そして巨大な爪を発生させ、ウェンゲージは戦闘態勢を取る。




「来い、滅銀機械兵」




ズゥゥンッ!!




<攻撃対象です>




アンビシャス兵の呼び掛けに応じ、滅銀機械兵が建物の上から降ってきた。

建物の陰からは、冒険者、傭兵たちがいつでも駆け付けられるよう、武器を構えながら待機していた。




「まずは小手調べだ。行け、機械兵!」




<攻撃対象です。>

<攻撃対象です。>

<攻撃対象です。>




広場を警戒していた機械兵が、ウェンゲージの元へと、手甲剣を構え向かって来た。




「……行きます…!」




ズゥンッ…!ズゥンッ…!ズゥンッ!ズゥンッ!




ズゥン!ズゥン!ズゥン!ズゥン!




徐々に加速しながら大きな爪が地面を抉り、掻き分けながら直進する。

滅銀機械兵の弾丸を全て弾き、正面にいた機械兵は爪により砕かれ、形無い鉄クズへと変わる。

側面にいた機械兵は鋭く尖った翼に刺し貫かれ、即座に機能停止に追い込まれる。




「やるようだな!滅銀機械兵!やれ!」




<攻撃対象です。ファイア。>




しかし先程と同じく銃弾などものともせず、すぐに距離を詰めたウェンゲージは、滅銀機械兵の胸に、爪先を軽く当てた。




<攻撃対象で、攻撃、こ、こ、こ、こ、>




ピキ………ピキ………




「『新たな生誕を祝して(リ・バース・ジュエル)』」




ガシャンッ…………!




滅銀機械兵の身体は美しいエメラルドへと変わり、そのまま爪で握り砕かれてしまった。







「ば、馬鹿な…!高位魔法耐性用の術式付きだぞ……!?」




「私たち城護は魔法も勿論使えます。ですが、主に使用するのは『護法』と呼ばれる力。人間如きがどうこう出切る代物ではありません」




「クソがッ!!人質だけでも……!」




アンビシャス兵は人質たちへと向き直り、腰から電流が流れる刀を抜き、それを振りかぶる。







「許すと思いますか?」




普段は小心者で温厚なウェンゲージが見せた、どこまでも冷えきった視線。

ウェンゲージは翼を飛ばし、剣を振りかざすアンビシャス兵を吹き飛ばしながら、鎧の上からアンビシャス兵を壁に打ち付けた。

尖った翼は鎧の装飾部や、兵装の部分に突き刺さっており、人体は無傷であった。




「なっ……何をする気だ…!?ま、まさか…!」




身動きの取れないアンビシャス兵へと、ウェンゲージがゆっくりと向かってくる。







「ふふ、動けませんね。大変、大変………」




正面で立ち止まったウェンゲージが人差し指を、アンビシャス兵の鎧の胸部分にそっと押し当てた。




ピキ……ピキ………







「ひっ……!?ヒィ……!!」




アンビシャス兵の鎧が、胸を中心に徐々にエメラルドへと変わっていく。

それを、ウェンゲージは目を細め、口角を上げて見つめる。




「私にとって、城護にとって人1人殺す事など造作もありません。心臓を宝石に変えれば、ふふ、苦しいでしょうね。ね。ね。ね。ね…?」




ウェンゲージはアンビシャス兵の顔に近寄り、大きく開いた目で彼の恐怖に怯える目を見つめる。

鎧を通し、今度は徐々に身体が宝石化を始める。

そして底意地の悪い事に、それは手足の末端から始まった。




「ゆ……許して……!わ、わわわ詫びる。ひっ非礼は詫びる!すい、すいません!いやだいやだ俺はまだ死にたくない!いやだ許してくれ!ああああ!!!!」




「『許して』『詫びる』『すいません』『いやだ』『死にたくない』『ああああ』」




ウェンゲージは泣きじゃくるアンビシャス兵の顔を、1cmも無い距離で見つめ、真顔で同じ言葉を繰り返す。




「『許して』『許さない』『すいません』『もう遅い』『いやだ』『しりません』『死にたくない』『そうですか』『ああああ』『いいいい』」




身体の内部、そして外部の全てが宝石と化し、一言も発さなくなったアンビシャス兵に、独り言のようにウェンゲージはブツブツと呟く。







カルセドニー、石言葉は『解放』。




開放されたのは、怒りか、狂気か。







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