第27話 奇想天外なる野望
15日辺りから体力ゲージ1本でギリギリ生きてます。
寝ても回復しません。
オデノカラダハボドボドダ!
「はい、どうぞ」
「あっ、あざます」
城に入って直ぐの正面にある応接間に、テンガイ達は迎え入れられた。
アッシャーは玉座がある最上階まで連れて行こうとしたが、先程まで戦闘を行っていた連中に階段は酷だと言い、その場は収めてもらった。
賊たちは3つの2人がけのソファに座らせられ、倒れた3人は別室でウェンゲージやブーケに看病を受けている。
彼らはジューンから出された紅茶を恐る恐る飲む。
それもそうだろう、先程まで戦っていた相手から持て成されるのは、温度差が激しすぎる。
テーブルを挟んで対面には、センヤが椅子に腰掛けていた。
「仲間達は無事だ。体力、魔力を全快まで戻した。後は目覚めるのを待つだけだから心配する事はない」
「ん、悪いな」
ブォンッ…!
テンガイの横顔スレスレにアッシャーの裏拳が止まっている。
凄まじい威力だったらしく、テンガイの髪の毛が全て裏拳とは逆の方へと流れている。
「…センヤ様がお連れした客人とは言え、その話し方は容認できません。城を出ても首と身体が良好な関係を保っていたいのなら、以後気を付けるように」
「す、すんません…」
(こ、怖ーよ!使用人なのに多分俺より強いぞ!?)
テンガイも賊たちも、背中に冷や汗が滝のように流れる。
「…では、単刀直入に聞こう」
センヤは懐から、昼間の龍種に取り付けられていた機械を取り出し、テーブルの上に置いた。
「この機械、そして俺を観察していたローブを羽織る緑眼の者、お前の雇い主。この3つに共通点はあるか?…レイズヴェル、来てくれ」
「了解〜っす」
いつの間にかメイド服から元の服装に戻ったレイズヴェルは、応接間の端っこでファテナとカードゲームで遊んでいた。
このやる気無しコンビは…
「レイズヴェル、テンガイの心音を聞いてくれ。大きな変化があった場合は俺に伝えてほしい」
「あっ!レイズヴェルズリーぞ!それじゃアタシの手の内バレバレじゃんか!」
「嫌っすねぇ。ウチも遊びに分別は付けるっすよ。ヤバい時じゃなきゃ使わないっす」
「ヤバい時は使うんじゃねーか!痛てぇ!?」
ファテナはアッシャーに拳骨を食らい、そのまま首根っこを掴まれ応接間から退場した。
「………と、言う訳だ。お前が余程訓練された奴でもない限り、俺の前で嘘を吐くのは止めておいた方が良い」
「…この状況で嘘は言わねぇですよ。…領主殿の言う通り、全部仕組んでるのは1人と1匹だ」
「…やはりか。しかし、1匹というのは?」
「魔物の上位種『魔人』の存在はご存知で?」
「魔人…?聞きなれないな」
龍種と1戦交えたが、あれはどう見ても人ではない。
『魔人』というのだから、人の型に近い生き物なのであろう。
いくら魔に属する者とはいえ、センヤは斬る事が出来るか少し不安になった。
「魔物と魔人の違いは、ま、読んで字のごとく、魔人はより人に近い見た目と知能をもってやがります」
賊の1人がサラサラと紙に絵を描き、テンガイへと渡す。
左には犬のような魔物が描かれ、その上にバツが書かれている。
右には犬耳を生やした人間のような魔人が描かれ、その上にマルが書かれている。
「最下級に位置するのが『魔物』、それを使役するのが『魔人』、その魔人の各種族全体を纏めあげる筆頭が『魔人筆頭』その筆頭の中でも飛び抜けて力のある者は魔王直属の幹部となり『魔将』となる。そしてそれらの頂点に立つのが『魔王』という感じだったかね。最下級の魔物もピンからキリまで居ますし、『魔人』や『魔人筆頭』より強い魔物も存在しますんで……」
「どこでも階級社会なんだな……」
「世知辛いですねぇ……ま、それはさておき、今回起こっている事を洗いざらい話しますかね。どうせ俺たちは表面上だけのボディガードに過ぎねぇさ。終わったらポイよ……ん?」
ぐいぐい
「ほねほね、くれくれ?からんからーん」
「お、お嬢ちゃん…?」
いつの間にかテンガイの横にカテドラルがおり、テンガイの袖を引っ張り骨を寄越せと要求している。こわい。
「カテドラルちゃん、今センヤ様お話してるからあっちに行きましょうね〜」
「ほ、ほね…」
カテドラルはジューンにひょいと持ち上げられ、手足をジタバタさせながらも応接間の外へと連れていかれた。
「………?」
(…なんか、変なのが多いな……)
そしてテンガイは時折アッシャーに裏拳を食らいそうになりながらも、今回の事件の裏側に潜む者達について話し始めた。
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「って言う事ですかね。俺の知る範囲では」
「成程…そのギンベッカなる魔人がヤヤガを誑かしたという訳だな。ギンベッカを倒せば即解決となるんだろうが……表に出て派手な動きをする奴でも無いだろうな。少し調査が必要だ」
ヤヤガを殺すのも解決の手段の1つにあるが、それはセンヤの本意では無い。
聖騎士軍へと突き出し、しっかりとした裁きを受けるべきだ。
そもそもギンベッカを倒さない限り、第二第三のヤヤガが生まれるだけである。
「…まぁそれはそれとして、だ。お前達は今後の事は何か決まっているのか?」
「…いや、何にも決まってねぇです。ギンベッカは用心深い奴ですから、俺らが消息を絶った場合は必ず死体を探しに寄越すでしょう。生きていてもどの道、不審に思われ殺される。その役割は『裏』の方のボディガードが引き受けるでしょうよ。渡航費は高くつく。この大陸内を転々と逃げますかねぇ…」
予想通りの答えだ。
センヤは数日前から考えていた計画を、テンガイ達へと話す事にした。
「なら、この街をメインに周囲の小さな村、分かりやすく言うとラグディス領だな。領地内で正規の警備を任せたい。今は範囲があやふやになっているが、近々関所や明確な区切りを作り視認出来るようにするつもりだ」
「かつては死地だったが、魔力が蘇ったこの大陸には、様々な思惑を持つ者がこれから続々と現れる筈だ。その中には勿論、魔物以外にも悪しき人間も居る。結界が通じない以上、魔物より厄介な相手となるだろう。ラグディス領はこの城もある。守りは一段と固めておきたくてな」
「オイオイ…そんな虫のいい話が……」
テンガイと賊たちはザワザワと話し始めた。
敵だった男が持て成しの次は安定した職を与えようとしてきている。
「こっちも人手不足でな…追われる身になるくらいなら俺がお前達を保護しよう。これも何かの縁だと思ってくれ」
「…そしてこれはまだ俺の頭の中だけの予定だ。話半分に聞いてもらっても構わない……ラグディスから見て東に、人間が建設を諦めて遺棄した国跡がある。俺はこの国跡を建て直し、奴隷が自由に生きられる国を創る」
「……ハ……ハハ、領主、城の王の次は国王か……スケールがデカすぎてな……だが、悪くねぇ。俺はぶっ飛んでる奴が好きだ。コイツらにもそろそろ表の世界で生きてほしいしな。乗ったぜ」
テンガイは立ち上がり、センヤへと手を差し出す。
センヤも立ち上がり、その手を快く握り返した。
テンガイ達の加入により、行動範囲が限られる城護を除いて、戦闘が行える者が増えたのは喜ばしい事である。
ファテナさん?手ぶらです。




